質問主意書

第110回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第二号

内閣参質一一〇第二号

  昭和六十二年十一月二十四日

内閣総理大臣 竹下 登   


       参議院議長 藤田 正明 殿

参議院議員黒柳明君提出FSX選定に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員黒柳明君提出FSX選定に関する質問に対する答弁書

一について

 支援戦闘機(F-1)の後継機である次期支援戦闘機(以下「FS-X」という。)の開発は、「防衛力の整備内容のうち主要な事項の取扱いについて」(昭和五十一年十一月五日国防会議・閣議決定)第四項に該当するものであることから、昭和六十二年十月二十三日の第九回安全保障会議において、FS-Xに関する措置の防衛庁における検討結果について報告を受け、審議を始めたものであり、同会議においては、いまだ決定はなされておらず、また、閣議には付議されていない。

二について

 防衛庁が、FS-Xに関する措置として今回決定したのは、日米の優れた技術を結集し、F-16を、我が国の運用構想、地理的特性等に適合するよう改造するための開発を行うことである。

三について

 FS-Xについては、昭和六十年九月策定された中期防衛力整備計画において、「支援戦闘機(F-1)の後継機に関し、別途検討の上、必要な措置を講ずる」旨決定されている。
 その後、防衛庁は、FS-Xに関する措置の具体的検討作業を開始し、「国内開発」、「現有機の転用」及び「外国機の導入」について検討を進めてきたが、この過程で米国から「共同開発」の提案があつたので、それまで「国内開発」としていたものを「開発」に改めた。
 防衛庁は、この三つの選択肢について、引き続き、いわゆる栗原三原則の下で検討してきたが、昭和六十二年十月の日米防衛首脳会談における意見交換の成果を含め検討した結果、既存の戦闘機は、いずれも我が国の運用構想、地理的特性等の観点から、FS-Xとして採用することは適当でなく、我が国の運用構想、地理的特性等に適合するよう、我が国の主導の下、日米の優れた技術を結集し、F-15又はF-16を改造開発する案が、取得の確実性、費用対効果、インターオペラビリティ(相互運用性)の確保等の観点から最も適切であると判断した。
 さらに、この二つの改造開発案について検討した結果、防衛庁として、昭和六十二年十月、FS-Xに関する措置については、F-16の改造開発案が費用対効果等の観点から最も適切なものであるとの結論を得たところである。
 なお、FS-Xの機種選定は、この開発の成果を踏まえ、将来行われるものであることは言うまでもない。

四から六までについて

 本開発をどのような枠組みの下で日米間で実施するかという問題については、御指摘の点も含め、我が国の国内法、日米間の関連取極等を踏まえて、今後日米両国の政府間で協議することとしている。

七について

 防衛庁としては、開発に際して、機体については、複合材等の先進材料及び先進構造技術を適用し、また、搭載電子機器についてはアクティブ・フェーズド・アレイ・レーダー、小型軽量コンピューター等を採用するとともに、エンジンはより推力の大きいものに換装すること等を予定しているところである。

八の(1)、(2)及び(4)について

 我が国の防空については、「防衛計画の大綱」にあるとおり、十三個飛行隊の戦闘機部隊をもつてこれにあたることとし、その中で、支援戦闘機部隊三個飛行隊は、着上陸侵攻阻止及び対地支援の任務も果たし得るものとして整備してきている。
 また、我が国は、地理的に細長く、戦闘機を配備できる基地の数も限定されており、さらに、航空軍事技術の進歩等を考慮すれば、我が国防衛作戦においては、作戦地域に近い基地には要撃戦闘機を展開して防空作戦を行い、支援戦闘機は、同地域からかなり離れた基地から運用せざるを得ない。
 したがつて、FS-Xは、我が国のこのような特殊性を踏まえ、将来における技術的水準の動向等に対応して、防空、着上陸侵攻阻止及び対地支援といつた任務を遂行し得る性能のものが必要であると考えており、この要求性能の主要事項については既に公表したところであるが、その細部は秘にわたるので、公表は差し控えたい。
 なお、開発に際して期待する主要性能については、国会審議等に資するため、今後とも、可能な範囲で公表してまいりたいと考えている。
 また、検討の過程において基本的な要求性能が変更されたという事実はない。

八の(3)について

 昭和六十二年十月二十三日に開催された第九回安全保障会議においては、御指摘の要求性能の点も含めて、審議を行つたものである。

八の(5)について

 御指摘の航空機は、いずれも防衛庁の要求性能を満足するものとして採用されたものである。

九について

 F-16は、高い安全性を有し、多くの国で採用されている航空機であると承知しており、FS-Xのベースとして改造開発することについて、特に問題があるとは考えていない。

十について

 FS-Xの所要経費及び単価については、その量産化が決まつていないこと等から現段階で申し上げることは差し控えたいが、防衛庁の検討においては、開発経費は、一定の前提の下に、昭和六十年度価格で約千六百五十億円と見積もつている。