質問主意書

第118回国会(特別会)

質問主意書


質問第六号

出入国管理及び難民認定法に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二年六月二十一日

北村 哲男   


       参議院議長 土屋 義彦 殿


   出入国管理及び難民認定法に関する質問主意書

 出入国管理及び難民認定法の一部が改正され、本年六月一日より施行されたが、これに伴って在日外国人の中で不安が広まっている。特に政治亡命的希望を持っている中国人就学生・留学生の中でその不安が大きい。
 彼らの多くは、天安門における武力弾圧の事件のあった一九八九年六月四日以後の中国に帰国すると弾圧を受けるのではないかという不安を感じている。
 したがって、査証(ビザ)の更新申請の際、特別事情による滞在の申請をしても正式な滞在許可を受けられず、「申請中」という中途半端な状態である。
 一九八九年六月、衆議院法務委員会で法務大臣は、天安門事件を理由として日本に滞在を希望する中国人就学生・留学生等については、個別に対応し、弾力的に対応すると答弁しているが、これについては二つの大きな問題がある。
 一つには、政府が個別に対応する方針を取ったので、滞在延長を希望する者は自分が反政府的人物であり、かつ反政府的活動をしてきたことを証明しなければならない。そうなるといずれ帰国を余儀なくされた時がきた場合、反政府的行為の自白を残して帰国することになる。
 二つには、反政府的活動の証明をしたにもかかわらず、「出国準備期間」を付与されたわずかな事例はあるものの、他のすべては「申請中」であり、申請が認められ更新が許可された事例は一件もない。
 このようなことが近代国家において許されて良いはずがない。日本は「難民の地位に関する条約」と「難民の地位に関する議定書」のいずれをも批准している。
 これらによると、難民とは「人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること、又は政治意見を理由に迫害を受けるという十分に理由のある恐怖を有するために国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けることができない者又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まない者」をいうとされている。彼らはまさにこれに該当すると考えられる。
 日本政府は、こうした不安定な中国人留学生等についてその滞在を正式に許可し、安心して日本にいることができるように早急に対処すべきである。そうしなければ、日本はますます人権後進国の汚名を強め、国際的評価は低落するであろう。
 そこで、以下三点について質問する。

一 現在、特別事情(天安門事件以来、中国政府に対する抗議の行動をし、又は中国民主化運動に携わったということで帰国すると迫害を受ける恐れが強いという事情)による査証(ビザ)の更新申請をしている中国人就学生・留学生等は何名か。

二 既に査証(ビザ)若しくは旅券(パスポート)が期間経過により失効している状態で一と同じ理由により日本に滞在している(オーバーステイ)中国人就学生・留学生等は何名か。

三 前二項に該当する中国人就学生・留学生に対し、政府は、今後どのような措置を講ずるか。

  右質問する。