質問主意書

第108回国会(常会)

質問主意書


質問第七号

日本がさらされている軍事脅威に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十二年三月二日

木本 平八郎   


       参議院議長 藤田 正明 殿


   日本がさらされている軍事脅威に関する質問主意書

 政府が提出した来年度予算案においては、防衛関係費が三兆五千百七十四億円となり、いわゆるGNP比一パーセント枠を〇・〇〇四パーセント超過する予定と説明され物議を醸している。
 先に私は、予算審議の参考のために、防衛庁に対し、わが国を取り巻く軍事情勢について種々説明を求めたが、防衛庁は各国の兵力配置等静態的な軍備状況を説明するだけで、それ以上の説明は拒否した。これでは防衛予算の是非、妥当性を審議できないので、本予算案の前提になつている諸条件を、軍事脅威の原点に戻つて政府の説明を求めるものである。

一 一国の軍備の規模は、その国が現在並びに将来さらされる軍事脅威の程度により策定され、その時の経済余力に応じて整備されるものと思うが、政府の見解はどうか。

二 さらに軍事脅威は、侵攻能力保有国の軍事能力と侵攻意図の相乗積と考えるがどうか。

三 防衛庁は私に対して、侵攻能力保有国の軍事能力、すなわち静態的な軍備の状況しか説明しないが、軍事能力だけでなく、侵攻意図の程度が問題であると思うが、この考え方に政府は異存ないか。

四 現在日本にとつての最大の侵攻能力保有国について、政府はその国の対日侵略意図をどの程度と見積つているか。また将来その意図はどの程度のものになると想定しているか。

五 政府は昭和六十五年度までの中期防衛力整備計画十八兆四千億円を策定したが、そのときの根拠になる侵攻能力保有国の軍事脅威の「意図」部分をどのように見積つたか。

六 意図部分の見積りいかんによつては、中期防衛力整備計画では間に合わない可能性があり、もし侵攻能力保有国の意図を百パーセントと想定すれば膨大にならざるを得ないと思われるが、同計画限度額十八兆四千億円はその「意図」を何パーセント程度と考えた結果であるのか。

七 防衛庁は私に対して軍事脅威の程度、特に侵攻能力保有国の「意図」部分については、国家機密なりとして説明を拒否したが、それでは防衛力整備計画の根拠がわからず、ひいては防衛予算の妥当性も判断できないことになる。国会議員といえども情報や資料を与えられずに是非、良否を判断することは不可能である。このような状態での国会議員の審議のあり方を政府はどのように考えているのか。国家機密とはいえ、国権の最高機関である国会に知らせないというのは、国会の権威をおかすことにならないか。国家機密に関しては、秘密会なりで説明する方法もあると思うが、政府の所見いかがなりや。

八 それとも政府は、防衛力整備計画は、国の最高機密に属するゆえ、国民はもとよりその代表である国会議員にも「知らしむべからず、倚らしむべし」で白紙委任を求めるつもりか。「防衛力整備計画は政府を全面的に信用して一任せよ」ということなら、そのような形で主権者(国民)の信任をとりつけるべきではないか。

九 最後にわずか〇・〇〇四パーセント超過するだけの事なら、逆に予算を〇・〇〇五バーセント削減すれば問題が一応生じないはずであり、政府はなぜかかるわずかな努力を惜しみこの時期にあえて一パーセント枠突破を主張するのか。国鉄の整理状況や、不況産業の合理化努力を考えれば、防衛庁としてわずか〇・〇〇五パーセントの削減努力ができないわけはないと考える。
 現状では国民にこれ以上の負担を強いてまで一パーセント以上に広げる根拠に乏しく、巷間では米国からの要請、あるいは政府のエモーショナルな軍備強化願望にすぎないとする見方もあるが、反論があれば理論的に根拠を説明されたい。
 以上各項の質問に対して、項目をまとめたり、一括して答弁することなく、答弁内容が重複してもよいから、各項目ごとに答弁されたい。

  右質問する。