質問主意書

第114回国会(常会)

答弁書


答弁書第六号

内閣参質一一四第六号

  平成元年三月三十一日

内閣総理大臣 竹下 登   


       参議院議長 土屋 義彦 殿

参議院議員猪熊重二君提出消費税法実施に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員猪熊重二君提出消費税法実施に関する質問に対する答弁書

第一点二の1及び2について

 消費税法(昭和六十三年法律第百八号)は、消費税の課税の対象、納税義務者、税額の計算の方法、申告の手続等について規定しており、消費税の転嫁については、税制改革法(昭和六十三年法律第百七号)において、消費に広く薄く負担を求めるという消費税の性格にかんがみ、消費税を円滑かつ適正に転嫁するものとするとの規定が設けられている。また、国は、消費税の円滑かつ適正な転嫁に寄与するため、必要な施策を講ずるものとする旨を併せて規定している。税制改革法のこれらの規定は、法律的な強制力を有する義務規定とはいえないものの、これにより消費税の円滑かつ適正な転嫁が要請されているものである。

第一点二の3の第一について

 不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)は、事業者が、虚偽表示、誘大な表示など一般消費者に誤認されるため、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示をすることを禁止している。
 公正取引委員会は、免税事業者に係る消費税の転嫁に関する表示についても、同法の規定に違反するおそれのある表示の例を示し、その未然防止を図っているものである。

第一点二の3の第二について

 地方公共団体が事業者として消費税を適正に転嫁しないことは、税制改革法第十一条第一項の趣旨に反するものであり、また、地方公共団体は、消費税の創設を含めて今次の税制改革の円滑な推進に資するための環境整備に配慮しなければならないとする同法第五条第三項の趣旨にも沿わないものであるので、政府としては、同法の趣旨にかんがみ、地方公共団体に対し、消費税の円滑かつ適正な転嫁が行われるよう指導を行っているものである。

第一点二の3の第三について

 政府は、税制改革法第十一条第二項の趣旨を踏まえ、消費税の転嫁が円滑かつ適正に行われるよう消費税の仕組み等の周知徹底に努めているものである。

第二点二について

 資産の譲渡等に係る消費税(以下「消費税」という。)の納税義務者は事業者であり、事業者と消費者その他の売買契約等の取引の相手方(以下「消費者等」という。)との間の法律関係は、その取引の当事者の関係である。したがって、消費者等が事業者に支払うのはその取引に係る物品やサービスの対価であり、消費税相当額は、物品やサービスのコストとともにその対価に含まれているものである。

第三点二について

 免税事業者の制度は、この種の税になじみの薄い我が国の現状を踏まえ、零細事業者の納税事務負担に配慮することが重要であるとの政策的観点から設けることとされたものである。
 この場合、免税事業者が消費者から収受する金銭の性格は、その提供する物品やサービスの対価であり、また、その対価は、所得税又は法人税に係る所得の金額の計算の基礎となる収入金額又は益金の額となる。

第四点二について

 中小零細事業者の事務負担等に配慮する趣旨で設けられた簡易課税制度又は限界控除制度の適用を受ける事業者が消費者から収受する金銭の性格は、その提供する物品やサービスの対価である。
 この場合、通常、これらの事業者が収受した物品やサービスの対価(消費税相当額を含む。)は、所得税又は法人税に係る所得の金額の計算の基礎となる収入金額又は益金の額となり、納付すべき消費税額は、所得税又は法人税に係る所得の金額の計算の基礎となる必要経費又は損金の額となる。

第五点二の1について

 消費税法上、消費税の納税義務者は事業者であり、したがって、国と消費者との間には消費税についてのいわゆる租税法律関係は生じない。

第五点二の2について

 消費税法は、消費税の根拠のみならず、納税義務者、課税物件、課税標準、課税免除及び税率等の課税要件並びに申告手続等について明確に定めており、憲法第八十四条に定める租税法律主義に違反しない。

第五点二の3及び4について

 消費者が支払うのは取引に係る物品やサービスの対価であり、消費税法に定める簡易課税制度等により御指摘のような不当利得返還請求権又は損害賠償請求権が生ずるものとは考えられない。