質問主意書

第107回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一四号

山原(やんばる)の自然保護に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十一年十二月二日

喜屋武 眞榮   


       参議院議長 藤田 正明 殿


   山原(やんばる)の自然保護に関する質問主意書

 山原とは、沖縄本島北部の山の多い地域を指称するものであり、行政区画としては、ほぼ、国頭(くにがみ)郡に照応する地域である。
 同地域は、沖縄本島の水源地帯であり、林業やパインアップル等果樹農業の営まれているところでもある。また、同時に、国の特別天然記念物や天然記念物に指定された固有種の野生生物が数多く生息する貴重な地域であり、今や、その声価は国際的にも定まつたといえる。
 ちなみに、国連環境計画(UNEP)、国際自然保護連合(IUCN)、世界野生生物基金(WWF)がまとめた「世界環境保全戦略」では、同地域は、国際的に貴重な地域で、保護地区設定の優先性の高いところとして、日本で唯一の指定地域となつている。
 ところが、実情は国の特別天然記念物に指定されている一属一種の鳥、ノグチゲラをはじめ、天然記念物のヤンバルクイナ等、貴重な野生生物が、生息環境の悪化によつて、絶滅の危機に瀕しているのである。
 国際的にも、保護の気運が高まつている折から、わが国の文化政策、環境政策の鼎の軽重が問われているともいえる。
 よつて、以下の質問をする。

一 (1) 山原の森林面積は、全体でどれだけあるか。
  (2) 右のうち、国有林、県や市町村等の公有林及び私有林の各面積とそれぞれが全体に占める割合を示されたい。

二 同地域のダムの個数とその合計湛水面積及び河川の本数とその流域面積の合計を示されたい。

三 同地域に所在する北部訓練場等の米軍基地の総面積と、それが森林面積に占める割合を示されたい。

四 同地域の環境破壊が憂慮されているが、環境破壊の原因としては、どのようなことが考えられているか。原因と思われるものの全てについて明らかにされたい。

五 同地域における森林行政は、現在、どのような方針の下に進められているか。また、今後はどう進めるべきであるか。政府の見解を示されたい。

六 (特別)天然記念物の保護については、現在、どのような対策が採られているか。また、今後はその保護策はどうあるべきか。政府の見解を示されたい。

七 世界野生生物基金(WWF)日本委員会(大来佐武郎会長)は、ノグチゲラ等の保護について、去る十月二十日、環境庁、林野庁等に対して、(イ)繁殖が現在確認されている約三千ヘクタールを含むイタジイなどの天然林約六千ヘクタールは禁伐とする、(ロ)その外側地域約一万ヘクタールも大面積皆伐を回避し、大径木を保存する、(ハ)ノグチゲラ、イシカワガエル、リュウキュウヤマガメなどの生息地である河川を保全する、などを申し入れたと報じられている。
 当局は、これらの申入れに対して、どのように対応するのか。

八 また、同地域に、広大な基地を占有している駐留米軍に対しても、環境保全の上で、必然的に何らかの対応を要請することが必要となると思うが、どのような対応の要請を考えているか。

  右質問する。