質問主意書

第120回国会(常会)

質問主意書


質問第六号

国民健康保険税(料)の引き下げ等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二年十二月二十六日

上田 耕一郎   


       参議院議長 土屋 義彦 殿


   国民健康保険税(料)の引き下げ等に関する質問主意書

 国民健康保険は、「社会保障及び国民保健の向上に寄与する」(国民健康保険法)目的に反し、深刻な事態にある。全国の市町村での相次ぐ国保税(料)の値上げによって、滞納者が増加し、保険証の未交付等によって必要な医療も受けられず死亡する事態も一部に生まれている。
 憲法は、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有」し、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と規定している。
 そのためには、納入困難者を増大させている現在の国保税(料)を引き下げるために、国がその責任を発揮することが急務であると考える。
 国としてとるべき措置等に関して、以下質問する。

一 国民健康保険税(料)は、全国の市町村で値上げが相次ぎ、国民の負担能力を超える事態となっている。一九八八年度の国保税(料)は、全国平均で一世帯当たり十四万二千五百三十九円にまでなり、政管健保と比べても、給付は低いにもかかわらず、保険料は高い事態となっている。
 政府は、こうした国保税(料)の現状をどう考えるのか。

二 全国の市町村では、住民の要求にこたえて、国保税(料)を引き下げる自治体も生まれている。これは、「住民及び滞在者の安全、健康及び福祉を保持する」(地方自治法第二条)という自治体の役割からみて当然の責務である。
 国保税(料)の引き下げは自治体が自主的に決定することであり、政府の介入があってはならないと考えるがどうか。

三 全国的に国保税(料)値上げを引き起こした最大の原因は、政府が一九八四年より、市町村国保への国庫負担率を、医療費の四十五%から三十九・七%(療養給付費の五十%)に引き下げたことである。
 政府は、市町村の国保財政を悪化させ、国保税(料)の相次ぐ値上げを引き起こした原因と責任をどう考えるのか。

四 政府は、九一年度から市町村間の国保税(料)の格差是正を理由に、所得割と応益割を五十対五十にすると伝えられている。現在全国的には、所得割と応益割は平均六十八対三十二、東京二十三区では七十二対二十八(九〇年度)となって低所得者の負担に配慮がされている。この「平準化」が行われるならば、低所得者は大幅な負担増となる。
 五十対五十とした場合、低所得者層に影響が出るが、政府として、自治体への負担のない低所得者層対策をどのように考えているのか。

五 低所得者のために、減免制度がありながら、市町村によっては十分徹底していない自治体もある。減免基準を引き上げるとともに、対象となる人が減免制度を活用できるよう、住民への周知、徹底、必要な人材の確保等を行うべきと考えるがどうか。

六 保険証を取り上げられたがゆえに病気になっても医者にかかれず死亡するという痛ましい事件が多発している。低所得者から国保税(料)の滞納を理由に保険証を取り上げ、医療を受ける権利を実質的に奪うことは、憲法違反の行為であり、直ちに中止すべきである。
 「資格証明書」交付に当たっての国会答弁では「所得がなくて払えない方も悪質とみなすようなことはございません」という大臣答弁がなされているにもかかわらず、一律に発行している自治体の例もみられる。
 政府として、実態を調査すべきでないか。「資格証明書」発行自治体数、被発行者数など明らかにしていただきたい。

  右質問する。