質問主意書

第112回国会(常会)

質問主意書


質問第八号

法人の含み資産の公表に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十三年三月十五日

木本 平八郎   


       参議院議長 藤田 正明 殿


   法人の含み資産の公表に関する質問主意書

 最近、首都圏を中心とした地価の異常な高騰により、法人の含み資産が急増している。
 一方、現行の財務諸表においては、取得原価主義に基づいて資産の額を計上しているため、帳簿価額が余りにも実態と乖離している。従つて、企業の業績及び財政状態の正確な開示を求めている「株式会社の貸借対照表、損益計算書及び附属明細書に関する規則」第二条の精神に著しく反しているものと考える。特に資金を証券市場で調達している企業については、株主保護の見地から、是正措置を講ずることが必要である。
 これは、短絡的に資産再評価により課税するということを目的とするものではなく、日本経済に重要な役割を担う上場企業について、実態に即した企業の資産内容を株主や広く国民全般に開示することが不可欠と考えるからである。
 そこで、以下の事項について質問する。

一 昭和五十五年五月に企業会計審議会より提出されたいわゆるインフレーション会計についての答申では、資産については時価評価を注記すべき旨がうたわれている。ただ、ここでは企業の自主的開示を期待するとして、必須事項とはなつていないが、少なくとも、上場企業の所有する土地及び株式については、時価評価による注記を義務づける必要があると思うが、政府の見解を示されたい。

二 土地及び株式を時価評価するに際しては何をもつて、時価とするかは議論の別れるところである。そこで、

(1) 土地については、地価公示価格、路線価等複数の評価方法が併存しており、速やかに統一評価基準を定めて、これらを一本化することが望まれるところであるが、さしあたつては、現存の相続税評価の方式を準用して資産の時価評価を行うべきと考えるがどうか。
(2) 株式についても相続税評価方式を準用してはどうか。

三 貸借対照表に時価評価を注記することは課税を目的とするものではないので、時価が連続性を欠いても支障はないと考えるがどうか。

四 現在の取得原価主義の下では、企業は含み資産が表面化しないため、含み利益の社会還元を配慮する必要はなく、逆に財テク行為、すなわち

(1) 含み資産を担保として融資を受け、土地や株式を買い増しし、地価や株価の異常な高騰に拍車をかけるおそれがあること、
(2) その借入金の金利を経費として計上することにより、利益圧縮の効果を享受できること、等の問題が指摘でき、時価評価方式の導入は、企業のかかる反社会的行為のチェックにも役立つと考えるがどうか。

  右質問する。