質問主意書

第104回国会(常会)

答弁書


答弁書第二〇号

内閣参質一〇四第二〇号

  昭和六十一年四月四日

内閣総理大臣 中曽根 康弘   


       参議院議長 木村 睦男 殿

参議院議員小笠原貞子君提出日米及び日ソの漁業交渉に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員小笠原貞子君提出日米及び日ソの漁業交渉に関する質問に対する答弁書

一について

[1]から[4]まで 今回の日ソ漁業交渉の難航により影響を受けている漁業者及び水産加工業者については、当面のつなぎ融資、制度資金の償還期限延長等の措置が講じられるよう、関係地方公共団体、金融機関等に対し、その協力・指導を求めているところである。
 また、今後、出漁遅延等による経営への影響等を見極めた上で、長期・低利の資金である国際規制関連経営安定資金の発動等を検討してまいりたい。
 なお、トラック事業者については、当該事業者団体から影響緩和のための具体的要望事項が近く出されると聞いており、これを十分踏まえ、その経営安定対策を検討してまいりたい。
[5] 稚内北方海域及び根室方面海域において操業する漁船については、国際情勢の現況からその操業に重大な制約を受けており、担税力も著しく低下している状況にかんがみ、これに対して課する固定資産税を減免することが適当である旨従前から関係市町村を指導しているところである。

二について

(1) 我が国北洋漁業を取り巻く国際環境は、二百海里体制の下で沿岸国の主張が著しく強まつており、ますます厳しくなつている。かかる厳しい国際環境の下で昭和六十年十二月以来日ソ漁業委員会第二回会議が継続されているが、昭和六十一年三月十七日から再開された協議においても、見通しは極めて厳しく、楽観は許されない。
(2) 今回の日米非公式協議は、北太平洋の公海漁業に関する国際条約を改正する議定書(昭和五十四年条約第一号)に基づき任務を遂行している北太平洋漁業国際委員会においてこれまで実施されてきた科学調査の結果を踏まえつつ、北米系さけ・ますの保存について非公式に話し合つたものである。
 今後、前記委員会特別会議を開催して日米間で非公式に意見の一致を見た措置の内容を前記議定書の附属書に反映させるべく、現在、日米加三国間で調整を行つているところである。
(3) 政府としては、対日漁獲割当問題はさけ・ます問題とは別個の問題であるとの立場から、米国側に対して、我が国の対米漁業協力実績及び米国二百海里水域内における漁獲実績にかんがみ相当量の対日漁獲割当てを行うよう要求してきたところであり、今後とも要求していく所存である。
(4) 漁獲割当ての国内配分については、関係漁業者の安定的操業が公平に確保されるよう配慮しており、昭和六十一年の配分に当たつても、割当削減により中小漁業者のみが損失を被ることのないよう十分配慮する所存である。

三について

(1) 昭和六十年十二月以来行われている日ソ漁業委員会第二回会議において、我が国は、伝統的な日ソ漁業協力関係の中で交渉妥結を図ることを主張している。政府としては、我が国漁船の昭和六十一年一月六日以降の操業中断の状態が既に関係者にとつて極めて深刻な問題となつていることにかんがみ、交渉の早期妥結に向けて、今後とも最大限努力していく所存である。
(2)の(イ) ソ連側が要求する金銭の支払いについては、どのような扱いとなるかは今後の協議によるが、仮にこれを行うこととなつた場合には、関係漁業者の負担において行われることとなると考えている。
(2)の(ロ) 警察は、いかなる立場からするものであれ、「違法行為はこれを看過しない」ことを基本方針に、厳正な取締りを推進してきており、昭和六十年のソ連漁船の塩釜港寄港に関しては、右翼関係者三十六人を検挙し、その前年の小名浜港寄港に関しては、二十四人を検挙している。
 警察は、今後ともこの基本方針の下に、厳正な取締りを推進する。
(2)の(ハ) 日本漁船の違反操業については、漁業者及び乗組員に対する操業指導、水産庁監視船の派遣等の措置を講じてきており、悪質な違反を繰り返す漁船については、厳しい行政処分を行う等の措置を検討することとしている。
(3) 我が国は、適切な規模の防衛力の保有及び日米安保条約により国の安全を確保することとしているが、このことと日ソ漁業交渉とは本来全く別個の問題であり、両者を関連付けることは適当ではない。