第112回国会(常会)
質問第一七号
首都圏中央連絡道路(一般国道二十号~埼玉県境間)建設事業の将来交通量に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。 昭和六十三年五月二十四日 上田 耕一郎
内藤 功
首都圏中央連絡道路(一般国道二十号~埼玉県境間)建設事業の将来交通量に関する質問主意書 首都圏中央連絡道路(一般国道二十号~埼玉県境間)建設事業は、首都圏に残された貴重な自然の宝庫である高尾山の中腹にトンネルを掘り、裏高尾の狭い谷間に巨大なジャンクションを建設するなどのため、自然環境、生活環境に重大な悪影響を与える危険が大きく、学者、地域住民を始め、多くの国民が強く反対している。現在、都市計画決定のために環境影響評価の手続きが進められており、環境影響評価書案、見解書はいずれも「影響は小さい」としているが、これらの調査が極めてずさんなものであることは度々指摘されている。特に、交通量予測はほとんどの評価項目の前提条件をなすものであり、それが不正確であれば評価が根本的に成り立たないことは明白である。環境影響評価書案、見解書はいずれも形式的には東京都が作成したものではあるが、実態的には事業者である建設省関東地方建設局がその作成に当たつているので、以下質問する。 一 見解書の資料編によれば、将来交通量の推計は、「社会経済指標を基に推計された発生集中交通量と現在OD表から分布交通量を求め、設定された目標年次の道路網により、配分計算を行います。」と述べ、いわゆる四段階推定法から交通手段の分担の推定段階を除いた手法を採用している。さらに見解書は、「将来交通量の予測の際、基礎となる社会経済指標については、道路交通現象を最もよく表現する人口、自動車保有台数等を選択し、推計に用いています。」と述べている。
二 見解書では、「社会経済指標は、将来における産業経済の発展、地域社会の開発、人口配置計画等が反映された国並びに都県の長期計画等を参考に作成したものです。したがつて、一般的な開発計画については、将来交通量に反映されていると考えます。」と述べている。
三 環境影響評価書架は概ね昭和五十七年時点のデータをもとに作成されたものと承知しているが、それ以降「八王子市基本計画」(昭和五十九年六月)、「青梅市総合長期計画」(昭和六十一年二月)、「秋川市菅生インダストリアルパーク構想」(昭和五十九年八月)、「羽村町長期総合計画」(昭和六十一年三月)、「日の出町長期総合計画・後期基本計画」(昭和六十年四月)が策定されている。
四 見解書は、人口について、「将来(昭和七十五年)約一二、八〇〇万人」としている。しかし、厚生省人口問題研究所が昭和六十年十月一日の国勢調査の全数集計結果を基準人口として推計した「日本の将来推計人口」によれば、昭和七十五年の人口は約一三、一一九万人となつており、見解書の数値より約二・五%上回つている。
五 見解書は、自動車保有台数について「将来(昭和七十五年)約五、八〇〇万台」としている。しかし、建設省が作成した第十次道路整備五ケ年計画(案)参考資料によれば、昭和七十五年度の自動車保有台数(被けん引車、二輪車を除く)は六一、〇〇〇千台となつており、これは見解書の数値より約五・二%上回つている。
六 前述の「日本の将来推計人口」によれば、昭和八十五年の推計人口は約一三、五八二万人であり、また第十次道路整備五ケ年計画参考資料によれば、昭和八十五年度央の自動車保有台数の予測は約六八、〇〇〇千台となつている。見解書の昭和七十五年の予測数値よりそれぞれ約六・一 %、約一七・二%上回つている。
七 環境影響評価書案は昭和七十五年以降の将来交通量については推計値を示さないまま、陸上植物の評価において、「植物と生育環境との相互関係の変化は、工事の施工中及び工事の完了後概ね一〇年の時点において著しいものではなく、計画路線周辺の植物相及び植物群落に大幅な退行的変化は生じない」と断定し、陸上動物についてもほぼ同様の評価をしている。
右質問する。 |