質問主意書

第107回国会(臨時会)

質問主意書


質問第六号

コメの安定供給と食糧管理制度に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十一年十月十七日

木本 平八郎   


       参議院議長 藤田 正明 殿


   コメの安定供給と食糧管理制度に関する再質問主意書

 九月二十六日提出のコメの安定供給と食糧管理制度に関する質問主意書に対する答弁書(内閣参質一〇七第一号)は、私の質問事項に対して答弁が的確さを欠き、又答弁漏れもあるので、以下再質問する。

一 コメの安定供給のためと称し、国際水準の十倍も高い消費者米価という犠牲を払つてまで食糧管理制度を維持する利点は何か。

二 西欧先進国では食糧の流通を統制せず、完全に自由化しているにもかかわらず、食糧の安定供給に不安を持つていないのに、日本だけが食糧管理制度を必要とする理由は何か。

三 答弁書の一について。答弁は「需給調整を行わなければ(中略)国民が必要とする米の安定的な確保が困難」としているが、需給調整のために毎年二兆円もの犠牲(消費者米価と国際米価の差)を払うのは、最も拙劣な方法であると思うが、考えを伺いたい。

四 答弁書の四について。答弁書は、食管制度は「現在、消費者がいついかなる時でもその欲しい量を安定した価格で購入することができる制度として有効に機能して」いるとしているが『安定した価格』というのが国際価格の十倍も高い価格であるなら、食糧管理制度でなくても国際市場からいついかなる時でもその欲しい量を購入できるので、食糧管理制度維持の意義付けにはならないのではないか。
 また、仮にそのいついかなる時を非常事態とするなら、平時は自由化しておき、非常事態になつてから制度移行するのが統制経済のセオリーではないのか。政府の見解を問う。

五 答弁書はコメが投機の対象となりやすいという商品特性を挙げているが、投機がコメの需給に影響を及ぼすのは、閉鎖経済の中だけであつて、流通が国際市場に開放されていれば、特に日本は外貨資金が豊富なので、国際競争で国民が必要とするコメの確保には心配ないと思うが、政府はこの方式にどういう不安を感じているのか。

六 答弁書の二について。答弁は、「世界の米の貿易量が極めて小さい」としているが、これは需要に見合つて自然調整されているからであると考えるが、どうか。仮に、日本が市場を開放すれば世界の貿易量はいくら増えると政府は予想しているか。
 また、現在でも世界のコメの供給余力は、タイ四〇〇万トン、アメリカ一九〇万トン、中国及びパキスタン各一〇〇万トンの合計八〇〇万トンあるといわれるので、供給余力としては充分であるが、どうか。

七 コメの備蓄費用は年間トン当たり二万五千円見当と考えるがどうか。仮に二万五千円として、日本の消費量一千万トンの二年分、二千万トンを備蓄するとしても、備蓄費用は一年五千億円であり、前述の国産のための犠牲二兆円の四分の一で済む。これで、コメの輸入自由化に伴う安定供給保障としては、充分と考えるがどうか。

八 答弁書は、稲作農業の生産性の向上を急いでいるとしているが、その結果は、逆に稲作田を減反し、穀物の自給率を年々低下させるという逆効果を招いている。これは答弁書でいう、「国内で生産可能な米は自給する」との基本方針が間違つているからではないか。

九 答弁書三の(1)について。答弁において、非常事態が長期化した場合には、国内農業生産体制を転換させることにより対応すると説明しているが、現在休耕し荒廃している田畑の生産力を回復するには二、三年を要し、緊急の場合の増産には間に合わないと思うがどうか。

十 仮に政府の説明のように、熱量効率の高い食料の増産が図れたとして、コメ換算何万トンの増産が可能か。またその増産量で国民の必要穀物量の何パーセントを自給できる予定か。

十一 非常事態が長期化した場合には、むしろ食糧の輸入に注力すべきだと考えるが、緊急輸入には、平常からの輸入元の確保、ソース及び輸入ルートの多角化が必要と考えるが、政府の見解はどうか。

十二 答弁書の三の(2)について。答弁書は、「米の輸入自由化が直ちに米以外の穀物の生産を促進するとは考えていない」としているが、それでは現在の食糧管理制度を続けて、どのように穀物の自給率を上げていくつもりか、明確に示されたい。

十三 仮に食糧管理制度を維持したまま自給率を上げることができたとしても、現在の輸入依存率六十八パーセントがゼロになるとは考えられず、需要量の半分以上は今後とも輸入に頼らざるを得ないと思うがどうか。

十四 答弁書はコメの安定供給について、「国民の必要とする数量の米を必要なときに輸入し得る保障はない」としているが、それと同じことが穀物輸入にも言えると考える。この不安さを政府はどう解決する考えか。
 もしこの不安定さを解決できなければ、コメの安定供給だけが確保できても国民の生活安定は達成できないと考えるがどうか。

十五 質問主意書三(2)の趣旨は、次のとおりであり、再度的確に答弁願いたい。現在はコメの生産者価格が割高なため、他穀物を生産しても引き合わないが、コメの値段が安くなれば、国内的には他の穀物生産も採算がとれるようになり、休耕地が活性化され、穀物の自給率を高めると考えるがどうか。

十六 最後に現在の食糧管理制度は、コメ生産及び農業維持のため過去の惰性で多大の犠牲(支出)を強いられる結果になつており、今ではかえつて日本農業をスポイルしている面の方が大きくなつていると考えられるので、根本的に見直す必要があると思うが、政府の見解を示されたい。
 以上十六項目の質問に対し、項目をまとめることなく一項目ずつ答弁されたい。

  右質問する。