第112回国会(常会)
質問第一〇号
地下鉄の防災・安全対策に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。 昭和六十三年三月二十六日 内藤 功
地下鉄の防災・安全対策に関する質問主意書 昨年十一月十八日ロンドンの地下鉄で発生した火災は、三十二人の死亡者、数百人の負傷者を出す大惨事となり、地下鉄火災の恐ろしさをまざまざと示した。この事故は、地下鉄網が発達しているわが国の東京をはじめとする大都市の地下鉄事業や地下街の安全対策に多くの教訓と課題を与えている。本年一月より営団地下鉄が終日禁煙にしたことは一定の改善であり、乗客にも喜ばれている。しかしながら、依然として地下鉄の火災予防は万全とはいえない。例えば、一九八三年八月十六日名古屋の地下鉄・栄駅の変電室からの出火により、煙に巻かれた消防隊員二名が死亡する事故が発生している。このように地下の火災は油、塗料、配線被覆、燃えなくてもくすぶると有毒なガスや煙を発生し、たちまち大惨事に発展するおそれがある。また、人的被害は幸いにして少ないものの、今まで軽微なものを含めると、地下街及び地下鉄の火災は多数発生している。
一 ロンドンの地下鉄火災を機会に地下鉄の防災、防火対策について総点検を実施したと思うが、その際明らかになつたさまざまな問題点と教訓、それらに対する対策を明らかにされたい。 二 昭和五十年一月三十日付けの運輸省鉄道監督局長から各陸運局長にあてた通達「地下鉄道の火災対策の基準について」によれば、「新設はもとより、既設の地下鉄も火災対策上二ヶ所以上の避難通路が必要である」としている。ところが現実には、出入口(改札口)が一ケ所しかない地下鉄駅が依然として放置されている。火災時等の避難口の確保ということからも、またホームの安全性という点からも、出入口(改札口)の増設を最優先の課題として早急に実施するよう地下鉄事業者に対し指導すべきであると考えるがどうか。 三 具体的な例をあげると、営団地下鉄銀座線の外苑前駅周辺は、ここ数年の間に『間ビル』『伊藤忠本社ビル』など大型オフィスビルが増えている。その結果、乗降客も営団地下鉄の資料によれば、一九八〇年の一日あたり五万二千七百五人から一九八六年の六万六千九百五人へと大幅に増えている。ところが、ホームは狭く、出入口は一カ所しかないため、朝夕のラッシュ時の混雑はすさまじいものがある。しかも近隣には神宮球場、国立競技場、秩父宮ラグビー場があり、競技があるときには一層混雑を増しており、ホーム転落事故の危険性を絶えず内包している。また、火災発生時には大惨事を招くおそれ大である。多くの利用者が出入口(改札口)の増設、ホーム拡張の署名運動を行つているのも当然である。
四 首都東京の中心部を走る銀座線、丸ノ内線は終日乗降客の多い路線である。ところが、これら両線における各駅の排煙設備及びスプリンクラーの設置状況は、運輸省の調査によつても、きわめて不十分であることが明らかになつている。例えば排煙設備の場合、銀座線で十七駅中九駅、丸ノ内線では二十四駅中十六駅が未設置である。
右質問する。 |