質問主意書

第120回国会(常会)

質問主意書


質問第二号

日米間のSTANAGの存否に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二年十二月十日

翫 正敏   


       参議院議長 土屋 義彦 殿


   日米間のSTANAGの存否に関する質問主意書

 同盟国が共同作戦を行うにあたってSTANAG(standardization agreement標準化協定)の存在は不可避であり、米国は同盟諸国と様々なSTANAGを締結している。米国統合参謀本部発行『DICTIONARY OF MILTARY AND ASSOCIATED TERMS』(JSC Pub.1)によると、STANAGは「同様あるいはそれに近い軍隊装備・弾薬・供給品・貯蔵品そして作戦・兵站・行政手続きの採用を目的とした、同盟国のいくつかあるいは全ての間での協定」とあり、同盟国軍隊が共同作戦を行う上で前提となる取り決めであることが分かる。
 また私はアメリカ合衆国情報公開法(Freedom of Information Act)に基づいて米国国防総省に請求を行い、これに対して米国陸軍指揮幕僚大学(U.S.ARMY COMMAND AND GENERAL STAFF COLLEGE)より米陸軍作戦教範「FM100-5 OPERATIONS」(一九八六年五月版)の提供を受けたが、米陸軍の作戦・運用上の最も基本となる同教範によれば、STANAGは「締結すると同時に、適切な野戦教範・技術教範・訓練教範に加えられる」(一六五頁)とされ、米陸軍においてSTANAGの拘束性が極めて強いことが伺われる。このことは同時に締結各国においても同様の拘束性が存在することを推測させる。
 STANAGは締結当事国軍隊を拘束する協定であり、一種の条約と言うべきものである。特に防衛に関する取り決めであるから、シビリアン・コントロールの観点からも国会ひいては国民の審判を仰ぐべきものと考える。
 さらにSTANAGは秘匿性が低い。なぜなら前述の「FM100-5 OPERATIONS」においては米陸軍が締結したSTANAGの一覧が掲載されている(一九二~一九三頁)。また私がアメリカ合衆国情報公開法に基づき入手した米陸軍教範「FM3-100 NBC OPERATIONS」にはNATOのSTANAG(STANAG 2150)が掲載されている。こうした点からも、STANAGの締結の存否及び締結したSTANAGの内容を公表しても防衛秘密保全上何ら差し支えないものと考えられるので、以下質問する。

一 日米間において締結されたSTANAGが存在するのか。存在するのであれば、それら全ての名称及び内容を明らかにされたい。

二 現在存在しないにしても、今後日米間においてSTANAGを取り結ぶ具体的予定があるのか。

三 まだ具体的予定がないとしても、政府は日米間においてSTANAG締結を必要としているのかどうか。

四 一、二、三について政府が明らかにできないのであれば、その具体的理由を示されたい。

  右質問する。