質問主意書

第116回国会(臨時会)

質問主意書


質問第五号

米陸軍秋月弾薬廠の幹部将校の家族住宅建設に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成元年十一月二日

林 紀子   


       参議院議長 土屋 義彦 殿


   米陸軍秋月弾薬廠の幹部将校の家族住宅建設に関する質問主意書

 防衛施設庁は、広島県安芸郡音戸町波多見十丁目の請石第二団地内に、在日米陸軍秋月弾薬廠(呉市昭和町)の司令官など幹部将校の家族住宅を建設しようとしている。
 音戸町町民は、この米軍の住宅建設計画について、防衛施設庁から全く知らされておらず、本年一月二十九日付けの新聞報道で初めて知るということであった。予定地は閑静な住宅地であり、住民は突如として米軍住宅が建設されることを知り、同計画に不安と危惧を抱いている。住民が再三にわたり説明会の開催を要求しているにもかかわらず、広島防衛施設局は、依然としてこれに応じようとはしていない。「米軍宿舎を考える会」(妹尾章子代表)も結成され、住民をはじめ、父母や教員の間で、建設反対の運動が広がっている。
 在日米陸軍は、広島県においては一九八一年から貯蔵能力五~六万トンの川上弾薬庫の施設を増強している。これと前後して日本政府は「思いやり」予算によって七九年度から秋月、広、川上弾薬庫等の施設及びその関連施設の強化を図っている。防衛施設庁が建設しようとしている米軍住宅は、その整備の一環をなすものである。
 米側に提供されるこれらの住宅、土地などの「施設・区域」は、米軍が管理する飛行場、射撃場、演習場、弾薬庫等の軍事施設と法的には全く同じであり、この米軍の住宅施設区域で米軍人にかかわる事件、事故が発生した場合の日本の捜査権、刑事裁判権の行使の制約、消防法等日本の国内法の適用如何などに関し、重大な問題をはらむことになる。
 この米軍住宅の建設は、神奈川県逗子市の池子米軍住宅建設計画をはじめ、今日、全国的に進められている米軍基地強化と不可分のものであり、断じて容認できない。
 よって、以下の点について質問する。

一 米軍の住宅建設は、町の振興開発、都市計画、行財政はもとより、住民の生活、住環境などに大きな影響を与えるものである。従って、防衛施設庁は、住民に対して同計画について十分な説明をすべきであり、そのために説明会を早急に開くべきではないか。

二 広島防衛施設局は、米軍の住宅建設について、林音戸町町長並びに町当局に、いつ、いかなる内容の説明を行ったのか。この際、これまでの町当局に対する説明、折衝等についての経緯をすべて明らかにされたい。

三 広島防衛施設局は、米側から住宅建設の要請があったと説明しているが、米側のどういう機関からいついかなる内容の要請があったのか、具体的に答えられたい。

四 米軍住宅については、四世帯、平屋建てで一戸の面積が約二百坪と言われているが、規模、世帯数、一戸当たりの面積を明らかにされたい。

五 防衛施設庁は、米軍の住宅建設については提供施設整備費、いわゆる「思いやり」予算で行うとして、平成元年度予算で住宅建設のための調査設計費を計上、平成二年度予算の概算要求では工事費を要求している。その調査設計費、工事費はいくらか。また、住宅建設にかかる総工費並びに住宅一戸当たりの建設費を明らかにされたい。

六 米軍住宅は在日米陸軍秋月弾薬廠の幹部将校用のものとされている。秋月弾薬廠に配備されている部隊の名称・将兵数、上級指揮部隊・機関名及び同部隊の任務と役割を明らかにされたい。また、入居予定の幹部将校の階級は何か。

七 そもそも、建設予定地(面積・約二千八百平方メートル、地目・山林)は、第二請石団地の造成を行った長門観光開発株式会社(呉市西中央二丁目五番地)の所有である。
 長門観光開発株式会社は、同土地を一九八九年三月三十日に総理府に売却している。売買価格は約一億円と報じられているが、売買の価格及び経緯について明らかにされたい。

八 一九八九年六月一日、政府は建設予定地を日米地位協定第二条第一項Aに基づき米側に対し新規に提供している。提供について、いつの合同委員会でどういう合意が日米間で行われたのか。その経緯、内容及び「個々の施設及び区域に関する協定」の内容を明らかにされたい。また、当該建設予定地の管理権は米軍当局に移ったと思うがどうか。もし、まだだとするなら、いつの時点で移るのか。

九 建設を予定している住宅施設は、仮に米側に提供されたとすると、米軍が管理する飛行場、射撃場、演習場、弾薬庫、軍港等の軍事施設と同じように日米地位協定に規定されている「施設及び区域」に含まれると思うがどうか。また、その住宅施設は、規制区域の対象として防護柵を設置することになると言われているがその通りか。

十 米軍人による交通事故、犯罪等に対する捜査権、刑事裁判権は、日米地位協定第十七条、十八条並びに関連取り決めに基づいて処理されることになるのか。

十一 例えば、住宅施設への無断立ち入り等は米軍刑事特別法の対象になるのか。

十二 米軍に提供された場合の住宅施設内において、日本の消防署は消防法に規定されている権限に基づいて立ち入り調査、査察、独自の判断による消防活動ができるのか。それとも、呉市あるいは音戸町と米軍当局が「消防協定」を締結し、米軍当局の要請と同意、指揮のもとに消火活動を行うということになるのか。

十三 米軍住宅の建設に伴う道路、上下水道、ごみ処理施設についての便宜の形態はどうなるのか。また、これらの施設建設費用及び使用料は、どこが負担するのか。また、これらについて音戸町当局とどういう協議をしているのか。

十四 米軍の住宅建設に当たって、防衛施設庁、広島防衛施設局と音戸町当局との間で、例えば、町が実施する道路整備、施設整備等の事業助成等の約束があるのか。住宅の場合は、飛行場や訓練場とは異なり「基地周辺整備法」に基づく調整交付金の対象にはならないと考えるがどうか。自治省所管の「基地交付金」は対象になると思うがどうか、また、その場合の算定方法はどうか。

十五 防衛施設庁が、米軍の幹部将校の家族住宅建設について請石団地住民をはじめ音戸町住民の反対の意思を無視し、説明会の開催すら拒否して米軍の住宅建設を強行しようとしているのは重大である。測量工事を即時中止するとともに、建設計画を白紙撤回すべきであると考えるがどうか。

  右質問する。