質問主意書

第116回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第三号

内閣参質一一六第三号

  平成元年十一月十四日

内閣総理大臣 海部 俊樹   


       参議院議長 土屋 義彦 殿

参議院議員塩出啓典君提出障害者雇用対策の充実に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員塩出啓典君提出障害者雇用対策の充実に関する質問に対する答弁書

一について

 平成元年六月一日現在で民間企業に雇用されている障害者数は約十九万五千人、実雇用率は一・三二パーセントとなっており、昨年に比べて障害者数で約八千人の大幅増となるなど障害者の雇用状況の改善は進みつつあるが、いまだ十分とは言えないと考えている。

二について

 平成元年六月一日現在における千人以上規模企業の雇用状況をみると、雇用率未達成企業の割合は八〇・四パーセントで、昨年に比べて〇・一ポイント改善され、雇用されている障害者数が増加するなど、障害者雇用の努力は認められるが、更に一層の改善を求める必要がある。
 したがって、政府としては、特に大企業に重点を置き、今後身体障害者の雇入れに関する計画の作成命令等の制度を更に厳正に運用するとともに、昭和六十三年度から実施しているブロック別事業主懇談会の積極的活用などを通じ強力な指導を実施してまいりたい。

三について

 第三次産業については、従来から重点指導対象業種として指導に取り組んできたところである。さらに平成元年度から第三次産業雇用率達成促進会議を開催し、関係企業に雇用好事例を紹介するなど、指導の一層の充実を図っているところであり、今後とも業種の特性に応じたきめ細かな指導を行ってまいりたい。

四について

 平成元年六月一日現在で民間企業に雇用されている障害者に占める重度身体障害者の割合は、約二四パーセントとなっている。
 第三セクター方式による重度障害者雇用企業については、現在情報処理サービス、輸送用機械器具製造等の業種において十二企業が操業中であり、今後全国的に設置を推進していくこととしている。

五について

 障害の重度化等を背景に、職場への適応に当たって様々な問題を持つ障害者が増加していることなどにより、障害者の職場定着は難しくなっていると考えている。このため、政府としては、障害者及び事業主に対するきめ細かな相談及び指導の充実、事業所内に設置されている職場定着推進チームへの指導及び援助、現在建設中の障害者職業総合センターにおける具体的調査研究などにより職場定着の推進を図ってまいりたい。

六について

 身体障害者雇用納付金の額については、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和三十五年法律第百二十三号。以下「障害者法」という。)に基づき、事業主がその雇用する労働者の数に法定の雇用率を乗じて得た数に達するまでの数の身体障害者を雇用するものとした場合に当該身体障害者一人につき通常必要とされる一月当たりの特別費用の額の平均額を基準として定めることとされており、政府としては、当該平均額の推移を見極めつつ身体障害者雇用納付金の額を定めてまいりたい。

七について

 精神薄弱者対策については、第三セクター方式による精神薄弱者能力開発センターの育成、地域障害者職業センターにおける職業準備訓練の実施、障害者職業訓練校における精神薄弱者を対象とした訓練科の設置等により、条件整備を図りつつその雇用の促進等を図っているところである。

八について

 政府としては、特に実雇用率の低い企業に対しては、障害者法に基づき、身体障害者の雇入れに関する計画の作成を命ずるとともに、同計画の適正な実施に関し勧告を行うこと等により法定の雇用率の達成が図られるよう指導を行っているところであるが、正当な理由がなく同勧告に従わない企業に対しては、その旨を公表することとしている。現在のところ、公表制度の趣旨に照らし公表の対象とすべき企業は存在していない。

九について

 障害者の雇用状況の報告については、毎年の雇用状況を把握するとともに、今後の行政指導に資することを目的として実施しているものであり、政府としては、個々の企業の雇用状況の公表については、障害者法の規定に基づいて行うべきものと考える。

十について

 ILO第百五十九号条約の批准に関しては、関係省庁において検討中であり、同条約の批准の見通し等については具体的に申し上げられない。