質問主意書

第112回国会(常会)

答弁書


答弁書第八号

内閣参質一一二第八号

  昭和六十三年四月八日

内閣総理大臣 竹下 登   


       参議院議長 藤田 正明 殿

参議院議員木本平八郎君提出法人の含み資産の公表に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員木本平八郎君提出法人の含み資産の公表に関する質問に対する答弁書

一から四までについて

1 企業内容の開示について、合理的な投資判断に役立つ正確な情報を提供することにより投資者の保護に資することを目的とする観点からは証券取引法において有価証券報告書等による開示制度が設けられており、この有価証券報告書等に記載される財務諸表は企業会計原則において基本原理とされている取得原価主義に基づいて作成すべきこととされている。この取得原価主義の考え方は、公正妥当な会計慣行として証券取引法のみならず商法、税法においても広く受け入れられており、また、先進諸外国においても企業会計上の基本原理として採用されているところである。
 御指摘のように時価評価額の開示を義務付けるためには、この取得原価主義の考え方や時価に関する情報開示の有用性、その技法について十分な検討が行われるとともに、この問題に対する社会的合意が確立されなければならないと考える。ちなみに、昭和五十五年の物価変動財務情報の開示についての企業会計審議会答申においても、同様の指摘にとどまつている。
2 資産を時価により評価し開示することについては、1で述べたような問題があるほか、御指摘のように相続税等における評価方式を準用することが投資判断上有用性のあるものかどうかという問題もあるので、現時点において、たとい注記であつても時価評価額の開示を義務付けることは適当でないと考える。
 なお、有価証券報告書等の中で、保有株式については銘柄別に所有数を、また、事業用の保有土地については事業所別に面績及び所在地を記載することを義務付けており、投資者の投資判断上必要な情報ができるだけ確保されるような措置を講じているところである。
3 御質問の三は仮に時価評価額を注記することとする場合の設問であるが、その場合には資産内容の異動や時価の変動に伴い、事業年度により時価評価額が異なることとなるのは当然であろう。ただし、2で述べたとおり、たとい注記であつても時価評価額の開示を義務付けることは適当でないと考えている。