質問主意書

第112回国会(常会)

答弁書


答弁書第一号

内閣参質一一二第一号

  昭和六十三年一月二十九日

内閣総理大臣 竹下 登   


       参議院議長 藤田 正明 殿

参議院議員野田哲君提出竹下総理の一連の神社参拝に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員野田哲君提出竹下総理の一連の神社参拝に関する質問に対する答弁書

一について

 竹下内閣総理大臣は、昭和六十三年一月一日に北沢八幡神社へ、同月四日に伊勢神宮へ、同月五日に明治神宮及び日枝神社へ参拝している。

二の1、2及び3について

(一) 北沢八幡神社、明治神宮及び日枝神社について

(1) 明治神宮については、国務大臣粕谷茂が同行している。北沢八幡神社及び日枝神社については、国務大臣は同行していない。
(2) 北沢八幡神社については内閣総理大臣秘書官上野治男が、明治神宮については同寺田輝介が、日枝神社については同波多野誠が、それぞれ連絡等の用務のため同行している。また、内閣総理大臣及び国務大臣粕谷茂の警護のため警察官が同行している。
(3) 内閣総理大臣は、警備上の都合、緊急時の連絡の必要等から公用車を使用している。また、国務大臣粕谷茂は、自宅から明治神宮までは自家用車を、明治神宮からは公用車を使用している。
(4) 内閣総理大臣秘書官は、在勤地における通常の職務として同行したものであり、特に費用は支出していない。また、警察関係者の費用は、法令の規定に従い国及び東京都が支弁している。

(二) 伊勢神宮について

(1) 同行した国務大臣の氏名は、林田悠紀夫、藤本孝雄、佐藤隆、田村元、石原慎太郎、中山正暉、中村太郎、越智伊平、梶山静六、高鳥修、中尾栄一、伊藤宗一郎及び堀内俊夫である。
(2)内閣総理大臣秘書官波多野誠、同上野治男、内閣総理大臣秘書官事務取扱小川是、同渡辺修、法務大臣秘書官事務取扱池上政幸、厚生大臣秘書官事務取扱木村政之、農林水産大臣秘書官事務取扱田原文夫、通商産業大臣秘書官牧野尚、運輸大臣秘書官事務取扱金沢悟、郵政大臣秘書官事務取扱森清、労働大臣秘書官事務取扱田口一信、建設大臣秘書官事務取扱野見山恵弘、自治大臣秘書官事務取扱片山善博、総務庁長官秘書官事務取扱藤井昭夫、経済企画庁長官秘書官事務取扱滑川雅士、科学技術庁長官秘書官菅原公、環境庁長官秘書官高村光威、内閣広報官宮脇磊介、内閣事務官鈴木忠孝、同米持正吉、同浅田光、同羽深成樹、同山田哲範及び同五十嵐元一が、連絡、記者会見等の用務等のため同行しており、また、内閣総理大臣及び各国務大臣の警護のため警察官が同行している。このうち、通商産業大臣秘書官、科学技術庁長官秘書官及び環境庁長官秘書官については、国費の支出はない。また、農林水産大臣官房長甕滋が、私人の立場で同行している。
(3) 内閣総理大臣は、往復とも、東京駅と名古屋駅との間は東海道新幹線を、名古屋駅と宇治山田駅との間は近鉄名古屋・山田線を利用し、その費用については国費の支出はない。建設大臣は名古屋駅で、通商産業大臣及び環境庁長官は宇治山田駅で、それぞれ内閣総理大臣と合流し、以後東京駅まで同行し、また、厚生大臣及び科学技術庁長官は東京駅から帰路宇治山田駅まで同行し、その他の国務大臣は往復とも内閣総理大臣と同行しており、その費用についてはいずれも国費の支出はない。なお、宇治山田駅と伊勢神宮との間は、警備上の都合、緊急時の連絡の必要等から、内閣総理大臣は公用車を、各国務大臣は国費で借り上げたバスを使用している。
(4) 警察関係者の費用は、法令の規定に従い国及び関係都県が支弁している。

二の4、5及び6について

 内閣総理大臣の各神社への参拝は私的なものであり、参拝の目的、拝礼の形式等については、回答を差し控えたい。なお、参拝した際に公費は支出していない。

三について

 公式参拝とは公務員が公的な資格で参拝することを指し、私人の立場で参拝することは私的参拝であると考えている。国務大臣の神社等への参拝に係る公私の区別の基準については、昭和五十三年十月十七日の政府統一見解の考え方のとおりである。

四及び七について

 大日本帝国憲法においては、安寧秩序を妨げず臣民たるの義務に背かない限りにおいて信教の自由を保障していたが、現行憲法は、信教の自由を実質的なものとするため、第二十条第一項前段及び第二項において信教の自由を保障した上、国その他の公の機関が宗教に介入し、又は関与することを排除する見地からいわゆる政教分離の原則に基づく規定として同条第一項後段及び第三項並びに第八十九条の規定を設けたものであり、現行憲法のこれらの規定を尊重すべきことは当然であると考える。

五について

 ある特定の行為が憲法第二十条又は第八十九条の規定に違反するかどうかは個別具体的に判断されるものであるが、一般的にいえば、例えば、国が、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを国民に対して強制したり、公の財産を宗教団体の使用、便益又は維持のため支出し又はその利用に供したりすることは、憲法のこれらの規定に違反する。

六について

 公式参拝とは三についてにおいて述べたとおりであり、私人の立場での参拝は、それが繰り返されたとしても、公式参拝となるものではない。なお、伊勢神宮への参拝は、昭和三十年に鳩山内閣総理大臣が行て以来、昭和三十六年から昭和三十九年まで、昭和四十一年及び昭和四十九年を除き、毎年、当時の内閣総理大臣が行つているところであるが、これらはいずれも私人の立場で行われたものである。