質問主意書

第107回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一号

内閣参質一〇七第一号

  昭和六十一年十月九日

内閣総理大臣 中曽根 康弘   


       参議院議長 藤田 正明 殿

参議院議員木本平八郎君提出コメの安定供給と食糧管理制度に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員木本平八郎君提出コメの安定供給と食糧管理制度に関する質問に対する答弁書

一について

 米は、作況変動及び商品特性から投機の対象となりやすく、価格変動が避けられないものであることに加え、現在三百万トンにも及ぶ潜在需給ギャップがあることから、需給調整を行わなければ価格と数量の大幅な変動が生じ、農家経済のみならず地域経済にも大きな影響を与えるおそれが強く、また、国民が必要とする米の安定的な確保が困難となると考えている。
 したがつて、適切な生産調整のための施策の実施とあいまつて、食糧管理制度による米管理を行い、国民に対し安定的な米の供給を行つてきているところである。

二について

 国民の主食である米については、世界の米の貿易量が極めて小さいという事情等もあり、輸入に依存することなく国内で生産可能な米は自給するとの基本方針の下で、米の安定供給を果たすため、適切な在庫の保有を行つている。
 備蓄については、多ければ多いほど良いというわけではなく、保管に伴う食味低下、これに伴う処理方法と財政負担の在り方、備蓄場所の確保等を総合的に勘案して必要と認める数量について、効率的な仕組みの下に行う必要があると考えている。
 なお、米は国内で自給するとの基本方針の下に中核農家の規模拡大や高能率の生産組織の育成を通ずる稲作農業の生産性の向上を急いでいるが、我が国の農家の零細な経営規模、高い人件費等を考慮すると、米の生産費はタイや米国に比べて割高とならざるを得ない面を持つており、このことについては、従来以上に国民の理解を求めたいと考えている。

三の(1)について

 昭和五十九年度における穀物自給率は、主食用穀物にあつては六十九パーセントとなつているが、飼料穀物を含めた穀物全体の自給率は三十二パーセントとなつている。
 食料供給に不測の事態が発生した場合の対応については、短期的事態に対しては、在庫又は備蓄による対応が中心となるが、こうした非常事態が長期化した場合には、熱量効率の高い食料の増産を図るなど国内農業生産体制を転換させることにより対応していかざるを得ないものと想定している。

三の(2)について

 近年、穀物の自給率が低下したのは、高地価、高人件費の我が国においては、畜産物消費の増大に伴つて需要が増加している飼料用穀物の大部分を輸入に依存せざるを得ないこと等によるものである。
 また、国内で六十万ヘクタールに及ぶ生産調整が行われるとともに、各地で将来の担い手が育つてきている一方、国民の必要とする数量の米を必要なときに輸入し得る保障はないこと等を考えると、米の自由化は行うべきではないと考える。
 なお、国民の主食である米の安定供給を損なう米の輸入自由化を行うことにより米以外の穀物の生産を促進するとの考えは採るべきではないし、また、米の輸入自由化が直ちに米以外の穀物の生産を促進するとは考えていない。

四について

 食糧管理法(昭和十七年法律第四十号)は、昭和十七年に制定されたものであり、戦時経済諸法律の一つではあるが、それまでの間接統制を基本にした旧米穀法(大正十年法律第三十六号)等の下における米価変動や財政負担の膨大化等という経緯を踏まえて制定されたという性格をも併せ有している。
 また、食糧管理制度については、事情の変化に即応して自主流通制度の創設(昭和四十四年)、予約限度数量制度の創設(昭和四十六年)等を行うとともに、昭和五十六年には過不足両様の事態を念頭に置いた制度にするという考え方の下に食糧管理法の改正を行い、制度創設時の政府の全量直接管理という仕組みから民間流通の長所を持つ自主流通制度を包含した弾力的な管理の仕組みに変わつてきており、現在、消費者がいついかなる時でもその欲しい量を安定した価格で購入することができる制度として有効に機能しており、単に生産者保護、農家の利益擁護のためのみに機能しているとは考えていない。
 食糧管理制度については、今後とも、事情の変化に即応して必要な運営面での改善を図りつつ、米の安定的な供給を果たすべく、この制度の基本を維持してまいりたい。