質問主意書

第118回国会(特別会)

質問主意書


質問第九号

建設業退職金共済制度の改善に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二年六月二十六日

上田 耕一郎   


       参議院議長 土屋 義彦 殿


   建設業退職金共済制度の改善に関する質問主意書

 昨今、建設技能労働者の不足が極めて深刻な問題となっており、建設労働者の待遇改善は急務である。しかるに、一九六四年に発足した建設業退職金共済制度が、二十六年を経ていまだ十分な普及をみていないことは重大である。建設労働者の生活の安定とともに、建設業の健全な発展、公共事業の円滑な実施のためにも、建設業退職金共済制度の改善、普及が強く求められている。
 よって、以下質問する。

一 予定価格の積算における掛金相当額の算入について

1 公共工事については、建設業退職金共済制度の普及のため、掛金に相当する金額を予定価格の積算に算入することとしている。国の発注機関、特殊法人、都道府県、市町村、第三セクターが一九八九年度に発注した建設工事について、発注金額、及びその予定価格に算入されている掛金相当額は、機関の類別毎の合計でそれぞれ幾らか。機関の類別の内訳が不明であれば、全体としてはどのくらいか。
2 これらの機関は、すべて掛金相当額を予定価格の積算に算入しているか。算入していないところがあるとすれば、前記の機関類別に、算入していない発注機関数及びその割合はどのくらいか。機関の類別の内訳が不明であれば、全体としてはどのくらいか。また、算入していない理由は何か。
3 右1、2について調査していなければ、早急に調査し、その結果を明らかにすべきではないか。

二 指名競争参加資格審査における加入・履行証明書の徴収について

1 建設省は、発注官公庁が指名競争の参加資格審査の際、審査申請書に建設業退職金共済の加入・履行証明書を添付させるよう指導している。しかるにその実施状況は、市町村段階では六割弱であり、国の機関においても実施されていない場合が少なくないと聞く。
 前記各発注機関の類型毎の実施機関の割合はどのくらいか。国の機関、特殊法人で未実施のものがあれば、その名前を明らかにされたい。もし調査していなければ、早急に調査し、その結果を明らかにすべきではないか。また、発注機関からその実施状況を建設業・清酒製造業・林業退職金共済組合(以下「建退共」という。)に報告させることとすべきではないか。
2 建設省は、元請け企業が当該工事に係る下請け事業主の加入に努めるよう指導しているが、その実態は明らかになっていない。すべての公共工事について、原則として未加入業者は工事に参加させないこととし、直接工事を請け負った事業者から発注機関に対し、当該工事に係るすべての下請け建設業者名とその加入・履行証明書を提出させること、特に未加入業者に下請け発注する場合はその理由を報告させること、以上の実施状況について発注機関から建退共に報告させること、などの対策を講ずべきではないか。
 当面すぐには困難であるというのであれば、それに代わる具体策を明らかにされたい。

三 掛金収納書の提出について

1 建設省は、工事の契約後、当該工事に係る掛金収納書を提出させるよう指導している。しかるにその実施状況は、市町村段階では三割弱であり、国の機関においても実施されていない場合が少なくないと聞く。
 前記各発注機関の類型毎の実施機関の割合はどのくらいか。国の機関、特殊法人で未実施のものがあれば、その名前を明らかにされたい。もし調査していなければ、早急に調査し、その結果を明らかにすべきではないか。
2 掛金収納書の提出については、今年度から原本の提出を義務付けることとなり、一定の改善はされたが、依然として証紙の購入率が低い事例も少なくない。掛金収納書の提出は、契約後の一回だけでなく、最終精算時に当該工事に係る証紙購入の総量を報告させるべきではないか。
3 当該工事に係る労働者の手帳保有状況及び証紙の貼付状況についても、元請け業者から発注機関に報告させ、その実施状況を建退共に報告させることとすべきではないか。
4 右2、3に代わるべき具体策があれば、明らかにされたい。

四 建設業退職金共済制度適用事業主工事現場の標識の掲示について

1 建退共では、昨年七月から「建設業退職金共済制度適用事業主工事現場」の標識の掲示を推進することとし、五十万枚余の標識を支部に配付している。同標識を掲示した現場では、証紙の貼付が向上しているとの報告もある。
 しかし、実際の掲示状況は明らかになっていない。掲示の状況を報告させるとともに、掲示していない現場についてはその理由を報告させるようにすべきではないか。また、発注機関からその実施状況を建退共に報告させるべきではないか。
2 藤沢市では、市当局が標識を入手し、契約事業者に配付し、現場に掲示させていると聞く。少なくとも国の機関、特殊法人については直ちにそうすべきではないか。

五 発注機関の取組の改善について

 建退共では、毎年加入促進等重点地区を定めて市町村に対し前記対策の実施方を要請しているが、一九八九年度の実績は五県四十二市町村にすぎない。すべての公共工事発注機関に対し、予定価格の積算における掛金相当額の算入状況、指名の際の加入・履行証明書の徴収状況、契約後の掛金収納書の徴収状況を点検し、その結果を明らかにするとともに、未実施の発注機関に対しては、今後の改善策を提出させる等、個別に強力な指導をすべきではないか。

六 制度の改善について

1 制度が十分に普及しない根本問題の一つは、工事毎に現場が異なり事業主間を移動する者が多い建設労働者を対象とした制度でありながら、事業主が加入しなければ手帳も交付されず証紙の貼付も行われない仕組みにある。発足以来二十六年を経て共済契約者が十三万近くに達した現在、少なくとも一定の基準を超える事業主については強制加入にすること、あるいは日雇雇用保険や日雇健康保険のように、事業主の意思にかかわらず労働者の請求で手帳が交付される仕組みにすることなどの改革をすべきではないか。
2 事業主が被雇用者の意思を確認しないまま手帳の発行の申請を怠ったため、退職金の給付を受けられなかった労働者について、当該事業主が掛金相当額の退職金を支払った事例が出ている。少なくとも事業主が雇用を確認できる期間については、遡及適用を認めるよう改善すべきではないか。
3 建設業退職金共済制度が十分に普及しない理由のひとつは、長期の掛金を要するのに比して退職金の金額が少なく、魅力が少ないことが指摘されている。退職金を引き上げるとともに、例えば証紙貼付枚数に応じた有給休暇の付与等、現在的なメリットと結合することも検討すべきではないか。
4 昨年、建設省、労働省、建退共で建設業退職金共済制度運営検討委員会を設置し、同制度の運営改善や制度の見直し作業に着手したと承知している。これまでどのような検討を行ってきたのか、具体的に明らかにされたい。また、いつまでに結論を出すのか。
 労働省は建設業退職金制度に関する実態調査を行っているが、その内容と調査結果を明らかにされたい。まだまとまっていないとすれば、いつごろ発表するのか。

  右質問する。