質問主意書

第108回国会(常会)

答弁書


答弁書第一三号

内閣参質一〇八第一三号

  昭和六十二年四月十日

内閣総理大臣 中曽根 康弘   


       参議院議長 藤田 正明 殿

参議院議員野田哲君提出公的機関における元号の使用に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員野田哲君提出公的機関における元号の使用に関する質問に対する答弁書

一について

 広島県教育委員会からの説明によれば、次のとおりである。
 広島県教育委員会においては、昭和三十七年から広島県教育委員会の公用文に関する規程で元号表示による書式を一般的に定め、事務処理を行つてきたところであるが、元号の使用は同和教育の推進を阻害するという理由から県立学校の卒業証書における年の表示について西暦を使用するよう教職員が校長に迫るという動きがあり、他方、教育委員会規則等で定められた個々の公用文の様式においては、必ずしもすべての公用文の年の表示方法が明確にはされていなかつたため、昭和六十二年一月、教育職員免許状に関する規則、広島県立高等学校学則施行細則など教育委員会規則等の一部改正を行い、個々の公用文の年の表示方法を元号表示とすることを明確にし、関係機関に対し周知を図るとともに、同年二月、県立学校長に対し、卒業証書における年の表示について前記規則等に基づく様式を遵守するよう指示文書を発した。
 しかしながら、同年三月の県立学校の卒業式において、五十四校で前記規則等に定められた様式に反する卒業証書が交付された。
 このため、広島県教育委員会は同年三月三十日付けで右五十四校の校長に対し、今後は法令等にのつとつた適正な職務の遂行に努めるよう文書訓告を行うとともに、監督責任者である教育長に対し戒告、教育部長及び高校教育課長に対し文書訓告を行つた。

二について

 各教育委員会における公用文の年の表示方法等について、政府として特段の指導を行つたことはなく、また、今回の広島県教育委員会における処分についても特段の指導は行つていない。
 なお、各教育委員会の実態について詳しくは承知していないが、他の公的機関と同様に、従来から年の表示方法には原則として元号を使用しているものと聞いており、県立学校に関する規則等で元号表示による卒業証書の様式を定めているのは、広島県を含め十二県と承知している。
 また、都道府県教育委員会から受けている報告の中では、公用文における元号表示にかかわつて処分を行つた事例はない。

三について

1 国・地方公共団体等の公的機関が元号を使用すべき憲法上の義務はない。
 また、現在、国・地方公共団体等の公的機関の内部において事務の統一的な処理のため元号の使用を義務づけるような規則等は別として、国民又は国・地方公共団体等の公的機関に対し、一般に元号の使用を強制する法令は存在しないと考える。
2 国・地方公共団体等の公的機関の事務については、従来から年の表示には原則として元号を使用することを慣行としてきている。したがつて、一般国民から公的機関への届出等においては、公務の統一的な処理のために、書類の年の表示には元号を用いるよう一般国民の協力を求めてきているが、このような考え方は今日においても変わりがない。
3及び4 公立学校の卒業証書は、当該学校の全課程を修了したことを公に証明する公文書であるが、教育委員会がその所管に属する公立学校の卒業証書に関し、年の表示方法を含めその様式を定めることについては、当該教育委員会の権限の範囲に属するものと考える。
 また、教育委員会の規則等にその所管する学校の教職員が従うべきことは当然である。