質問主意書

第113回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一一号

東北地方を中心とした異常気象災害に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十三年十月三日

下田 京子   


       参議院議長 土屋 義彦 殿


   東北地方を中心とした異常気象災害に関する質問主意書

 記録的な長雨と日照不足、低温などの異常気象のため、福島県・宮城県などを中心に農作物の成育の遅れや収穫の減少、病害虫被害の多発などが急速に広がり、農家の打撃は深刻なものとなつている。農民からは「大幅減反と二年連続の米価引下げ、その上、牛肉・オレンジの自由化決定など、先々の不安を感じていたところへこの災害ではこの先どうなるのか予想もつかない」と悲痛な苦悩の声が寄せられている。
 福島県の場合、県農業試験場の観測によれば、七月の降水量は二百十一ミリ(平年百六十七ミリ)、八月は二百二十七ミリ(平年百四十二ミリ)と異常に多く、逆に日照時間は七月で六十二時間(平年百六十一時間)、平均気温も七月で二二・四度(平年三〇・六度)と低く、幼穂形成期に異常気象に見舞われた早生種、中生種が大きな被害を受ける形となつた。
 また、いもち病発生面積は、九月十五日現在でおよそ五万ヘクタールに及び、全作付面積の五十パーセントを超えるに至つている。特に西白河郡東村形見地区では、水田七十ヘクタールのうち六割を占める「初星」が不稔、いもち、イナコウジ病の被害に遭うなど、平年の一~二割の収穫しか見込めない惨状にある。そして、稲作の作況は、九月十五日の調査では著しい不良が見込まれる事態となつている。
 さらに、被害地域は全県下に広がり、稲作に限らず、果樹、野菜類、豆類、こんにやく、葉たばこ、桑、牧草等の全作物に及び、これらの被災地では戦後最悪となる様相を見せている。
 したがつて政府に対し、こうした実態と農家の窮状にかんがみ、速やかに万全の対策を講ぜられるよう強く要請するとともに、災害対策について以下質問する。

一 政府は実態の把握を急ぎ、天災融資法及び激甚災害法の発動を速やかに行い、以下の対策を講ずべきと思うがどうか。

1 貸付限度額の大幅引上げ、償還期限の延長、金利の引下げを行うこと。
2 つなぎ融資及び既貸付金の償還条件についても1と同様の措置を採り、農協や市中銀行についても指導を徹底すること。
3 生活の困窮にかんがみ、資金使途を緩和し、二種兼業農家についても融資を行うこと。
4 自作農維持資金についても貸付条件の緩和、手続の簡素化、特別融資枠の拡大など特別措置を図ること。

二 被害の影響が全作物に及んでいることからも農家の苦悩は大きく、農業共済の早期支払体制の確立が待たれている。したがつて、被害の実態に即した公正・的確な評価を行い、必要に応じた共済金の仮渡しや再保険金の概算払い等の実施を急ぐよう指導するなど適切な措置を講ずるとともに、以下の対策を採るべきと思うが、政府の見解を示されたい。

1 五十八年冷害の救済対策としては、損害評価の特例措置が実施されたが、青米、褐色米及びクズ米は収量から除くなど、今回の災害でも損害評価の特例措置を図ること。
2 被害救済に万全を期すため、単位共済組合などの評価を尊重すること。
3 損害評価事務体制強化のため、適切な助成・援助を行い、速やかに認定を行うこと。

三 米穀の事前売渡申込み後の被災農家については、政令により変更の再契約ができるものとされている。被災農家の要望を尊重し再契約を認め、自治体に対する指導の徹底を図るとともに、以下の対策を講ずべきと思うがどうか。

1 予約概算金返納については要件を緩和し、利子加算の減免を図ること。
2 他用途利用米の予約取消しを認め、これを通常米として売渡しできるようにすること。
3 被災によつて大量に出ることが予想される等外米、規格外米については、政府がこれを全量買い入れるよう特例措置を採ること。
4 収穫が皆無に近い農家の続出が予想されることから、飯米の不足した米作農家に対して直接売渡し又は現物貸与ができるよう特別措置を講ずるとともに、売渡代金の延納措置を認めること。

四 福島県及び関係自治体、農協などの指導により、再三いもち病等防除のため薬剤散布を行つてきたところであるが、長雨のためその実効があがらず、防除費及び緊急排水対策に要した費用は被災農家の大きな負担となつている。農家負担の軽減を図り、今後の農業経営を保障するために特別の補助を行う等の施策を実施するとともに、以下の対策を講ずべきと思うがどうか。

1 被害水稲の刈取り、乾燥、運搬等に対する特別の助成を行うこと。
2 農機具等の資材及び肥料等の返済金の繰延べ、利子補給を行うこと。
3 加工用果実の価格保障に当たつては、加工仕向全量を対象とし、基金が不足の場合は、基金の増額を図ること。
4 葉たばこ災害の認定については、公正を期すよう日本たばこ産業(株)を指導すると同時に、収量後の長雨による腐敗等についても、これを対象とするなど万全の対策を講ずること。

五 被災地域農家の生活難が推測されるところから、地域の要望に基づく救農事業や生活・農林業関連の公共事業が切実に求められているところである。よつて、以下の対策についての政府の見解を示されたい。

1 出稼ぎを希望する農家に対しては、農業共済の評価や米の検査などを早急に行い、就労先のあつせんに特別の対策を採ること。
2 国保税、所得税及び固定資産税等の減免を図るため、関係省庁に適切な要請・指導を行うこと。
3 被災農家子弟の就学援助制度の適用及び授業料免除制度などを適用する自治体に対しても特別の助成を行うなど、特段の配慮を行うこと。

六 今回の被害の実態を踏まえ、減反面積を見直し、需給計画をゆとりあるものに再検討すべきと思うがどうか。また、米の自由化は絶対に行うべきではないと思うが、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。