質問主意書

第114回国会(常会)

質問主意書


質問第一七号

パートタイム労働者の権利保障等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成元年五月二十三日

佐藤 昭夫   


       参議院議長 土屋 義彦 殿


   パートタイム労働者の権利保障等に関する質問主意書

 今日、パートや臨時、アルバイトなどの不安定雇用労働者が急増している。週三十五時間未満就業の短時間雇用者だけをとってみても、千九百八十八年には五百三十三万人に上り、雇用者全体の十二%を占めるに至っている。その中心は女子であり、女子パートタイム労働者は三百八十六万人(全体の七十二・四%)で、女子労働者全体の二十三・六%を占めている。
 また、昭和六十三年版の婦人労働白書によると、パートタイム労働者の新規求人数は、前年に比べ二十九・八%増と、大幅な増加を示す一方、勤続年数の長期化、「熟練パート」や「専門職パート」など、基幹的労働力の一つとして欠くことのできないものとなっている。
 ところが、パートタイム労働者の賃金や労働条件は著しく劣悪で、無権利状態におかれている。例えば、女子パートタイム労働者の時間当たり平均賃金は六百二十三円(千九百八十七年)で、男子労働者の二分の一にすぎない女子一般雇用労働者の賃金を、更に大きく下回っている。また、パートタイム労働者には、一時金や退職金、手当などがなく、仮にあったとしても一般雇用労働者と大きく格差が付けられており、企業内福利厚生からも除外されている場合が多い。しかも、社会保険の適用率も極めて低く、労働条件の最低基準として企業に義務付けられている法令さえ、多くの企業で守られていないのが、現状である。
 本来、パートタイム労働者は短時間就業という一つの就労形態であって、パートタイム労働者と一般雇用労働者との違いは、労働時間の長短にすぎない。政府は、千九百八十四年に「パートタイム労働対策要綱」を明らかにし、行政指導を行ってきたが、極めて不十分であり、今こそパートタイム労働者の権利保障と労働条件の整備が求められている。
 そこで、以下、質問する。

一 政府は、パートタイム労働者が一般雇用労働者になることを希望するときは、その者に優先権を与えるなど、パートタイム労働者が一般雇用労働者となれるよう、指導すべきだと考えるが、どうか。
 また、現在、パートタイム労働者の多くは、一年契約若しくは数カ月契約で雇用関係を結んでいるが、企業の「雇用調整が容易」などの理由から一方的に解雇、契約解除が行われているケースが多い。政府は、安易な解雇、契約解除を行わないよう、法的規制も含め検討すべきだと考えるが、どうか。

二 政府は、パートタイム労働者の賃金について、同一労働同一賃金の原則に基づき、正規労働者と時間当たりで同一水準の賃金を支払うよう、事業主に対して通達等で指導しているが、実効が上がっていない。そこで、法制化も含め検討すべきだと考えるが、どうか。

三 所得税の課税最低限度の引上げについては、基礎控除、給与所得控除をそれぞれ引き上げ、パートタイム労働者への課税最低限度額を当面百二十万円にすべきであると考えるが、どうか。

四 パートタイム労働者は、法律上何ら一般雇用労働者と違いはないにもかかわらず、労働基準法に基づく年次有給休暇の取得や労働安全衛生規則によって義務付けられている健康診断などで、格差がみられる。
 こうしたことから、パートタイム労働者の一日の所定労働時間が六時間未満の場合でも、所定の休憩時間を保障するとともに、一般雇用労働者と同一基準に基づく有給休暇などを保障すべきだと考えるが、どうか。
 また、産前産後休暇、生理休暇、危険有害業務の就労制限など労働基準法に定める母性保護規定を、パートタイム労働者にも全面的に適用するとともに、定期健康診断を一般雇用労働者と同一に保障すべきであると考えるが、どうか。

五 パートタイム労働者については、雇用保険、健康保険、厚生年金などの社会保険の適用を拡大し、通常の労働者と同じ条件で適用すべきだと考えるが、どうか。
 また、二つ以上の事業所で就労した場合、就業期間の通算や社会保険などの適用の基礎とするよう、賃金、労働条件、就業日数・時間などを記載したパート手帳を、パートタイム労働者に交付するよう事業主に義務付けるべきだと考えるが、どうか。

六 パートタイム労働者の勤続年数は、長期化の傾向にあり、同一事業所における勤務期間が十年を超える者は、既に一割を占めるとともに、企業の基幹的労働力の一つとして欠くことのできないものとなっている。こうしたことから、退職金については、一般雇用労働者と同一基準で支給するよう、事業主を指導すべきであると考えるが、どうか。
 また、中小企業退職金共済制度へのパートタイム労働者の加入を促進するため、制度の見直しも含めて同制度を拡充すべきだと考えるが、どうか。

七 政府は、市、区、町、村単位にもパート労働相談所を設置し、パートタイム労働者の雇用、労働条件などについての相談に応ずべきと思うが、どうか。
 また、法違反の事業所については、同相談所が職業安定所、労働基準監督署、婦人少年室などの行政機関に通報できる体制を整備するため、現行の相談所の人員増を含めた強化策を早急に実施すべきだと考えるが、どうか。

  右質問する。