質問主意書

第113回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一一号

内閣参質一一三第一一号

  昭和六十三年十月十八日

内閣総理大臣 竹下 登   


       参議院議長 土屋 義彦 殿

参議院議員下田京子君提出東北地方を中心とした異常気象災害に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員下田京子君提出東北地方を中心とした異常気象災害に関する質問に対する答弁書

一について

 天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法(昭和三十年法律第百三十六号。以下「天災融資法」という。)及び激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律(昭和三十七年法律第百五十号)の適用については、被害の状況を十分に踏まえて速やかに対処してまいりたい。

1 天災融資法による資金の貸付限度額及び償還期限については、今後とも、被害農業者の経営の安定に資するという天災融資法の目的に照らしつつ適切に設定してまいりたい。また、貸付金利については、今後とも、災害に係る他の資金の貸付金利にも配慮しつつ適切に設定してまいりたい。
2 つなぎ融資及び既貸付金の償還条件の緩和については、被害の実情に応じこれに配慮するよう関係機関に対して依頼したところである。
3 天災融資法による資金の使途の緩和及び第二種兼業農家に対する融資については、被害農業者の経営の安定に資するという天災融資法の目的に照らし、現在の資金使途及び貸付対象者は、いずれも妥当なものであると考えている。
4 自作農維持資金は長期低利の資金であり、更にその貸付条件を緩和することは困難である。手続については、速やかに被害農業者に対する貸付けが実行されるよう関係機関を指導してまいりたい。また、融資枠の確保については、資金需要を見極めた上、適切に対処してまいりたい。なお、貸付限度額の特例については、被害の実情等を十分に見極めつつ検討してまいりたい。

二について

 農業共済の共済金の早期支払体制の確立については、損害評価を迅速かつ的確に行い、共済金等の支払を早期に行うよう農業共済団体等を指導しているところである。

1 損害評価の特例措置については、被害の実情を見ながら、適切に対処してまいりたい。
2 農業共済における損害評価については、農業共済組合等、農業共済組合連合会及び政府の各段階で公平かつ適正に行う必要があり、このうち損害評価の基本となる農業共済組合等による損害評価については、今回の災害についても、農業災害補償法(昭和二十二年法律第百八十五号)第九十八条の二の規定に基づき主務大臣が定める準則に従つて行うよう十分指導しているところである。
3 損害高の認定については、損害評価を迅速かつ的確に実施し、これを速やかに行うよう農業共済団体等を指導しているところであり、また、損害評価のための実測に要する経費については、予算の範囲内において、その実績に応じ、助成してまいりたい。

三について

 災害により米穀の政府への売渡しが困難となつた場合には、政府買入基準数量を変更するみちが開かれており、その適切な実施につき指導を行つている。

1 概算金の返納に係る加算金の利率については、被害の程度に応じ一定の基準により減免を行うこととしている。
2 災害により他用途利用米の契約数量の出荷が困難となつた場合には、作況調整により当該数量の変更を行うみちが開かれているが、これを超えて他用途利用米を主食用に転用することについては、他用途利用米の流通に関する契約を結んでいる実需者との関係等から困難な問題がある。
 しかしながら、特別に被害が著しい農家に対しては、何らかの措置を講ずることができるかどうか、今後、検討していく考えである。
3 災害により発生する規格外米を政府が特例的に買い入れることについては、過剰基調にある現下の米の需給事情の下では困難であり、このような規格外米については、今後、集荷団体とも協議の上、自主流通米としてのみちを開くことについて検討していく考えである。
4 災害により米作農家が飯米に不足を生じた場合には、当該米作農家も、一般消費者と同様に、小売業者を通じて米を購入することになるが、今後、被害の状況等を見極め、必要があれば、過去の取扱いを参酌しながら、所要の措置につき検討することとしている。

四の1について

 被害水稲の刈取り、乾燥、運搬等に要する経費については、一般的な農業経営費として取り扱うべきものと考えている。

四の2について

 農機具、肥料等を購入するために農業者が借り入れた資金については、利子補給を行うことは考えていないが、被害の実情に応じ既貸付金の償還条件の緩和に配慮するよう関係機関に対して依頼したところである。

四の3について

 加工原料用果実については、生産者からの委託を受けて農業協同組合等が販売するものを対象として、価格安定対策を実施し、関係生産者の経営の安定等に努めているところである。

四の4について

 政府としては、耕作したたばこ又は収穫した葉たばこが災害により損害を受けた場合の取扱いについては、日本たばこ産業株式会社において、たばこの耕作者との間で締結された昭和六十三年産葉たばこの売買契約の定めるところにより、適切に対処されるべきものと考えている。

五の1について

 農業共済における損害評価については、迅速かつ的確に行ない、損害高の確定が早期に行われるよう農業共済団体等を指導しているところである。
 また、米の検査については、生産者の事情をも十分考慮して実施してまいりたい。
 就労先のあつせんについては、関係市町村等の協力も得ながら、出稼ぎ希望者数等の実態の早期把握に努めつつ、巡回職業相談の実施等により公共職業安定所を通じての就労を徹底するとともに、積極的な求人開拓の実施等により良質な求人の確保に努めてまいりたい。

五の2について

 被災地域農家に対する国民健康保険税の減免については、各地方公共団体において、被害の状況に応じ、それぞれの条例に基づき対処されるものと承知している。
 所得税については、従来から、災害による農作物の被害状況を把握し、被災農家の実情に即し適切に対処しているところである。
 固定資産税については、災害被害者に対する減免措置等に関する基本的事項について、既に自治省において通達により地方公共団体に示しているところである。したがつて、今回の災害についても、当該通達に基づき被害の状況を見極めつつ適切に対処するよう地方公共団体を指導してまいりたい。

五の3について

 就学困難な児童及び生徒に係る就学奨励についての国の援助に関する法律(昭和三十一年法律第四十号)等に基づき、経済的理由により就学困難な児童又は生徒に対して市町村が学用品費、通学用品費等の給与を行つた場合は、国は補助を行つている。
 災害を受けたことにより就学援助を必要とする者が生じた場合には、市町村においてその都度適切に認定を行うよう指導してきているところであり、今回の災害においても、関係地方公共団体からの報告を待つて補助金の交付について適切に対処してまいりたいと考えている。
 また、公立高等学校の授業料の免除については、地方公共団体の定める条例等により行われるところであり、今回の災害に関しても、関係地方公共団体が適切に対処するものと考えている。

六について

 昭和六十四年度における米の需給均衡化のための対策については、今後の水稲の作柄の推移等を見極める必要があるが、米の持ち越し在庫が高い水準となつていること、米の消費の減退傾向が強まつていること等厳しい米の需給事情にもあるので、三度の米の過剰を回避する観点から検討し、推進していく必要があると考えている。
 また、国民の主食であり、かつ、我が国農業の基幹作物である米については、国会における決議等の趣旨を体し、生産性の向上を図りつつ、自給するとの基本的な方針で対処していく考えである。