質問主意書

第108回国会(常会)

答弁書


答弁書第一〇号

内閣参質一〇八第一〇号

  昭和六十二年三月三十一日

内閣総理大臣 中曽根 康弘   


       参議院議長 藤田 正明 殿

参議院議員下田京子君提出酪農・畜産農家の経営の擁護及び畜産物の国民への安定供給に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員下田京子君提出酪農・畜産農家の経営の擁護及び畜産物の国民への安定供給に関する質問に対する答弁書

一について

(1) 乳製品等畜産物の輸入については、合理的な国内生産による供給を基本とし、関係国との友好関係に留意しつつ、国内の需給動向を踏まえて適切に行うことを基本としている。
(2) 学校給食用牛乳供給事業については、昭和六十二年度予算において、厳しい財政事情の下で、補助の基本単価の引下げを行うこととしたところであるが、供給数量に基本単価の引下げによる影響が及ばないよう、別途、良質な牛乳の学校給食への供給を推進する措置をとることにより、牛乳の消費の安定的拡大を図つてまいりたい。
 また、現在、幼稚園、老人福祉施設等における牛乳飲用の促進のための助成を行つているところであり、これらを通じて、今後とも飲用牛乳の消費拡大に努めてまいりたい。
 なお、飲用牛乳の消費拡大を図る上での効率性の観点より、妊産婦向けの牛乳に対する助成は廃止し、これに代えて保育所における牛乳飲用の促進のための助成を行つているところである。
(3) 輸入自由化品目であるナチュラルチーズについては、国内生産の推進のための条件整備を図り、酪農の安定とその多面的役割の確保に資するため、昭和六十二年度から、チーズ原料用生乳を加工原料乳生産者補給金等暫定措置法(昭和四十年法律第百十二号。以下「法」という。)に基づく生産者補給金の交付の対象から除外し、生乳生産者団体と乳業者との間における自主的な取引価格の形成を図るとともに、チーズ原料用生乳の取引の着実な定着のため、チーズ原料用生乳の生産者に対して奨励金を交付することとしたところである。
 また、昭和六十二年度の加工原料乳の限度数量については、法に基づき、生乳の生産事情、飲用牛乳及び乳製品の需給事情その他の経済事情を総合的に考慮し、畜産振興審議会の答申を踏まえ、適正に決定したところである。

二について

(1) 酪農における飼育管理労働について製造業労賃をもつて評価替えしており、飼料作物労働についてはこれと同一に取り扱つていないのは、それぞれの労働の性格の差異に着目したものである。
(2) 加工原料乳の保証価格は、法において「生産される生乳の相当部分が加工原料乳であると認められる地域における生乳の再生産を確保することを旨として」定めることとされており、保証価格の算定の基礎となつている生産費等については、主要加工原料乳地域のものを用いて算定していることから、労賃についても当該地域の労賃を用いることが妥当であると考えている。
(3) 生乳の取引については、生乳生産者団体と乳業者との間における自由で対等な交渉によつて行われることが基本であると考えている。
 また、消費者価格についても、厳しい競争の下、適正に形成されていると考えている。

三について

 いわゆる農外資本の畜産分野への進出については、企業活動の自由が認められている現行法制度下において、特定の業者のみを対象に規制することは困難であり、その進出を規制することは現実的ではないと考える。
 鶏卵の計画生産については、官民一体となつて行う現行の方式が適切と考えており、今後とも、指導の徹底を図ることにより、その実効性の確保に努めてまいりたい。

四について

 負債等による経営難の畜産農家に対しては、農家の実情に応じ、制度資金について既貸付金の償還猶予等貸付条件の緩和を図つているところであり、また、農業経営の再建整備を図ろうとする農家については、自作農維持資金の中の再建整備資金で対応できるものと考えている。