質問主意書

第108回国会(常会)

答弁書


答弁書第七号

内閣参質一〇八第七号

  昭和六十二年三月十七日

内閣総理大臣 中曽根 康弘   


       参議院議長 藤田 正明 殿

参議院議員木本平八郎君提出日本がさらされている軍事脅威に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員木本平八郎君提出日本がさらされている軍事脅威に関する質問に対する答弁書

一について

(1) 国の軍備の規模の決定の在り方は、それぞれの国の安全保障に関する考え方によるものであり、一概に述べることはできないが、一般的には脅威について考慮することは当然のことであると考えている。
(2) 我が国は、「国防の基本方針」(昭和三十二年五月二十日閣議決定)にのつとり、外交及び内政諸施策を推進するとともに、日米安全保障体制を堅持しつつ、「防衛計画の大綱」(昭和五十一年十月二十九日閣議決定。以下「大綱」という。)において、周辺諸国の軍備の動向を含む国際情勢等を勘案し、我が国が平時から保有しておくべき防衛力として限定的かつ小規模な侵略までの事態に有効に対処し得る防衛力の水準を示し、現在、「大綱」に従い、経済財政事情等を勘案し、国の他の諸施策との調和を図りつつ、防衛力の整備を進めているところである。

二について

 脅威は、侵略し得る「能力」と侵略しようとする「意図」が結びついて顕在化するものであると考えている。

三について

 侵略し得る「能力」は一般に軍事力の整備に長期間を要することから急激に変化することはなく、また、外部から測定したり、将来の推移を見積もることが可能であるのに対し、侵略しようとする「意図」は状況いかんによつて変化しやすいものであり、かつ、外部から察知しにくいものであるため、通常、防衛力整備を考える場合には、侵略意図よりも軍事能力に着目すべきであると考えている。

四について

 二についてにおいて述べたような意味での我が国に対する差し迫つた脅威が現在あるとは考えていないが、意図は国際情勢等の要因により短期間のうちに変化し得るものであり、将来の意図について予測することは困難である。

五について

 「中期防衛力整備計画」(昭和六十年九月十八日閣議決定)は、一についてにおいて述べた「大綱」に定める防衛力の水準の達成を図ることを目標として策定したものであり、脅威との関連では、三についてにおいて述べたとおり、軍事能力に着目すべきであるとの考え方に立つているものである。

六について

 「中期防衛力整備計画」は、五についてにおいて述べた考え方に従つて策定したものである。

七について

(1) 政府は、国会による文民統制の機能が十分発揮できるよう、従来から、国会における審議に際しては、国家の安全と利益に支障が生じない限り、防衛力整備の考え方、国際軍事情勢等を誠意をもつて説明し、必要な各種資料等もできる限り提出しているところであり、今後とも、政府の立場から許される最大限の協力をすべきものと考えている。
(2) また、秘密会に関しては、具体的な事案ごとに国会の判断を待つて対応すべきものと考えている。

八について

 政府は、国会による文民統制の機能が十分発揮できるよう、従来から、国会における審議に際しては、防衛力整備計画の内容、その考え方等を累次の機会に説明しているところである。

九について

(1) 昭和六十二年度予算における防衛関係費については、厳しい財政事情を勘案して引き続き経費の抑制を図りつつ、円高、油価格の低下等も踏まえ、全体規模の圧縮に努める一方、「大綱」に定める防衛力の水準の達成を図ることを目標とする「中期防衛力整備計画」の第二年度目としてその着実な実施を図ることとし、ぎりぎりの努力を行つた結果、名目GNPの動向もあつて、対GNP比が一パーセントをやや上回ることとなつたものであるが、これは、我が国の防衛のため所要の経費を計上したものであり、減額することはできない。
(2) 政府としては、今後とも、憲法及び基本的防衛政策の下に、国際情勢、経済財政事情等を勘案し、国の他の諸施策との調和を図りつつ、自主的な判断に基づき、節度ある防衛力の整備を行つていく必要があると考えている。