質問主意書

第120回国会(常会)

質問主意書


質問第一号

国連安全保障理事会決議六六五に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二年十二月十日

翫 正敏   


       参議院議長 土屋 義彦 殿


   国連安全保障理事会決議六六五に関する質問主意書

 一九九〇年八月二五日議決された国連安全保障理事会決議六六五(以下決議六六五とする)は、マスコミにおいて限定的武力行使容認決議と名付けられるなど、あたかも安全保障理事会においてイラクへの武力行使が認められているがごとく世間一般では受け止められている。また政府の国会答弁においてもこうした見解を容認するがごとくの答弁が繰り返されている。さらには政府は、この決議に基づいて派遣されているとされる多国籍軍に対して、支援と称して国民の貴重な血税を多額にわたり支出している。
 しかし安保理が限定的武力行使を認めたとされる同決議第一項は、「安全保障理事会の権限の下、船荷とその目的地についての査察と臨検、及び決議六六一(一九九〇年)に提示された海輸に関連する規定の厳密な履行を確保することを目的として、全ての出入り船舶に対して停船が必要とされるような場合に、個々の状況にふさわしい手段の行使を、当該地域に海洋部隊を展開中で、クウェート政府と協力する国連加盟諸国に要請する」とあり、この中では武力行使という言葉は一切入っていない。勿論その他の項においても同様である。
 このようなあやふやな決議によって武力行使が認められ、かつそれに対する支援が正当化されて良いものなのか、政府の見解を明確にするため、以下質問する。

一 決議六六五第一項において、当該地域(the area)に海洋部隊(maritime forces)を展開している国連加盟諸国は、「個々の状況にふさわしい手段の使用」(use such measures commensurate to the specific circumstances)を要請されている。ここでいう「個々の状況にふさわしい手段」に武力行使が含まれていると日本政府は解するのか。

二 第一項は、臨検等を目的としてイラクを出入港する船舶を停船させることを、海洋部隊に対して認めたものであり、船舶のイラク出入港すべてを封鎖することを認めたものではないと解するが、政府の解釈はどうか。

三 第一項における「海洋部隊」とは、もちろんサウジアラビアに派兵されている米陸軍を指すものでないことは明らかだが、念のため政府の見解を明らかにされたい。

四 一、二、三において政府がそう解釈する根拠は何か。

五 「海洋部隊」(maritime forces)の定義を明らかにされたい。

六 決議六六五が掲げるどの条項が、湾岸地域への地上軍の派遣を根拠付けているのか、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。