質問主意書

第116回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第八号

内閣参質一一六第八号

  平成元年十二月十五日

内閣総理大臣 海部 俊樹   


       参議院議長 土屋 義彦 殿

参議院議員瀬谷英行君提出千九百八十三年九月一日のサハリン上空における大韓航空〇〇七便遭難事件並びに千九百八十七年十一月二十九日のタイ、ビルマ付近における大韓航空機行方不明事件についての真相究明に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員瀬谷英行君提出千九百八十三年九月一日のサハリン上空における大韓航空〇〇七便遭難事件並びに千九百八十七年十一月二十九日のタイ、ビルマ付近における大韓航空機行方不明事件についての真相究明に関する質問に対する答弁書

一の(一)及び(二)について

 御指摘の大韓航空機〇〇七便事件に係る損害賠償請求訴訟事件は、外国の裁判所に現に係属中の事件であるから、政府として、右について言及することは差し控えたい。

一の(三)について

 事故原因究明に必要なボイスレコーダー等機体の重要な部分がすべていまだに発見されていない状況では、国際的な中立的機関である国際民間航空機関(ICAO)調査報告が依然として最も信頼し得る報告であると考える。その後、米国等事件関係国からICAOに対し新たな事実又は証拠等の発見についての報告がなされていないので、ICAOとしても再検討の予定はないと承知している。

二の(一)について

 御指摘の大韓航空機の機体の捜索は、完全に打ち切られたわけではないと承知している。

二の(二)について

 政府としては、昭和六十三年一月二十六日の内閣官房長官談話等で明らかにしたとおり、大韓航空機八五八便事件について、その真相究明のため韓国を始め関係各国政府と緊密な協力を行うとともに、情報の収集に努めてきた結果、本事件は、北朝鮮の組織的テロ行為によるものであると確信するに至ったものである。

二の(三)について

 昭和六十三年一月、外務省担当官が訪韓し、金賢姫と面会しており、また、同年二月、警察庁係官が訪韓し、李恩恵の人定事項や日本旅券の偽造経緯等に関して韓国当局と情報交換を行い、その際に韓国当局の行う金賢姫に対する事情聴取に立ち会い、金賢姫とも面会した。

二の(四)について

 これまでの日本における捜査により、大韓航空機八五八便事件の際に金賢姫と行動を共にしていた男性が所持していた蜂谷真一名義の旅券は、偽造であり、この偽造には北朝鮮工作員が関与していたこと、金賢姫が幼少時に韓国代表団に花束を渡した際に撮られたものであると供述している写真につき、同写真に写っている少女は金賢姫と同一性が認められ、朝鮮総聯が主張する鄭姫善なる者とは同一性が認められないことが、明らかになっている。
 なお、李恩恵の身元については、現在もなお調査中である。

二の(五)について

 日本人が北朝鮮によって拉致された事案としては、昭和五十二年に石川県警察が検挙した「宇出津事件」の例があり、同事件においては北朝鮮の指令を受けた在日朝鮮人が都内居住の日本人男性を拉致したことが明らかになっている。また、昭和五十三年七月から八月にかけて福井、新潟、鹿児島、富山の各県で連続して発生したいわゆるアベック行方不明事案及びアベック監禁致傷事件も北朝鮮による拉致又は拉致未遂事件の疑いが濃い。
 他方、昭和五十二年に警視庁が検挙した「豊島事件」においては、検挙された北朝鮮スパイが、日本潜入前に北朝鮮のスパイ養成所において日本人から日本語教育を受けたと自供している。しかし、この日本人が拉致された日本人か否かの確証はない。
 なお、李恩恵に関する金賢姫の供述についてもその信憑性は極めて高いと認められ、李恩恵が日本から拉致された日本人であることは間違いないと考えられるが、その身元については現在もなお調査中である。