第112回国会(常会)
答弁書第五号
内閣参質一一二第五号 昭和六十三年三月十一日 内閣総理大臣 竹下 登
参議院議員村沢牧君提出農産物自由化問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。 参議院議員村沢牧君提出農産物自由化問題に関する質問に対する答弁書 一の1及び3について 昭和六十三年二月に開催されたガット理事会においては、本件パネル報告書について他の締約国から各種の意見の表明はあつたが、いずれもパネル報告書の採択に賛成するあるいは反対はしないというものであり、我が国としては、関税及び貿易に関する一般協定(以下「ガット」という。)の締約国としてその紛争処理手続を尊重するという立場に立ちつつ、総合的な観点から我が国の利益を確保していく上でのぎりぎりの選択として、本件パネル報告書の一括採択に応じたところである。 一の2について 我が国としては、主要国に対し、我が国の立場につき理解を得るよう様々な場で働きかけを行つてきたところである。 一の4について 御質問の乳製品の範囲は、昭和六十二年通商産業省告示第五百六十七号による改正前の昭和四十一年通商産業省告示第百七十号(輸入割当てを受けるべき貨物の品目、輸入についての許可を受けるべき貨物の原産地または船積地域その他貨物の輸入について必要な事項の公表を行なう件)第一号の表第〇四・〇二号に掲げるミルク及びクリーム、同表第一七・〇二号の三の(二)に掲げる乳糖並びに同表第二一・〇七号の二に掲げるもののうちのアイスクリームミックス及び育児用調製粉乳その他のミルクを主成分とする調製食料品である。 一の5について 本件パネル報告書については、一 の1及び3についてにおいて述べたとおり、ぶどう糖に関する部分も含め、ぎりぎりの選択としてその一括採択に応じたところである。なお、ぶどう糖、水あめ、異性化糖等については、ガットに適合する輸入制度に移行するに当たり、所要の措置を検討してまいりたい。 一の6について 現在、輸入割当制度の対象としている牛肉調製品は、加熱調理、味付け等の処理を施した牛の肉若しくはくず肉又はこれらを主成分とする調製食料品(ソーセージその他これに類する物品(牛の肉又はくず肉から製造したものに限る。)及びこれらの物品をもととした調製食料品を除く。)である。
二の1について 前記のガット理事会において、我が国は、乳製品及びでん粉並びに国家貿易に関する同報告書の解釈には異議があり、また、乳製品及びでん粉については勧告を実施することは極めて難しいとの立場を明確にした上で、その採択に反対はしない旨表明したところである。
二の2について 米国は我が国に対し農産物十二品目について輸入自由化を求めてきたが、米国が酪農品等について行つている輸入数量制限は、ガット上合法であるものの、我が国の輸入数量制限と実質的に同じ機能を有しており、かかる輸入数量制限は公平性の観点から問題があると考えている。
三の1について 乳製品及びでん粉については、輸入数量制限の撤廃は困難である。
三の2から5までについて ガット上正当化されないとされた十品目のうち乳製品及びでん粉を除く品目(以下「八品目」という。)についてガットに適合する措置に移行するに当たつては、我が国農業への不測の悪影響を回避するため、移行に妥当な期間の確保を図るとともに、所要かつ適切な国内措置、国境措置を確保してまいりたい。 三の6について 八品目の輸入自由化をどのように実施するかについては、今後、ガットの精神を尊重しつつ、国内農業への影響、国際的な経済関係等に十分配慮して検討を進めていくこととしている。 四について 政府としては、国会で行われた決議についてはその趣旨を十分尊重すべきものと考えており、いわゆる農産物の市場開放問題については、従来から国会における決議の趣旨も十分に体して対処してきたところであり、今後ともこの方針で対処する考えである。 五の1について 牛肉については、その生産が我が国の土地利用型農業に占める重要性等にかんがみ、合理的な国内生産を推進しつつ、国際化に対応した適切な輸入を行つているところである。
五の2について 今後の日米協議に当たつては、牛肉の輸入については、日米両国ともにそれぞれの事情を背景とした制度を設けていることを含め、我が国の牛肉をめぐる実情等を十分説明し、円満な解決が図られるよう最善の努力をしてまいりたい。 五の3について オレンジについては、我が国かんきつ農業の重要性にかんがみ、国内の需給事情を勘案して、適切な輸入に努めているところである。
六について 果樹農業振興特別措置法(昭和三十六年法律第十五号)第五条は、外国産の果実等の輸入によつて国内産の特定果実等の価格の著しい低落等の問題が生じている場合であつて、国内の需給調整努力等によつては事態を克服することが困難と認められるときは、相当と認められる措置を講ずるものとする旨定めたものであり、同条の運用については、その趣旨に沿つて適切に行うことが必要であると考える。
七について 国民の主食であり、かつ、我が国農業の基幹作物である米については、昭和六十一年十一月の農政審議会報告を尊重し、生産性の向上と構造改善を図りつつ、国会における米の需給安定に関する決議等の趣旨を体し、自給するとの基本的な方針で対処していく考えである。 八の1について 国内外からの輸入手続の簡素化、迅速化等の要請にこたえるため、アクション・プログラム等に基づき様々な措置を講じているところであるが、これらの措置の実施に当たつては、食品の安全性の確保に支障が生じることがないよう十分配慮しているところである。
八の2について 外国における農薬の使用については、その具体的な状況は把握していないが、各国においてそれぞれの法制度によりその使用方法等を規制しており、これらの制度により安全性の確保が図られているものと理解している。 八の3について いわゆるポストハーベストという形態の使用方法は、国際的にみて、農薬の使用方法の一つであると承知している。農薬については、食品衛生法(昭和二十二年法律第二百三十三号)に基づき、残留基準の整備に努めてまいりたい。
八の4について 八の1についてにおいて述べたように、輸入食品を含め食品の安全性の確保は極めて重要と認識しており、今後とも最大限の努力をしてまいりたい。
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