質問主意書

第118回国会(特別会)

答弁書


答弁書第九号

内閣参質一一八第九号

  平成二年七月二十七日

内閣総理大臣 海部 俊樹   


       参議院議長 土屋 義彦 殿

参議院議員上田耕一郎君提出建設業退職金共済制度の改善に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員上田耕一郎君提出建設業退職金共済制度の改善に関する質問に対する答弁書

一について

 公共工事の発注機関(以下「発注機関」という。)の御指摘の類別の発注金額は不明であるが、建設省の公共工事着工統計によれば、平成元年度の総工事費評価額は約十三兆四千四百億円である。
 また、各公共工事の予定価格に算入された掛金相当額の把握は、工事総件数が膨大であること及び工事の種類によって掛金相当額の積算方法が種々であることから困難である。

二の1について

 指名競争の参加資格審査の際、建設業退職金共済制度への加入状況を確認する一つの手段として加入・履行証明書を添付させている発注機関もあるが、事務簡素化のため本制度への加入の有無を参加資格審査の申請書類に記入させることとしている発注機関もあることから、加入・履行証明書の添付の実施状況については把握していない。発注機関が指名競争の参加資格審査の際に本制度への加入の有無を参酌することに努めるよう今後とも勧奨してまいるつもりであるが、発注機関から当該加入・履行証明書の添付の実施状況を建設業・清酒製造業・林業退職金共済組合(以下「建退共」という。)に報告させることについては考えていない。

二の2について

 御指摘の諸対策を講ずることは、本制度への加入を事実上強制することになることから、当面その実施は困難と考える。
 なお、下請負人の加入を促進するため、元請負人が下請契約を結ぶ際に掛金相当額を下請代金に算入すること又は下請負人に対して共済証紙を現物交付することを勧奨しているところである。

三の1について

 掛金収納書の発注機関への提出状況については、主要な発注機関について調査中である。

三の2について

 証紙購入の履行確保のため、掛金収納書を発注機関に提出するよう行政指導を行っており、今後ともその徹底に努めてまいりたい。

三の3及び4について

 御指摘のような報告をさせることについては、事務量が膨大であり、実効を期し難いので、実施することは困難である。
 なお、適正な手帳の交付及び証紙のちょう付については、業界団体を通じて啓発指導を行っているところである。

四について

 「建設業退職金共済制度適用事業主工事現場」の標識掲示については、本制度の普及促進及び履行確保の趣旨から、行政指導として実施しているものであり、本件の実施状況を報告させることまでは考えていない。
 なお、本標識掲示の定着については、今後とも発注機関にも協力を求めてまいりたい。

五について

 すべての発注機関について、御指摘のような実施状況を点検し、未実施の発注機関に対し個別に指導することは事務的に困難であるが、本制度の実効性の確保のため、今後とも必要に応じ適宜指導を行ってまいりたい。

六の1について

 労働条件の最低基準を定めた労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)においても退職手当の支給を義務付けていないこと等から、本制度への加入を強制することとなるような改革は困難である。

六の2について

 本制度については、比較的短期間に複数の事業主の間を転々と移動する雇用者を対象としているため、過去の勤務期間の確認、掛金の負担等制度的に難しい問題があり、遡及適用の制度を設けることは困難である。

六の3について

 本制度はあくまで退職金共済制度であり、御指摘の他のメリットと結合させることは困難であると考えるが、退職金水準については、掛金日額の引上げ等によりその向上に努めてまいりたい。

六の4について

 御指摘の建設業退職金共済制度運営検討委員会は、建退共が、制度の実情等について日常的に関係行政機関と意見交換等を行うために実施しているものであり、特にいつまでに結論を出すということにはなっていない。
 また、建退共において、本制度に関する実態調査を行っているところであるが、その調査結果の発表時期等については決まっていない。