質問主意書

第116回国会(臨時会)

質問主意書


質問第三号

障害者雇用対策の充実に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成元年十月二十三日

塩出 啓典   


       参議院議長 土屋 義彦 殿


   障害者雇用対策の充実に関する質問主意書

 我が国の障害者の雇用対策は、身体障害者雇用促進法(昭和三十五年法律第百二十三号)の制定以来、同法を中心に進められてきた。更に昭和五十六年の国際障害者年を契機として策定された「障害者対策に関する長期計画」及び国連障害者の十年(昭和五十八年~平成四年)の中間年に当たる昭和六十二年に策定された「同計画の後期重点施策」に基づき、重度障害者に重点を置き、可能な限り一般雇用の場を確保するとの基本方針の下に進められてきたところである。特に一昨年には、法律の対象となる障害者の範囲が身体障害者から、精神薄弱者、精神障害者を含む障害者全般に拡大され、精神薄弱者については実雇用率算定の基礎に算入すること等の身体障害者雇用促進法の改正が行われるとともに(「障害者の雇用の促進等に関する法律」に改称)、昨年から法定雇用率が〇・一ポイント引き上げられたところである。
 しかしながら、こうした政府の施策や昨今の景気拡大を背景とした人手不足にもかかわらず、障害者の実雇用率は、ここ数年停滞気味である。また、企業規模間、業種間において、障害者の雇用に格差が見られるほか、障害者の職場定着が大きな課題となっている。
 このような現状を踏まえ、障害者雇用の拡大を図る観点から、以下の事項について質問する。

一 障害者の雇用状況について、政府はどのように現状を認識しているのか、伺いたい。

二 雇用率未達成企業の割合は、大企業ほど高いという傾向が見られ、千人以上の企業においては、八割以上が未達成である。この背景には、大企業を中心に、納付金さえ納めれば済むといった風潮があるのではないかと思われる。こうした現状について政府は、どのように認識しているのか。
 また、大企業等をはじめ、障害者雇用を今後どのように推進していくつもりか、伺いたい。

三 雇用状況を業種別に見ると、製造業などで実雇用率が上昇しているものの、卸売・小売業、金融・保険業等では雇用率未達成企業が圧倒的に多い。業種別の障害者雇用促進のための具体的施策について、伺いたい。

四 重度身体障害者については、雇用率算定に当たって、その一人をもって二人分の身体障害者とみなされることになっているが、その雇用状況について、伺いたい。
 また、直ちに一般雇用に就くことが困難な重度障害者及び精神薄弱者の雇用の場を確保するため、第三セクターによる重度障害者雇用企業の育成を強化すべきであると思うが、現状及び今後の計画について伺いたい。

五 障害者の職場への定着率が低いことが、実雇用率停滞の大きな要因となっており、障害者の雇用対策においては、職場への定着が最大の課題となっている。政府は、障害者の定着が進まない原因をどのように分析しているか。また、今後どのように定着率向上を図っていくのか、その具体的な施策について伺いたい。

六 法定雇用率が昨年四月から引き上げられたが、現在、身体障害者雇用納付金の一人当たりの月額は四万円で、昭和五十七年度以降据え置かれたままである。納付金の額についても、見直し、引き上げを図るべきではないか、伺いたい。

七 精神薄弱者については、一昨年の身体障害者雇用促進法の改正の際追加された附則第五条に、政府が精神薄弱者の能力発揮のための条件の整備に努め、雇用の促進及び職業の安定のための施策強化について検討する旨規定され、衆・参社会労働委員会においても雇用促進等のための諸条件整備推進についての附帯決議が付されたところである。これらの施策の検討及び条件整備の状況はどのように進んでいるのか、伺いたい。

八 前記の衆・参社会労働委員会の附帯決議において、障害者雇用に消極的な企業に対する企業名の公表制度の活用を検討することとされたが、この際、公表制度の活用に踏み切るべきではないか。

九 現在、障害者の雇用義務がある事業主は、毎年一回障害者の雇用状況を公共職業安定所に報告することが義務づけられているが、国民に対しても個々の企業の雇用状況を公表すべきであると考えるが、政府の見解を伺いたい。

十 昭和五十八年にILOにおいて、職業リハビリテーション及び雇用(障害者)に関する条約(ILO百五十九号条約)が採択されているが、我が国はこの条約を批准してはいない。一昨年の身体障害者雇用促進法の改正により、精神障害者も同法の適用対象たる障害者に含められ、批准できる環境整備が相当できたのではないか。なぜ批准できないのか、今後の批准の見通しについて伺いたい。

  右質問する。