質問主意書

第107回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一一号

コメの小売販売許可制に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十一年十一月十八日

木本 平八郎   


       参議院議長 藤田 正明 殿


   コメの小売販売許可制に関する質問主意書

一 精白米の品質について、消費者から『毎回同じ銘柄、同じ品質表示の自主流通米を同じ価格で同じ米穀販売業者から購入しても、その時どきで味が異なる』との苦情がある。これに対する米穀商の説明は、コメをブレンドしているため、毎回品質に多少のバラツキが出るのはやむをえないというものである。

(一) もしそうであるとすれば、ブレンド時に恣意的に下等米が混米されて、商品の品質悪化をきたす可能性があるが、この点について政府はどう対処しているか。
(二) 消費者がコメを購入する時に精白状態で品質(味)を鑑定する方法を開示願いたい。一説によれば、精白米では専門家でも品質鑑定ができず、炊飯して食味する以外ないとのことだが、これは事実であるか。

二 消費者が商品の品質保証を得る方法の一つに『販売業者を信用する』方法がある。

(一) コメの小売は許可制になつているので、消費者は販売業者の選択の範囲が制限され、販売者の信用によるコメの品質確保の道が狭められていると考えるがどうか。
(二) 許可制の存在は販売業者の地位を優位化し、かつカルテル的な共同行為を可能にし、コメの品質面でも業界ぐるみの操作を行う可能性があるが、政府はこの点をどのようにチェックしているのか。
(三) 国民が価格の如何にかかわらず、自分の期待する品質の商品を入手できないのは、現下のような平穏、安寧な社会情勢下においては、自由と生活権という国民の基本的な権利の侵害であり、かつ民主主義の精神にも反すると思われるが、国民にかかる犠牲を強いてまで、小売販売業者に許可制を存続させなければならない理由は何か。
(四) コメの小売販売業務が完全に自由化されれば、国民は自己の責任において、コメの購入を行うので、売買条件も相対になり、品質問題も自然解消する。コメの小売は国民の自主、自決に任せるべきではないか。
(五) コメの品質が保証されず、また購入者に品質鑑定の方法がなく、その上購入ルートまで固定されているとすれば、不良品を買わされた場合、これは不公正取引に類するのではないか。
(六) 消費者に不公正取引に近い負担を負わせてまで、小売の許可制を採用することのメリットを政府はどう考えているのか。

三 『流通は統制されるほど、供給側が有利になる』とは一大経済原則である。

(一) コメ流通の場合も、この原則が働くのは避けられないと考えるが、政府の見解はどうか。
(二) 物流が統制されれば、自由、公正な競争が阻害され、必ず悪徳商法やヤミ行為が発生しており、特にコメの場合、品質を近年ごまかして販売しているケースがままある。これは不正行為の一種とみなされると考えるが、政府の見解を示されたい。
(三) 現状ではコメの小売許可証の交付を制限しているのは既存小売業者の利益擁護とみられても仕方ないが、かかる見解を招く危険まで冒して、小売許可制を維持する理由は何か。
(四) 小売業者の許可取得に当たつては、政治家等の口ききや利権がからんでいるとの噂があり、政治に携わる者としては甚だ迷惑だが、こういう疑惑の存在につき政府の見解を示されたい。
(五) 統制を行うこと自体、為政者や官僚にとつて、支配権確立上有利であるが、この点コメの小売段階における許可制度に関して政府はどのように自戒しているのか。

四 政府は現行食糧管理制度の消費者に対する存在意義を『コメの安定供給を保障するため』と説明している。

(一) コメの安定供給上、コメの小売許可制が不可欠と、政府が考えている理由は何か。
(二) 現段階で小売許可制を廃し、コメの小売を自由化した場合、消費者はいかなる不利益を被るか。
(三) 政府はコメの小売許可制度を食糧管理制度維持の一環と説明しているが、政府は小売段階における食糧管理法の存在意義を「安定供給」以外に何を考えているか。
(四) コメの安定供給には、その生産と輸出入、そして最低限卸売段階までの管理で十分であり、現在のように経済、物流が安定しているときに、小売段階まで統制(許可)するのは過剰管理と考えるが、政府の見解を伺いたい。
(五) 非常事態にはコメの小売統制が必要としても、昭和十七年当時の措置を顧みても、即時統制化に何の不都合もなく、食糧安保を口実に現在のような平常時にまでコメの統制を存続させる理由付けは困難である。いざとなつた場合の統制実施に政府はどういう困難ないしは障害を予測しているのか。
(六) コメの小売を自由化すると、コメの価格が需給動向や競争などで不安定化し、消費者を混乱させるとすれば議論もあるが、現在日本ではほとんどの消費物資が、同様な条件下におかれているにもかかわらず、消費者にとつて何ら不都合は生じていない。
 まして政府が卸売段階までコメの数量と価格をコントロールしているのであるから、コメの小売を自由化しても小売価格にはさほど大きな乱高下は生じないと考えるがどうか。

五 最後に小売許可制を撤廃することは生産者(農業者)側に何らかの不都合を生じるかどうかお尋ねする。

  右質問する。