第119回国会(臨時会)
質問第四号
合法的永住者の居住国に帰る権利に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 平成二年十一月七日 竹村 泰子
合法的永住者の居住国に帰る権利に関する質問主意書 現在、国際連合差別防止・少数者保護小委員会において「自国を含むいずれの国からも離れ、自国に帰るすべての者の権利における自由と非差別に関する宣言」草案の修正作業が行われている。当草案第十一条は「この宣言第七条に基づいて適用されるのと同様の正当な理由を除き、居住国を離れる合法的永住者は、その国に帰る権利を否定されない。」と規定している。
一 「合法的永住者」といった場合、日本においてはどのような人々がこれに当てはまるか、列記されたい。 二 他国への入国権は、国際人権連盟が言うように「移住の権利」としての側面が強い(国連文書 E/CN.4/Sub.2/1990/NGO/24)。しかしながら合法的永住者の居住国への「帰国権」は、短期滞在者や一時的な入国者の「入国権」とは異なる。このことは宣言草案が出国権に関し、第二部で「出国権」、第四部で「外国人の出国権」と別個に扱いながら、合法的永住者の居住国への帰国権を、国民のそれと共に第三部「帰国権」で扱っていることからも明らかである。この点、「他国への入国権」と「合法的永住者の帰国権」の違いにつき把握しておられるか否か、お答え願いたい。 三 先の公開質問状にて、合法的永住者の居住国への帰国権は、家族のつながりという観点も含め、当該個人が自己と自己の暮らす社会との間に築いた実質的なつながりから生じる基本的人権としてとらえられるべきものとする当方の見解を示し、当該権利が国際人権法において基本的人権として確立されるべきものか否か質問したところ、外務省は八月二十四日付け回答で、合法的永住者の入国を認めるべきかどうかは国家の裁量に属する事項と解すべきである、と答えられている。これはすなわち当該権利は基本的人権に当たらないということであるのか否か、明確にされたい。 四 外務省は、入国・帰国を認めるか否かは国家の裁量に属する事項と解すべきであると言われるが、国家の裁量であるならば、日本の特殊な事情を考慮し、日本において合法的永住者の帰国権を積極的に保障することも可能である。日本政府が、国際人権法において当該権利を確立することに反対し、その是非を国家の裁量に一任すべきとするのは、今後国家の裁量によって合法的永住者の帰国権を保障するお考えがあっての上でのことか否か、お答え願いたい。 五 合法的永住者の居住国への帰国権は、実生活者として、帰国権を否定された場合に被る被害が国民と変わらない者が、一時的な海外旅行等から自らの家に帰る権利を保障しようとするものである。権利者資格は「合法的に」「永住する」「定住者」(Permanent Legal Resident)に限られ、国家が法的に永住者として認めた者のみを対象としているから、国家主権をことさら侵害するものとは言えず、かえってこれを否定した場合の人権侵害の被害の方が大きいと判断されるものである。この場合、人権遵守の立場を優先すべきであり、特段の理由もなく、一般外国人と同一の範疇にて当該権利を否定することは不当であると言わざるを得ない。日本において、現行出入国管理及び難民認定法第二十二条に基づき永住資格を取得した個人は「その者の永住が日本国の利益に合致すると認められ」、当該権利を取得した者である。さらに日本においては、これら一般永住資格及び協定永住資格を取得した永住者のほとんどが日本生まれの二世、三世、四世である。これら法的に認められた永住資格者の日本への帰国権を認めることを、政府としてはいかなる特段の理由があって否定されるのか、示されたい。 右質問する。 |