質問主意書

第109回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一〇号

成田・羽田両空港へのアクセス整備に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十二年九月三日

木本 平八郎   


       参議院議長 藤田 正明 殿


   成田・羽田両空港へのアクセス整備に関する質問主意書

 新東京国際空港(以下「成田空港」という。)は、昭和五十三年に開港してから九年を経過し、昨年度は航空機の発着回数八万五千回、航空旅客数千二百三十四万人に達するなど順調に推移しているが、何分にも東京より距離が長く、かつ、交通機関も空港への直接乗り入れがバスに限定されており、一般の利用者から見ると極めて不便であり、このことは訪日外国人にも不評の原因ともなつている。
 一方、東京国際空港(以下「羽田空港」という。)においても、首都高速道路の慢性的な渋滞などが生じている。よつて、東京都心等からの旅客は、モノレール利用が可能であるためまだ救われるが、横浜方面からの利用客は極めて不便を強いられている。
 ちなみに、成田空港においては京成電鉄、羽田空港においては京浜急行電鉄がそれぞれ空港直前まで列車を運行しているが、成田空港の場合は、京成電鉄を利用する旅客が、成田空港駅で一度降り、チェックを受けてからまたバスに乗り換える等の不便を被つている。しかもこの状態は、同空港の開港以来半ば慢性的に継続し、今後の改善の見通しも定かではないといえる。
 このため、一市民の素朴な疑問は「なぜ両空港においては、私鉄による空港までの直接乗り入れが実現できないのか」という点である。
 以下、政府の見解を問う。

一 成田空港について

(一) 北総開発鉄道による都心への乗り入れ建設工事の予定時期及び東京近郊における同鉄道建設工事に係る用地買収のめどはどうか。
(二) 空港から都心等へのリムジンバスの運賃が高いという批判がある。世界における国際空港のアクセスと比較して成田空港から都心等へのリムジンバスの運賃は、どのような旅客輸送需要を想定して設定されたのか。その積算根拠を示されたい。
(三) 政府の説明によると、成田空港への京成電鉄の乗り入れは、同電鉄の独自の意思決定によるものであり、「空港ターミナル乗り入れの地下トンネル建設工事費と利用客数との対比において採算性確保ができないため」とされているが、国民の一般常識としては「現状の乗り継ぎ方式の方が空港利用者にとつてより一層非効率」と考えられる。京成電鉄側は、「技術的に空港ターミナル乗り入れは可能」と公表しているが、同電鉄のターミナル乗り入れを阻害している真の理由は何か。
(四) 成田空港への利用者の利便を確保するためには、京成電鉄のターミナル乗り入れを実現させるとともに、同電鉄の押上駅から都営地下鉄宝町駅を経由し、JR東京駅までのアクセス完成が極めて望ましいと考えるが、このアクセス構想に対する見解はどうか。
(五) 成田空港の地下部分には既に旧国鉄成田新幹線の駅舎が完成しており、現在は未使用の状態となつている。このため、当該新幹線駅舎の建設費回収等を図るためにも京成電鉄に払い下げるなど有効利用を考慮する必要がないのか伺いたい。
(六) さらに、後述する京成電鉄・都営地下鉄と京浜急行電鉄とを連絡して、成田空港から羽田空港への直通連絡電車の運行が可能となれば、国際・国内航空便の乗り継ぎ旅客にとつて至便と考えるが、空港間のアクセスは現在のバス連絡で十分と考えるのか、あるいはバス以外の交通機関による連絡方法が考えられているのか伺いたい。

二 羽田空港について

(一) 京浜急行電鉄は、現在の羽田空港駅からターミナルに向かつて地下トンネルによりアクセス建設中とのことであるが、当該路線はターミナルに至らずモノレールに羽田口駅(仮称)を設置し、そこで乗換えが予定されるとのことである。しかし、この方法によると一般利用客は、重いトランクを抱えて乗り換えるとともに、かつ別料金負担をも免れず「どうしてかかる不利益を被るのか」理解に苦しむところである。この点をどのように考えるのか伺いたい。
(二) 同様に、横浜方面からの空港の一般利用客は、京浜急行電鉄蒲田駅、モノレール羽田口駅と二回乗換えとなり、あまりメリットを感じないがどのように考えているのか伺いたい。
(三) 一般利用者にとつては、京浜急行電鉄が直接空港ターミナルに乗り入れて、以後必要に応じモノレールと連絡方式とすることが望ましいと考えるが、このような方法を選択できない理由を伺いたい。
(四) 現在、羽田沖合展開工事が進展しているが、将来、京浜急行電鉄空港線を拡張工事後のターミナルまで延長し乗り入れる計画とのことである。また、このため、既にモノレールは事業免許を取得しているとのことであるが、京浜急行電鉄に対しても同様の免許を付与することにより競争促進を図るべきであると考えるがどうか。

三 経済の効率化は競争状態を創出することにより達成できると思われる。このため、成田空港についてはリムジンバスと空港ターミナル乗り入れ後の京成電鉄、羽田空港についてはモノレールと京浜急行電鉄との競争関係を創出することが空港利用者へのサービス、運賃料金の適正化などの向上に資すると考えるがどうか。

四 今後の経済、社会、政治の対応は、消費者、市民の利便、利益優先を第一義に考えるべきであり、このような観点に立てば、成田・羽田両空港のアクセス整備は自由競争に任せるのが至当と考えるがどうか。

  右質問する。