質問主意書

第114回国会(常会)

答弁書


答弁書第四号

内閣参質一一四第四号

  平成元年三月二十八日

内閣総理大臣 竹下 登   


       参議院議長 土屋 義彦 殿

参議院議員丸谷金保君提出日米防衛特許協定等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員丸谷金保君提出日米防衛特許協定等に関する質問に対する答弁書

一の(一)について

 防衛目的のためにする特許権及び技術上の知識の交流を容易にするための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定(昭和三十一年条約第十二号)第三条及び同協定の不可分の一部を成す議定書(以下単に「議定書」という。)の関係規定を実施するための手続細目に関し、同協定に基づく技術財産委員会が行った勧告を日米各政府が受諾する旨を相互に通報した口上書については、外交当局間のやりとりの文書でもあり、日米両政府間で公表しないこととされているものである。

一の(二)について

 日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定(昭和二十九年条約第六号。以下「相互防衛援助協定」という。)に基づく日本国に対する一定の防衛分野における技術上の知識の供与に関する交換公文の実施のための当局間の細目取極については、日米両政府間で公表しないこととされているものである。

一の(三)の1について

 国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)等の関係規定が適用される。

一の(三)の2について

 捜査機関の職員が、捜査上の必要から日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法(昭和二十九年法律第百六十六号。以下「秘密保護法」という。)第一条第三項に規定されている防衛秘密(以下「防衛秘密」という。)に該当する協定出願(議定書第三項(a)に規定されている特許出願又は実用新案登録出願をいう。以下同じ。)の内容を知ること自体は、秘密保護法の規定に違反するものではない。ただし、当該職員が、正当な事由がなく当該協定出願の内容を他人に漏らしたときは、秘密保護法の規定に違反することとなる。
 また、防衛秘密に該当する協定出願の対象たる発明とは関係なくされた発明に関しては、当該協定出願の対象たる発明を公にすることと同じになるものであっても、秘密保護法の適用はなく、御指摘は当たらない。

一の(三)の3について

 警察当局としては、秘密保護法に違反する事件については、平素から捜査活動あるいは関係省庁からの告発等による捜査の端緒入手を図っており、捜査の端緒を得た場合には、検察当局、特許庁その他関係省庁と緊密な連携を保ち、必要に応じ専門家に対して鑑定嘱託を行うなどして、適正妥当な捜査を行うこととしている。
 専門的、科学的知識の問題についは、警察、検察当局において、それぞれ、職員に対し各種研修を行うなど、その習得に努めているところである。

一の(三)の4について

 協定出願の対象たる発明は、我が国政府の使用に供されるものである。

一の(四)の1について

 相互防衛援助協定に基づく次期支援戦闘機システムの共同開発に関する交換公文の実施のための当局間の細目取極については、日米両政府間で公表しないこととされており、文書そのものについては公表できない。

一の(四)の2について

 FS-X共同開発計画の成果として得られる技術情報は、日本政府に帰属することとなる。

一の(四)の3及び5について

 「適切に」供与することは、相互防衛援助協定及びこれに基づく取極並びに日米両国の関係法令等に従って供与することを意味する。

一の(四)の4について

 対米武器技術供与取極においては、武器技術の対米供与は、米側の要請を受け、個々具体的事例に即じて適当であると日本側が自主的に判断したものについて供与を認めることになっており、米側が要求すると技術をすべて対米供与しなければならないということにはなっていない。

一の(四)の6について

 対米武器技術供与取極は、外国為替及び外国貿易管理法(昭和二十四年法律第二百二十八号)及びその関係法令に従って実施されるものであり、国内法の整備がなされていないというのは当たらない。

一の(四)の7について

 米側が日本側に供与する技術を我が国が使用する態様は様々であり、一概には論じられない。なお、FS-X共同開発計画における米側から日本側への技術供与は、今後実施されるものであり、申じ述べる段階にない。

一の(四)の8について

 FS-X共同開発計画における日本側から米側への技術供与は、今後検討されるものであり、申し述べる段階にない。

一の(四)の9について

 日米間に御質問のような取極はない。

二の(一)について

 科学技術における研究開発のための協力に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定(以下「日・米科学技術協力協定」という。)に基づく協力活動において取り扱われないこととなる情報及び機材の取扱いについては、個々の場合の具体的状況により異なるので一概には論じられない。米国の国内法令の適用に係る問題は米側により判断されることとなる。なお、日・米科学技術協力協定に基づく協力活動の過程で生じた知的所有権の配分については、日米科学技術協力協定第六条及び附属書IVが適用される。

二の(二)について

 御指摘の「グレイゾーンの情報」なるものについては、具体的に何を念頭においておられるのか明らかではないが、昭和六十三年十月に設置された情報アクセス小委員会は、日・米科学技術協力協定附属書III2Iに基づき、科学技術に関する情報の利用の機会を改善するための方策につき検討を行うために設置されたものであり、それ以外の問題につき検討を行うことは想定されていない。なお、日・米科学技術協力協定には、その本文及び附属書のほか、いかなる両政府間の付随取極も存在しない。

三の(一)について

 常時有人の民生用宇宙基地の詳細設計、開発、運用及び利用における協力に関するアメリカ合衆国政府、欧州宇宙機関の加盟国政府、日本国政府及びカナダ政府の間の協定については、附属書を含め、その締結について国会の承認を求めるために国会に提出した。常時有人の民生用宇宙基地の詳細設計、開発、運用及び利用における協力に関する日本国政府と合衆国航空宇宙局との間の了解覚書については、同協定の国会審議の参考として提出した。
 同協定の交渉に関し交渉担当者が発出した御指摘の書簡については、国会等からの資料提出要求に応じてこれを提出することとしている。

三の(二)について

 国会決議の有権的解釈は、もとより国会においてなされるべきものと理解しているが、政府としては、我が国における宇宙の開発及び利用の基本に関する国会決議は、我が国における開発及び利用を対象としたものであると考えている。
 政府としては、宇宙の平和利用に関する我が国の立場を十分踏まえて対処してきており、今後ともこの方針に変わりはない。

三の(三)及び(四)について

 日本実験棟の利用が平和的目的のためのものであるかないかは、我が国政府が決定する。我が国政府が平和的目的のためのものでないと決定した場合には、そのような利用は、行われない。

三の(五)について

 米国が提供する宇宙基地の要素において米国の秘密の情報が取り扱われ、我が国が派遣する宇宙飛行士がそのような情報に接することとなる事態は、想定し難い。