質問主意書

第104回国会(常会)

答弁書


答弁書第一五号

内閣参質一〇四第一五号

  昭和六十一年三月十八日

内閣総理大臣 中曽根 康弘   


       参議院議長 木村 睦男 殿

参議院議員上田耕一郎君提出高速道路建設・排気ガス汚染問題と肺がん予防に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員上田耕一郎君提出高速道路建設・排気ガス汚染問題と肺がん予防に関する質問に対する答弁書

一について

(1) ディーゼル自動車の排出ガスによる生体への影響については、現在環境庁において調査研究を継続しているところである。
(2)及び(3) 自動車の排出ガスによる大気汚染と発がんの相関関係又は因果関係は、いまだ解明されておらず、それらの有無は明らかではない。
 自動車の排出ガスについては、従来から一酸化炭素、炭化水素等について規制が行われてきており、定期点検整備及び国による検査が実施されているところである。

二について

(1) 自動車の排出ガス中のベンゾ〔a〕ピレンの測定については、捕集方法等に問題が残されているものの、これまでに得られた知見によれば、御指摘のような高い水準にあるとは思われない。
(2) ベンゾ〔a〕ピレンについては、発がん性を有することが指摘されており、また、ニトロピレンについては、発がん性を有するとの指摘がなされたことがあるが、これらの物質による大気汚染が発がんの原因となつていることはいまだ確認されていない。
(3) 自動車の排出ガス低減対策を的確に推進していくため、昭和六十年十一月に中央公害対策審議会に「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について」を諮問し、検討を行つているところである。
(4) 最近十年間におけるディーゼル車の台数の推移は、乗用車、トラックのそれぞれについて、次のとおりである。

図 表

 ディーゼル車の増加抑制を税制で措置することについては、自動車関係税の性格や税の中立性という観点から、税制の在り方としては適当ではないと考える。

三について

(1) 都市高速道路王子線の都市計画の計画書中の当該路線の建設が環境に与える影響についての記述によれば、大気汚染に係る予測結果は環境保全目標を下回ることとされており、当該環境保全目標は疫学的研究等生体影響に関する科学的知見に基づいて定められた環境基準を達成することを内容とするものである。
(2) 都市高速道路王子線の構造は、地形、土地利用の状況、接続道路等関係する他の都市施設の状況、環境に与える影響等の諸要素を総合的に勘案して決定されたものである。

四について

(1) メタノールを燃料とする自動車については、関係業界において研究開発を進めているとともに、関係省庁においてもメタノール燃料の規格設定のための実験研究、メタノールトラック等の市内走行試験に対する指導等を行い、円滑な導入に向けて努力しているところである。
(2) メタノール車の実用化普及対策として、税制面では、メタノール自動車に係る自動車税については昭和六十一年度分及び昭和六十二年度分について、自動車取得税については昭和六十三年三月三十一日までの取得について、それぞれ軽減措置が講じられることとなつている。

五について

 「対がん十カ年総合戦略」は、ヒトがんの発がん遺伝子に関する研究、ウイルスによるヒト発がんの研究等を通じて、がんの本態解明を図ることを目標とした研究計画であり、その成果は、肺がん等個別のがんの予防、診断及び治療に反映されることとなると考えている。