質問主意書

第118回国会(特別会)

質問主意書


質問第七号

障害者の雇用対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二年六月二十五日

立木 洋   


       参議院議長 土屋 義彦 殿


   障害者の雇用対策に関する質問主意書

 今年は国際障害者年から十年目、「国連・障害者の十年」もあと二年である。わが国では、今なお、精神障害者、てんかん、難病患者は、福祉施策の対象となる『障害者』の範囲から除外されている。障害者の社会参加を保障するまちづくりを見ても、駅のホームへのエレベーターや、エスカレーターの設置は全国的にはまだまだ不十分な数しかない。
 また、先の総選挙ではテレビの政見放送に手話通訳さえ付けられず、聴力障害者の政治参加の願いは踏みにじられている状態にある。周知のように、国際障害者年の理念は「全面参加と平等」である。この立場から、重要課題の一つである障害者の雇用対策に関する次の事項について質問する。

一 八十八年四月、「障害者の雇用の促進等に関する法律」により「障害者」の対象が拡大され、法定雇用率は一・六%に引き上げられた。しかし、その後連続して有効求人倍率が上昇しているにもかかわらず障害者の実雇用率は横這いである。総務庁も「身体障害者の福祉・雇用に関する調査結果に基づく改善意見」で、「企業における雇用率の改善が十分図られていない」と指摘しているところである。これはどのようなことが理由で達成されないと考えているのか。

二 大きな企業ほど雇用状況が悪く、業種で見れば、銀行、保険、金融、不動産業などが障害者の雇用で遅れている。しかも以前からこの傾向は続いている。これらの業界は近年、土地、為替投機等で大儲けする一方で、障害者の雇用という最低の社会的責任も果たしていない。それもこの十年間ほとんど変わらず一向に努力の跡が見えないが、政府としてどのような対策を立て、改善していくのか。

三 法定雇用率で諸外国の例を見れば、例えば西ドイツは六%、オーストリアは四%以上であるが、日本は六十三人以上の民間企業で法定雇用率一・六%である。しかし、この率は現在はパート労働者は除外して常用労働者を対象に雇用率を課すことになっている。今日、大企業は膨大なパート労働者を雇用している。これでは大企業などはほとんど障害者を雇用しなくてよいことになるのではないか。この事態に対応し政府は、パート労働者も算定の基準の中に含めるべきではないか。

四 「障害者の雇用の促進等に関する法律」では、労働大臣に雇用率未達成の企業名を公表する権限を与えている(第十六条)が、この権限はこれまで一度も行使されていない。この権限を行使し厳しい姿勢で雇用を促す必要があるのではないか。
 また、総務庁の「改善意見」でも、同法第十五条に定める障害者の雇入れ計画についての作成命令、雇入れ計画の適正実施勧告などが職業安定所において十分に行われていない実態を指摘している。職業安定所の職員の増員など体制の強化を図るとともに、こうした権限を十分に発揮し、障害者雇用に万全を期すべきと考えるがどうか。

五 小規模作業所(共同作業所)は急速にその数が増えている。この小規模作業所の現状について、(1)現在全国で何箇所ぐらいあるのか。(2)一作業所当たりの平均通所者は何人くらいか。(3)年令構成はどのようになっているか。政府はどのように把握しているか。

六 民間の調査によると、小規模作業所(共同作業所)は八十四年に千十箇所であったのが、八十八年には二千二百五十箇所になっている。この間に倍以上、急速に増えている理由について政府はどのように考えているのか。

七 養護学校の卒業生の就職率はどのように推移しているか。

八 精神薄弱者を含めて、重度障害者の雇用対策が進んでいない一方で、養護学校卒業生の進路先として、あるいは精神病院退院者の地域の活動の拠点としての小規模作業所は、今後ますます増加の一途をたどることは、もはや論を待たずして確信できるところであろう。障害者の働きたい、社会活動に参加したい、という要求の反映が小規模作業所の増大になって現われていると思われるが、政府はどのような対応を考えているのか。具体的に示して頂きたい。

九 小規模作業所の運営には障害者の家族や関係団体の大きな努力がある。政府の国際障害者年後期重点施策でも「重度障害者に最大の重点を置きつつ、可能な限り一般雇用の場を確保することを基本方針として障害者の特性に応じたきめ細かい諸対策を講じていくものとする」、「小規模作業所に対する助成の充実」を挙げている。しかし政府の補助は低く、今年度、七百九十四箇所に対し、一箇所当たり八十万円の補助を行ったが、これは運営費平均額の九・〇%程度のものであり、地方自治体の平均交付額と比べても約六分の一に過ぎない。政府は小規模作業所に対する補助を拡充していく考えはないか。

十 具体的に聞くが、(1)補助金の交付を都道府県を通じて支弁できないか。(2)一箇所当たりの補助単価を大幅に引き上げる考えはないか。(3)補助対象作業所をすべての小規模作業所に拡充できないか。

  右質問する。