質問主意書

第113回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一九号

長野県伊那谷における米軍ジェット機による低空飛行訓練に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十三年十二月六日

村沢 牧   


       参議院議長 土屋 義彦 殿


   長野県伊那谷における米軍ジェット機による低空飛行訓練に関する質問主意書

 本年八月下旬から九月上旬にかけて、さらに十一月中旬以降、長野県伊那谷を使用して米軍ジェット機が低空飛行訓練を実施したため、その通過地点となつた南信濃村、上村、大鹿村、長谷村、高遠町及び伊那市などでは、爆音に伴う被害や事故への不安から住民の生活が著しく破壊されている。長野県を始め関係村当局は、防衛施設庁、自衛隊及び外務省に対し、事実関係の確認と同訓練の中止等を強く要請しているが、一向に事態が改善されないまま今日に至つている。このまま事態を放置すれば、地域住民の生活への多大な影響、さらには、住民の安全にも重大な係わりが生ずると危惧される。
 よつて、以下の諸点について政府の見解を伺いたい。

一 当初、飛来しているジェット機の国籍、機種等は不明であつたが、報道関係者及び住民の写真撮影並びに当該村役場職員等の目撃により、横須賀に寄港中の米空母「ミッドウェー」の艦載機であることが判明している。
 政府は、この事実を確認しているか。また、それはどのような手段で確認したのか。

二 飛来しているジェット機の機種については、同じく地元の調査によりFA-18ホーネット、A-6イントルーダー、EA-6Bプラウラー及びKA-6Dが確認されている。
 政府は、訓練に参加している機種について、どのように把握しているか。また、それはどのような手段で確認したのか。

三 訓練に参加している航空機は、訓練時にどのような兵器(ミサイル、爆弾等)を搭載しているのか。

四 訓練の目的は低空飛行訓練と思われるが、政府は確認しているか。また、米軍における低空飛行訓練とはどのような態様の訓練か。

五 自衛隊においても低空飛行訓練を実施しているか。実施している場合は、その訓練の態様、実施時期、場所及び実施するに当たつての安全性の確保について、どのような配慮を行つているか明らかにされたい。

六 米軍が伊那谷における低空飛行訓練を実施するに当たつて、事前に、また、今日に至るまで地元に一切の説明がなされていないと承知しているが、政府には今日まで、何らかの説明があつたのか。また、訓練地域を選定するに当たつて、米軍から何らかの照会があつたのか。

七 今回の伊那谷における低空飛行訓練は、昨年八月に奈良県十津川村で発生した「ミッドウェー」艦載機EA-6Bの林業用ワイヤ切断事故に伴い、同訓練を伊那谷に移したのではないかと推測されているが、政府の認識はどうか。

八 米軍が低空飛行訓練の場所を伊那谷に移した理由は何か。同地域には、美和ダム、高圧線、治山工事用ワイヤ等が存在しており、同種訓練を実施するには危険と考えるが、政府の認識はどうか。また、米軍はこのような事実を承知の上で訓練地域を選定したのか。

九 低空飛行訓練の実施に伴い、地元では騒音により学校の授業、乳児や老人ホームのお年寄りなどの生活及び牛の搾乳に影響が出ている。また、事故の危険に怯え不安な生活を余儀なくされているが、政府はその実態を承知しているか。また、それに対してどのような対応を行つたのか。

十 訓練の態様について、政府は「日米安保条約に基づく地位協定上、実弾射撃を伴う訓練以外は、低空飛行訓練も含めてどこで行つても差し支えない。しかし、米軍側も日本の国民感情に配慮し、国内法を遵守しているはずだ」としているが、実際は、当該山村より低く、高圧線スレスレに、また、高圧線の下を飛行し、美和ダムを標的にしたような飛行を行つていることが、地元の調査で判明している。このような飛行が、我が国の法律を遵守し、住民の安全に配慮していると政府は認識しているのか。

十一 十一月二十八日、長野県知事は地域住民の不安を背景に、外務省北米局長及び在日米海軍司令官あてに、文書で低空飛行訓練の即時中止を要請したが、その後政府は本要請に対してどのような対応をしたのか。当然、米軍側とも連絡をとつたと考えるが、いつ、だれに対して、どのような内容の行動をとつたのかについても説明されたい。

十二 地元では、何の説明もないままに、突如としてこのような危険な訓練が実施されたことに対して強い憤りを示している。また、住民の平穏な生活と安全を確保するために、訓練の即時中止を求めている。政府は、このような住民の当然の要求に対して、最大限の努力をすべきと考えるので、以下の点について見解を示されたい。

1 事前に説明なく訓練を実施したことを地域住民に謝罪するとともに、かかる危険な訓練を直ちに中止させること
2 十一月十七日、大鹿村で山村振興のために「村民がヘリで村を見る催し」を実施するに当たつて、事前に安全確保のため訓練自粛を米軍に申し入れたが、これが無視された理由と今後の対処策
3 同地域では来年四月から送電線新設工事に伴つて、ヘリコプターによる資材空輸が予定されているが、そのための安全確保策
4 米軍の訓練が開始されてから、現地では度々政府機関に対して、その実態把握を要請したにもかかわらず、何らの積極的な対応を行わなかつたこと

十三 米軍の訓練に伴う国民生活への多大な影響が日本各地で発生していること、また、米軍の士気の緩みとおごりと断言せざるを得ない不祥事等が多発していることにかんがみ、政府として断固たる抗議を行うとともに、米軍訓練体系の改善を要請すべきと考えるが、政府の見解はどうか。

十四 国民生活の安全と平和を確保するためには、現在、野放しになつている米軍の訓練等の行動に対し、秩序ある規制を確保するため、日米地位協定の改定を含め、その是正を真剣に検討することが急務と考えるが、政府の見解はどうか。

  右質問する。