質問主意書

第108回国会(常会)

質問主意書


質問第一一号

違法・不公正な同和行政の是正に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十二年三月二十三日

諫山 博   


       参議院議長 藤田 正明 殿


   違法・不公正な同和行政の是正に関する質問主意書

 日本共産党は、真の部落解放の実現と、その本旨に基づく正しい同和対策事業の執行のために一貫して努力してきた。ここ十数年来は、「部落解放」に名を借りた不当な糾弾、行政私物化等の誤つた行為を是正するために、とくに奮闘してきた。その結果、このような事例は徐々に減少しつつあるが、いまなお跡をたたない。その根絶をめざし、以下質問する。

一 福岡県中間市では、昭和六十一年十一月七日、地方自治法第二百四十二条第一項に基づいて、「(同和地区に対する)市住宅新築資金等貸付業務にかかわる市長並びに当該部局長の違法・不当行為の是正及び損害補填措置請求」が提出された。監査の結果、「本人の関知しない虚偽の貸付申請とみられるもの」など、犯罪行為に等しい事実行為が数多く発見され、また、償還期限が過ぎているのに、まつたく返済されていないものが九十八件、二億九千百六十九万円、貸付総額の二十・二パーセントに及ぶことが明らかにされた。監査報告は、市長等に対してこれらの改善を厳しく勧告している。
 この貸付事業には、国庫から四分の一にあたる金額が補助され、残り四分の三は起債によつて運営されている。すでにこの事業は、貸付開始以来二十年を経過しており、国庫支出金も中間市だけで合計四億四千万円余に達している。国としても、このような不正貸付けの事実を重要視するとともに、国の責任においてその是正を強力に指導すべきだと考えるがどうか。

二 中間市において、このような重大な事態を引き起こした背景には、昭和四十六年七月二十九日当時の市長以下全幹部職員が、部落解放同盟中間支部による徹夜の「確認糾弾」のすえ、『部落解放同盟の運動方針に基づく解放運動が正しいことを、全市民に対し、市公報に声明書を発表する。』など、十一項目にわたる無理難題な覚書を交換させられたことがある。また同年九月十五日には、中間市議会議長以下、共産党議員をのぞく市議会議員全員が、『中間市が正しい部落解放行政を行わなかつたのは、議員としての行動が、直接・間接に、部落差別を助長した結果である………』などとする四項目の確認書を交わしている。
 それ以降、中間市は、これを基本方針とし、長期にわたつて部落解放同盟と全日本同和会の一部幹部による行政支配に屈伏し、同和行政は全く乱脈・不公正を極め、行政にあるまじき不正・腐敗を生むに至つている。
 昭和六十一年十二月十一日、地域改善対策協議会は、政府に対し「意見具申」を行つた。「意見具申」は、「地域改善対策の今日的課題」の第一に「行政の主体性の欠如」をあげ「国及び地方公共団体は、民間運動団体の威圧的な態度に押し切られて、不適切な行政運営を行うという傾向が一部にみられる。このような行政機関としての主体性の欠如が、公平の観点からみて一部に合理性が疑われるような施策を実施してきた背景となつてきた。」と述べ、これに対する方策として「民間運動団体と身近に接触する機会の多い地方公共団体においては、その対応に腐心している状況もみられるので、そのような地方公共団体の主体性の確立については、国は、積極的な助言、指導を行うべきである。」と指摘している。
 政府は、「意見具申」の趣旨を踏まえ、中間市が、部落解放同盟中間支部と取り交わした不法・不当な覚書・確認書を直ちに破棄するとともに、実際の執行内容についても根本的に是正するよう強く指導すべきであると考えるがどうか。

三 中間市の状態は、氷山の一角にすぎない。福岡県内では九十七市町村のうち七十二市町村において、同和地区に対する住宅新築資金等特別会計が設置されているが、多くの自治体で不正常な貸付けが行われ、元利償還が極端に滞つており、行橋市や甘木市等では貸付停止さえ生じている。こうした事態は福岡県のみにとどまらず、全国的にも同様の状況となつているのではないか。その運営の実態を明らかにされたい。
 もし、全国的にも、福岡県内と同様であるとすれば、これを今日まで放置した政府の責任は極めて重大であるといわざるをえない。政府は、これまで改善のためにどのような指導を行つてきたか、今後どのような改善措置を講ずるつもりであるか。

四 昭和六十一年三月六日の衆議院予算委員会第三分科会で、小沢和秋議員が、中間市の同和教育について質問を行つた。そのなかで、同市の小中学校で「狭山事件」で服役中の石川一雄を教材として取り上げ、彼が無実であると教え、年四回も再審要求のゼッケンをつけて登校するよう指導を行つていることを指摘した。これに対し海部文部大臣は「望ましいことでは決してございません」と答弁し、指導を約束したが、その後も同じ状況が続いている。どのように指導しているのか。

  右質問する。