質問主意書

第119回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第五号

内閣参質一一九第五号

  平成二年十一月二十七日

内閣総理大臣 海部 俊樹   


       参議院議長 土屋 義彦 殿

参議院議員清水澄子君提出日本政府の中東支援策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員清水澄子君提出日本政府の中東支援策に関する質問に対する答弁書

一及び二について

 今般の中東情勢の変化に際し、米軍の運用上の都合により、米軍艦船及び部隊を我が国から他の地域に移動させることは、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(昭和三十五年条約第六号)上問題はなく、また、同条約第六条の実施に関する交換公文に基づく事前協議の対象とはならない。

三の(1)及び(2)について

 湾岸における平和回復活動に対する協力については、まず、八月三十日に十億ドルの協力を表明したところであるが、そのための予算の手当てについては、その一部分は既定予算から支出することとし、残る大部分は、憲法第八十七条及び財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第二十四条に規定する「予見し難い予算の不足」に当たることから、九月二十一日、予備費使用の決定を行った。また、これを受けて、同日、湾岸アラブ諸国協力理事会との間で湾岸平和基金に対する拠出に関する交換公文を締結し、これに基づき同基金に約九億ドルを拠出している。
 この湾岸平和基金に対する資金拠出については、集団的自衛権を含めおよそ自衛権とは、国家による実力の行使に係る概念であるので、我が国が単に費用を支出するということは、右にいう実力の行使には当たらず、したがって、本件資金拠出は、我が国憲法上認められない集団的自衛権の行使には当たらない。また、右の十億ドルの一部により我が国が行っている輸送協力や医療協力は、実力行使そのものないしはそれと一体を成す行為には当たらないので、我が国憲法上認められない集団的自衛権の行使には当たらない。
 また、九月十四日、右の十億ドルに加え、今後の中東情勢等の推移等を見守りつつ、新たに十億ドルを限度として追加的に協力を行う用意がある旨表明したところであるが、これについても、我が国憲法の枠内で行われることは、当然の前提である。なお、そのための予算の手当てについては、今後の中東情勢等の推移等を見守りつつ、適切に対処してまいる所存である。

三の(3)について

 予備費については、憲法第八十七条及び財政法第二十四条において、「予見し難い予算の不足に充てるため」国会の議決に基づいて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる旨規定しており、一方、補正予算については、同法第二十九条において、「予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出」を行う等の場合に、内閣は補正予算を作成し、これを国会に提出することができる旨規定している。このように、予備費の使用と補正予算の提出の要件には基本的に差異はなく、現行法制上、予備費を使用するか補正予算を提出するかは、政府の判断にゆだねられているものと考えている。
 先般の湾岸における平和回復活動に対する協力については、「予見し難い予算の不足に充てるため」との要件に該当し、また、国際連合安全保障理事会の諸決議がなされ、かつ、国際社会における我が国の地位にふさわしい貢献が求められていること等にかんがみ、可及的速やかに我が国の貢献策を実施に移す必要があったことから、予備費の使用を行うこととしたものである。