質問主意書

第108回国会(常会)

答弁書


答弁書第一五号

内閣参質一〇八第一五号

  昭和六十二年四月二十四日

内閣総理大臣 中曽根 康弘   


       参議院議長 藤田 正明 殿

参議院議員木本平八郎君提出日本がさらされている軍事脅威に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員木本平八郎君提出日本がさらされている軍事脅威に関する再質問に対する答弁書

一について

 我が国は、現在の国際社会においては、単独で国の安全を確保することは困難であると考えており、自由と民主主義という基本的価値観を共有する米国との安全保障体制を基調として外部からの侵略に対処することとしている。
 したがつて、政府としては、我が国を防衛する条約上の義務を有している同盟国である米国の軍事力は、我が国自らの防衛力とあいまつて我が国に対する侵略を未然に防止する力であると考えている。

二について

 我が国に対する侵略の態様は様々であり、あらかじめ一概に述べることは困難であるが、政府の防衛力の整備、維持及び運用に関する現在の考え方は、「防衛計画の大綱」(昭和五十一年十月二十九日閣議決定。以下「大綱」という。)に示しているとおりである。
 この「大綱」は、その策定当時の国際情勢の基本的枠組みを前提として、我が国が、平時において十分な警戒態勢をとり得るとともに限定的かつ小規模な侵略までの事態に有効に対処し得る防衛力を保有し、かつ、米国との安全保障体制を堅持することによつて、我が国に対するあらゆる侵略を未然に防止することとしている。
 また、「大綱」は、情勢に重要な変化が生じ、新たな防衛力の態勢が必要とされるに至つたときには円滑にこれに移行し得るよう配意しておくことも定めている。
 なお、右に述べた「限定的かつ小規模な侵略」の規模、内容等が諸外国の軍備の動向、技術的水準の動向等により変動する面があることは、かねてから述べているとおりである。

三及び六の(1)ついて

(1) 政府は、防衛力整備に当たつては、従来から述べているとおり、「大綱」に定める我が国が平時から保有しておくべき防衛力の水準の早期達成を図ることを基本方針としている。このため、一昨年九月には、この水準の達成を図ることを目標とする中期防衛力整備計画を策定し、現在、その着実な実施に努めているところであるが、これは、防衛力の整備に当たつては、長期的視野に立つて継続的かつ計画的な努力を行うことが重要であると考えていることによるものである。
(2) 昭和六十二年度予算の編成に当たつては、中期防衛力整備計画の第二年度目として、主要な正面装備について同計画を平準的に実施するために必要な数量を確保するとともに、正面と後方の均衡のとれた質の高い防衛力を整備するため、所要の経費を計上することとしたものである。
(3) かかる観点から、正面装備及び後方分野の各種施策につき計上すべき事業を精査し、厳しい財政事情を勘案して引き続き経費の抑制を図りつつ、円高、油価格の低下等も踏まえ、全体規模の圧縮に努めたところであり、こうしたぎりぎりの調整の結果、昭和六十二年度防衛関係費三兆五千百七十四億円が決定されたもので、その伸び率(五・二パーセント)は、昭和三十五年度以来の低い伸びとなつている。

四について

 我が国の防衛に関する事務は、もとより国会のコントロールの下に行われるべきものであると考えている。御指摘の「国家の安全と利益に支障が生じない限り」との記述は、国会における審議に際しての説明及び資料の提出に関して述べたものであつて、国家の安全と利益に係る立法府の関与について御指摘のような解釈に立つているものではないことは言うまでもない。

五、六の(2)、八及び九について

(1) 政府は、先の答弁書において述べたとおり、国会による文民統制の機能が十分発揮できるよう、従来から、国会における審議等に際しては、国家の安全と利益に支障が生じない限り、防衛力整備の考え方、国際軍事情勢等を誠意をもつて説明し、必要な各種資料等もできる限り提出しているところである。
 しかしながら、国の防衛に関する事項に係る提出資料や説明の内容については、事柄の性質上おのずから限度があり、資料の提出や説明を控えざるを得ない場合があつてもやむを得ないと考えている。
 いずれにせよ、今後とも、政府の立場から許される最大限の協力をすべきものと考えている。
(2) 現在の防衛庁における秘密の取扱いにおいては、安易に秘密の指定が行われることがないように努めるとともに、秘密の指定が行われている文書等について絶えず見直しを行つているところであり、今後とも秘密とされるべきでない事項が秘匿されることのないよう努めてまいりたい。

七について

 政府としては、文民統制の原則の下に自衛隊を厳格に管理運営しているところであり、御指摘のように文民統制の実効が薄れているとは考えていない。