質問主意書

第119回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一号

自衛隊市ケ谷基地に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二年十月三十一日

上田 耕一郎   


       参議院議長 土屋 義彦 殿


   自衛隊市ケ谷基地に関する質問主意書

 防衛庁本庁を移転しようとしている自衛隊市ケ谷基地は、江戸時代の尾張藩の上屋敷があったところである。この旧尾張藩上屋敷の遺跡から遺構、遺物が大量に発見されている。
 新宿区教育委員会が四月~五月に一部発掘した百カ所の試掘坑の約九割から遺構五百九十二基、遺物六千六百十点が発掘されている。
 このような大規模な遺跡は、新宿区だけでは対応できないため、東京都教育庁で発掘調査することになっている。東京都教育庁の発掘調査が実施されればさらに貴重な遺物が出てくることが予想される。これまで遺跡を発掘してきた新宿区の関係者は、この遺跡の重要性について「遺跡の残存状況がよく、その広さからいっても、江戸時代の上屋敷遺跡としては第一級といってよい」と述べている。
 いま、防衛庁は、自衛隊市ケ谷基地に十九階建庁舎を含む六つの庁舎、建物の延べ面積二十二万五千三百平方メートルもの防衛庁本庁の建設を計画している。もしこの計画が実施されれば、市ケ谷基地内にある旧尾張藩上屋敷の貴重な遺跡が破壊されてしまうことは明らかである。
 また、市ケ谷基地周辺の人達、区民、都民は、防衛庁本庁が移転され、いざ戦争になれば、最初の攻撃目標にもなること、また日照問題、電波障害、ヘリコプター騒音、工事の際の騒音、土砂搬出の際の公害発生等々から移転に反対している。
 このような事態を踏まえて、以下質問する。

一 防衛庁は、新宿区の発掘調査及び独自のこれまでの調査で、市ケ谷基地内にどのような遺跡が、どのような規模で存在していると認識しているか。

二 東京都の行う予定の発掘調査のうち、防衛庁予算額はどのくらいか。

三 尾張藩の大規模で貴重な遺跡の確認という事態のもとで、防衛庁は移転の工事計画について、どのような再検討を考えているのか。

四 防衛庁本庁のビル建設に伴う周辺の民家への日照の影響、電波障害、工事の際の騒音公害、土砂搬出の公害の影響はどの程度のものとみているのか。また、東京都の環境影響評価条例があるが、これに基づく調査を行うのかどうか。

五 市ケ谷の新防衛庁本庁の屋上と地上にヘリポートをつくる計画があるが、このヘリポートを設置する基準はなにか。移転計画にある新設のヘリポートは、設置基準を満たしているのかどうか。

六 市ケ谷基地のヘリポートの使用回数は、六十三年度は二百四十六回(離着陸)であるが、どのようなことに使用しているのか、内容を明らかにしていただきたい。

七 すでに、新宿区議会は、防衛庁本庁の市ケ谷基地への移転計画撤回を求める意見書を採択している。今回、新宿区の調査で、旧尾張藩の遺構が大規模で、しかもかなり良く保存されたままの形で存在することが確認された以上、防衛庁は貴重な遺跡保存のため最大限の努力をすべきである。この際、防衛庁本庁の移転計画を撤回し、市ケ谷基地内の遺跡を保存し、遺跡、遺構を広く国民が見られるよう開放すべきではないか。

八 市ケ谷基地は、都心の高台にあり、都民にとって残された貴重な国有地である。いま都心は地価高騰のあおりで、都民の憩いの場所が少なくなっている。市ケ谷基地を撤去して、広く国民に開放すべきではないか。

  右質問する。