質問主意書

第112回国会(常会)

答弁書


答弁書第一一号

内閣参質一一二第一一号

  昭和六十三年五月十三日

内閣総理大臣 竹下 登   


       参議院議長 藤田 正明 殿

参議院議員木本平八郎君提出対米交渉における日本政府の姿勢に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員木本平八郎君提出対米交渉における日本政府の姿勢に関する質問に対する答弁書

一の1について

 御指摘の交渉については、国際的な経済関係、多様な消費者ニーズへの対応といつた観点を踏まえ、我が国農業の健全な発展との調和を図りつつ、適切に対処してきたところである。

一の2について

 日米間の大幅な対外不均衡の中にあつて、米国の我が国に対する市場開放要求には厳しいものがあるが、その背景には、我が国が国際経済社会に占める地位にふさわしい責任と役割を十分に果たしていないのではないかとの不満もあると思料される。
 我が国は、我が国経済にふさわしい国際的責務を果たすべく、従来より、内需拡大、輸入拡大、国際社会への貢献、市場アクセスの改善等に積極的に取り組んできており、今後ともこうした努力を継続する所存である。

二について

 我が国政府は、対外的に約束した内容は誠実に遵守してきている。
 他方、米側の一部には、日米間で約束された手続等によつて直ちに具体的成果があらわれることを期待する傾向があるが、具体的成果は、商業活動とあいまつてあらわれるものであり、必ずしも直ちにあらわれるものではなく、米国に対しても、米国企業の競争力強化等米側努力が必要である旨繰り返し指摘しているところである。

三について

 日米間の大幅な対外不均衡を背景に米国内では厳しい対日批判が行われ、また議会を中心に保護主義の高まりが見られる。
 日米間の経済摩擦問題の背後には、日米間の対外不均衡を含む世界経済の不均衡が存在しており、かかる不均衡を縮小するためには、日米両国を含む主要国の経済政策協調努力が不可欠であり、我が国としては、今後ともかかる認識に基づき、我が国の政策努力を着実に実施していく考えである。
 また、相互依存関係を深める日米両国間で当然生じてくる個別の経済問題については、両国の協力と共同作業の基本理念に基づき、縮小均衡ではなく拡大均衡を目指す方向で解決を図るとの考えに立つてこれらの問題の解決に努力していく考えである。

四について

 我が国は、世界最大の農産物純輸入国である。一方、国内における農業の役割は、食料の安定供給、活力ある地域社会の維持、国土・自然環境の保全等、極めて重要であると考えている。
 日米間の農産物貿易問題については、国際的な経済関係、多様な消費者ニーズへの対応といつた観点を踏まえ、我が国農業の健全な発展との調和を図りつつ、多角的貿易交渉(ウルグァイ・ラウンド)との関連を十分考慮し、適切に対処していく考えである。

五について

 日米間には、経済的相互依存の深まりに伴い当然生ずる問題があるが、全体として見れば両国間の友好協力関係は着実に深さと広がりを増しており、各種世論調査でも、我が国国民の米国への親近感は一貫して高い水準で推移している。
 日米間の個別経済問題については、一月に竹下内閣総理大臣とレーガン大統領との間で確認したとおり、協力と共同作業の理念に基づき縮小均衡ではなく拡大均衡を目指す方向で解決を図るとの基本的姿勢の下で、日米関係の更なる発展に取り組んでいく所存である。

六について

 我が国はこれまで内需拡大、輸入拡大、国際社会への貢献、市場アクセスの改善等の努力を払う一方、米側に対しては、財政赤字削減、競争力強化、保護主義防遏等の努力を求めてきている。
 半導体問題については、我が国はこれまで日米半導体取極を誠実に履行してきており、米側措置には何ら正当な理由がなく、また現実に我が国における外国系半導体の売上げも増加を見ているところ、従来から米国政府に対し対日一方的措置の撤回を申し入れてきたところであるが、引き続きその早期全面撤回を強く求めていく考えである。
 米国議会で採択された包括貿易法案中の東芝等外国企業制裁条項は、我が国のこれまでの努力を考慮しないものであり、またココム参加国の協力を阻害するものであると考える。我が国はかかる問題ある条項を含んだ包括貿易法案が成立することのないよう米側に対し働きかけを行つてきたところであるが、今後とも最終的にかかる条項が成立することのないよう米側に対し働きかけを行つていく考えである。