質問主意書

第114回国会(常会)

答弁書


答弁書第一六号

内閣参質一一四第一六号

  平成元年六月十六日

内閣総理大臣 宇野 宗佑   


       参議院議長 土屋 義彦 殿

参議院議員佐藤昭夫君提出婦人の働く権利を守るための「育児休業」の制度化と「公的保育の拡大」等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員佐藤昭夫君提出婦人の働く権利を守るための「育児休業」の制度化と「公的保育の拡大」等に関する質問に対する答弁書

一の(一)について

 育児休業制度の法制化については、昭和五十九年に婦人少年問題審議会より提出された建議において「我が国における普及率も一割強にすぎないこと等を考慮すると、現段階において全企業に本制度の実施を強制することは困難であり、当面、行政側の積極的な指導、援助等により本制度のなお一層の普及を図ることが先決である」と指摘されているところである。
 政府としては同建議の趣旨を踏まえ、育児休業奨励金の活用等により、今後とも育児休業制度の普及促進に積極的に努めてまいりたい。

一の(二)について

  義務教育諸学校等の女子教育職員及び医療施設、社会福祉施設等の看護婦、保母等の育児休業に関する法律(昭和五十年法律第六十二号)においては、義務教育諸学校等の女子の教育職員について、その職務の特殊性等にかんがみ、育児休業制度を設けているものであり、学校に勤務するその他の女子の職員を同法の適用対象とすることは、学校以外の職場に勤務する同種の職種の女子公務員とのバランスや、公務員を含めた社会全体の育児休業制度の普及率がまだ低いこと等から、困難であると考える。

一の(三)について

 女子の育児休業後、当該女子が養育する児童について、保育に欠ける状況にあるときは、保育所への入所措置を適切に行うよう指導しているところである。

二の(一)について

 保育所措置費の国庫負担率については、入所措置事務等の団体委任事務化、最低基準の簡素化等により、地方の自主性、自律性が強化されたことを踏まえ、平成元年度以降、二分の一として恒久化したものである。
 乳児保育、延長保育等の保育対策については、従来からその改善に努めてきているところであるが、平成元年度においては、乳児保育について、対象となる児童の保護者の所得制限を撤廃するとともに、乳児保育を実施する保育所に乳児担当保母を一人配置すること、延長保育について、国庫補助対象保育所数を大幅に増加するとともに、児童数が少人数の場合も実施できるようにすること等制度の抜本的な改善を行い、予算額の大幅な増加を図ったところである。

二の(二)について

 児童館が整備されていない地域における留守家庭児童については、地域の自主的活動である児童育成クラブに対する助成等を行っているところであるが、平成元年度においても、児童育成クラブの助成箇所数の増加及び補助単価の大幅な増額を行ったところである。
 学童保育を法制化すべきとの意見については、今後とも現行制度の充実に努めることで対応してまいりたい。

三の(一)について

 政府としては、昭和六十二年度から職業生活と家庭生活との調和の観点から、長寿社会における女子労働者等の福祉の在り方について、調査・研究を行っているところであり、介護休暇制度についてもその対象としているところである。

三の(二)について

 政府としては、介護休暇の制度化については、長寿社会における女子労働者等の福祉の観点から、介護休暇制度の実態把握に努めるとともに、今後の課題として検討してまいりたい。

三の(三)について

 在宅の寝たきり老人等の介護に当たっている家庭を支援していくために、平成十二年度を目途に、寝たきり老人等を短期間保護するショートステイを五万床程度、高齢者等の日常生活上の世話を行うホームヘルパーを五万人程度確保するとともに、在宅の高齢者に対し昼間の介護や入浴、給食等のサービスを提供するデイ・サービスセンターを将来的には小規模も含めて一万箇所程度整備することとしている。
 また、訪問看護の拡充や、在宅での介護が困難な者に対する特別養護老人ホームや老人保健施設の整備も、併せて推進していくこととしている。

四の(一)について

 厚生年金保険の女子の保険料率については、通算年金制度等の整備に伴い加入期間が短い女子についても年金受給権が保障されるようになってきたこと、女子の平均余命が男子に比べて長いこと等から、男子の保険料率よりも低い率に設定する合理的な理由がなくなっているため、昭和五十五年の制度改正以来、毎年徐々にその差の解消を図ってきているところであり、今回の改正に当たっても、このような従来の考え方を踏襲して毎年徐々に引上げを行うこととしているところである。

四の(二)について

 厚生年金保険の女子の支給開始年齢については、昭和六十年の制度改正において、女子の雇用状況の動向、共済年金における男女同一の取扱い等にかんがみ、男子の支給開始年齢にそろえていく措置が採られたところであり、雇用条件の男女格差についてその解消が図られている現状においては、今後の支給開始年齢引上げに当たっても、同一の支給開始年齢としていくことが適当であると考えている。