質問主意書

第112回国会(常会)

答弁書


答弁書第一八号

内閣参質一一二第一八号

  昭和六十三年六月十日

内閣総理大臣 竹下 登   


       参議院議長 藤田 正明 殿

参議院議員下田京子君提出牛肉・オレンジの輸入自由化問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員下田京子君提出牛肉・オレンジの輸入自由化問題に関する質問に対する答弁書

一について

 日米間の牛肉・かんきつ交渉については、我が国牛肉・かんきつ生産の存立を守るとの基本的立場に立つて、また、我が国の置かれた国際的立場に配慮しつつ対処してきたところであり、今後ともこのような考え方にのつとり適切に対処していく考えである。

二の1及び2について

 米国が酪農品等について行つている輸入数量制限は、関税及び貿易に関する一般協定(以下「ガット」という。)上合法であるものの、我が国の輸入数量制限と実質的に同じ機能を有しており、かかる輸入数量制限は締約国間の公平性の観点から問題があると考えている。
 この点は、これまで、ガット関係の会合の場においても、日米間の協議の場においても指摘してきたところである。
 米国は、いわゆるウェーバー品目については多角的貿易交渉(ウルグァイ・ラウンド)の中で協議していく用意があると述べており、我が国としても適切に対応していく考えである。

二の3について

 国民に食料の安定供給を図つていくことは、農政の基本的役割であると考えている。
 このため、昭和六十一年十一月の農政審議会報告を踏まえ、国民の納得し得る価格での食料の安定供給に努めることを基本として、可能な限り生産性の向上を図りながら食料供給力の確保に努めているところである。
 また、米等現に国内で自給する体制が確立しているものについては、一層の生産性の向上を図ることによりその供給体制を維持してまいりたい。

三の1及び2について

 ガット上、課徴金については、第十一条等に規定があり、これらの規定に合致するものである限り、課徴金の賦課がガット違反になるものとは考えていない。
 なお、米国のウェーバーに基づく措置については、ガット上合法であるものの、その実質的な機能ぶりに着目すれば、締約国間の公平性の観点から問題があると考えている。
 この点は、これまで、ガット関係の会合の場においても、日米間の協議の場においても指摘してきたところである。
 米国は、いわゆるウェーバー品目については多角的貿易交渉(ウルグァイ・ラウンド)の中で協議していく用意があると述べており、我が国としても適切に対応していく考えである。

三の3について

 日米間の牛肉・かんきつ交渉については、国境措置問題を含め、我が国牛肉・かんきつ生産の存立を守るとの基本的立場に立つて、また、我が国の置かれた国際的立場に配慮しつつ、適切に対処していく考えである。

四の1について

 昭和六十二年七月に行われた農業に関する米国提案に対しては、いわゆるケアンズ・グループ等農産物輸出国からは支持の意見表明があつたが、農産物輸入国及びECからは、(1)補助金を全面的になくすということは非現実的(スイス)、(2)実施されれば、農業には他の分野よりも厳しくガットが適用されることになる(EC)、(3)農業改革は必要だが、政策措置の選択には各国の自主性が必要(EC)等の意見が表明された。
 我が国としては、世界的な農業改革に向けた米国の並々ならぬ決意は理解するが、十年間ですべての補助金及び輸入制限措置を撤廃するとの提案は米国が自ら認めているように「野心的」であり、これはあくまで米国としての交渉上の打ち出しの案であると考えるので、その旨を指摘している。

四の2について

 日米間の牛肉・かんきつ交渉については、我が国牛肉・かんきつ生産の存立を守るとの基本的立場に立つて、また、我が国の置かれた国際的立場に配慮しつつ、適切に対処していく考えである。

五の1について

 牛肉に関する対外交渉については、牛肉生産が我が国土地利用型農業に占める重要性等にかんがみ、その存立を守るとの基本的立場に立つて、全力を傾注しているところであり、今後の肉用牛生産の振興に当たつては、昭和六十三年二月に策定した「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」の方向に沿つて、長期的観点から国際化にも対応し得る肉用牛生産の確立を目指すこととし、経営体質の強化、生産性の向上、流通の合理化等総合的な施策を講ずることとしている。

五の2について

 御指摘のトマト加工品等の八品目についてガットに適合する措置に移行するに当たつては、我が国農業への不測の悪影響を回避するため、所要かつ適切な国内措置及び国境措置を確保するよう努めてまいりたい。

五の3について

 日米間の農産物貿易問題については、国際的な経済関係、多様な消費者ニーズへの対応といつた観点を踏まえ、我が国農業の健全な発展との調和を図りつつ、多角的貿易交渉(ウルグァイ・ラウンド)との関連を十分考慮し、適切に対処していく考えである。