質問主意書

第114回国会(常会)

質問主意書


質問第一一号

公的年金制度の信頼性の確立に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成元年五月八日

塩出 啓典   


       参議院議長 土屋 義彦 殿


   公的年金制度の信頼性の確立に関する質問主意書

 二十一世紀の本格的な高齢化社会の到来を目前にした今日、老後の所得保障の中核的制度である公的年金制度に対する国民の関心と期待の高まりにはかってないものがある。
 しかるに、公的年金制度の将来を展望すると、今国会に提出された国民年金法の改正案における厚生年金保険の六十五歳支給開始年齢引上げ問題に端的に現われているように、将来の年金財政を維持するためには、給付水準の大幅なダウンと極限を超える高負担の方向が不可避であるかのごとく宣伝されている。また、こうした状況のなかで、鉄道共済年金の財政破綻を救済するための財政調整が行われようとしていることなどから、多くの国民が「自分たちが年金をもらう頃は年金財政が危なくなるのではないか」といった漠然とした不安を抱くなど、公的年金制度に対する国民の信頼は大きく揺らいでいるのが現状である。そこで、老後を託するに足る真に安定した頼りがいのある年金制度の確立を願う立場から、以下について質問する。

一 今回の財政再計算によると、厚生年金保険の保険料率は、男子の場合、現行の十二・四%が本年の十月から十四・六%となり、最終的には支給開始年齢を仮に六十五歳としても二十六・一%にまで引き上げることが必要と説明されている。こうした高負担について、保険料を実際に負担することとなる若年世代との間で世代間合意が成り立つことが本当に可能なのか、多くの国民が制度の将来、とりわけ財政基盤について大きな危惧を持っているのが現状である。
 政府は、厚生年金保険の財政状況をどう展望し、これに対する国民の不安をどのような形で解消するつもりなのか、明らかにされたい。また、今回の財政再計算の結果が前回と相違している原因は一体何なのか、政府の認識を伺いたい。

二 平成三十二年度以降の厚生年金保険の保険料率は、六十歳支給のまま推移すれば三十一・五%となり、同十年度以降支給開始年齢を段階的に六十五歳に引き上げても、ピーク時の保険料率は二十六・一%にも達すると説明されている。
 政府は、こうした高負担をそのまま課そうと考えているのか、あるいは適正な歯止めを考えているのかどうか、また将来の保険料負担の限界と若年世代のその負担の可能性についてはどのような見通しを持っているのか、伺いたい。

三 昭和六十年改正時における給付水準の大幅引下げ、さらには今回行われようとしている支給開始年齢の六十歳から六十五歳への引上げは、全く一方的な契約不履行とも言えるもので、民間の私保険における個人年金では到底考えられない措置である。実は、公的年金が強制適用の制度であることを奇貨として、このような給付の切下げ、負担増を重ねていることこそが、制度の将来に対する国民の信頼を揺るがしている元凶と言わざるをえない。
 政府は、国民の間に根強く存在する契約不履行論についてはどのような説明をするのか、また、このような事態に立ち至った原因は、一体どの辺にあると考えているのか、見解を示されたい。

四 国民年金基金制度の改善により、自営業者等についても基礎年金に上乗せの年金給付が行われようとしていることは基本的には評価する。民間の個人年金についても、今後これを育成して老後の所得保障の有力な手段としていくために、現行を上回る税制上の措置を講ずるべきであると考えるが、政府の認識はどうか。

  右質問する。