質問主意書

第104回国会(常会)

質問主意書


質問第四四号

共同漁業権の一部放棄及び漁業補償についての漁協の権限に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十一年五月二日

久保 亘   


       参議院議長 木村 睦男 殿


   共同漁業権の一部放棄及び漁業補償についての漁協の権限に関する質問主意書

一 共同漁業権の一部放棄について

 昭和六十年五月二十五日、私が提出した質問主意書に対する答弁書(内閣参質一〇二第四一号)において、「漁業権を変更しようとするときは、漁業法上、都道府県知事の免許を受けなければならないこととされており、漁業協同組合の総会で「共同漁業権の一部放棄」が議決されたとしても、そのことにより漁業権が当然に変更されるものではない。」と述べられている。
 右答弁に関して、さらに、以下の(一)ないし(三)の質問に答えられたい。

(一) 埋立計画に対して、「共同漁業権の一部放棄」が漁協総会で議決され、当該議決に基づき漁協より「漁業権の変更免許」の申請があつた場合、都道府県知事は「漁業権の変更免許」をなすことができるか。漁業法第十三条第一項第二号に基づき、右変更免許はできないと解すべきか。
(二) 埋立計画に対して、「共同漁業権の一部放棄」が漁協総会で議決された場合、都道府県知事が、一部放棄の対象区域を漁場区域から除外した内容の新たな漁場計画を樹立し、その新規の漁場計画の下に、申請に基づき「漁業権の変更免許」をなすことは可能か。漁場計画は、漁場の総合利用と漁業生産力の維持発展を目的として樹立される(漁業法第十一条)ことから、右のような漁場計画の新規樹立は不可能と解すべきか。
(三) 前述した(一)及び(二)に対する答弁がいずれも「できない」である場合、「共同漁業権の一部放棄」は、結局、法的には実現せず、一部放棄の対象区域には、従前どおり、一定の資格を有する組合員の「漁業を営む権利」(漁業法第八条)が存在すると解してよいか。

二 漁業補償に関する漁協の権限について

 漁業補償の請求・受領に関する漁協の権限について、水産庁漁政部長通達(昭和五十一年三月十三日、五一-一〇〇二)は、「漁業補償の請求・受領は、組合の行いうる業務には含まれるが、その場合には、関係組合員からの委任行為が必要である」旨、述べている。
 右通達に関して、さらに、以下の(一)ないし(三)の質問に答えられたい。

(一) 右通達によれば、漁業補償を受ける者は関係組合員各自であり、組合はその代理人の資格においてのみ請求・受領を行えると解し得るが、そう解してよいか。
(二) 次の(1)ないし(12)のケースについて、漁業補償がなされたことになるか否か、それぞれについて、「なる」又は「ならない」の形で、明確に答えられたい。なお、(3)及び(6)の関係組合員の「不同意」並びに(4)、(7)、(10)及び(12)の関係組合員の「受領拒否」は、いずれも明示的になされるものとする。

(1) 組合が、関係組合員の委任を全く受けないで補償金を一括受領し、関係組合員全員が配分を受領した場合。
(2) 組合が、関係組合員の委任を全く受けないで補償金を一括受領し、関係組合員全員の同意を得て組合の財産とした場合。
(3) 組合が、関係組合員の委任を全く受けないで補償金を一括受領し、関係組合員全員の同意を得ることなく、全額を組合の財産とした場合。
(4) 組合が、関係組合員の委任を全く受けないで補償金を一括受領し、関係組合員の一部が配分の受領を拒んだ場合。
(5) 組合が、関係組合員全員の委任を受けた上で補償金を一括受領し、関係組合員全員の同意を得て組合の財産とした場合。
(6) 組合が、関係組合員全員の委任を受けた上で補償金を一括受領し、関係組合員全員の同意を得ることなく組合の財産とした場合。
(7) 組合が、関係組合員全員の委任を受けた上で補償金を一括受領し、関係組合員の一部が配分の受領を拒んだ場合。
(8) 組合が、委任を受けた関係組合員の分の補償金のみを受領・配分し、組合に委任を行わなかつた関係組合員は、個別に、又は組合以外の代理人を通じて補償金を受領し、結局関係組合員全員が補償金を受領した場合。
(9) 組合が、委任を受けた関係組合員の分の補償金のみを受領・配分し、組合に委任を行わなかつた関係組合員には補償金が支払われなかつた場合。
(10) 組合が、委任を受けた関係組合員の分の補償金のみを受領・配分し、組合に委任を行わなかつた関係組合員が補償金の受領を拒んだ場合。
(11) 関係組合員の一部からの委任は受けないまま、組合が補償金を一括受領し、関係組合員全員が配分を受領した場合。
(12) 関係組合員の一部からの委任は受けないまま、組合が補償金を一括受領し、委任を行わなかつた関係組合員が配分の受領を拒んだ場合。

(三) 次の(1)ないし(7)のそれぞれの場合、漁業補償は全く不要となるか。補償が全く不要となる場合には「不要」と、他方、多少とも補償の必要性が残る場合には「必要」と回答されたい。また、後者の場合には、補償を受け得る者の範囲をもあわせて示されたい。

(1) 組合長が「補償は要らない」と意思表示した場合。
(2) 漁協の理事会において「補償は要らない」と決定した場合。
(3) 補償交渉委員会において「補償は要らない」と決定した場合。
(4) 漁協総会において「補償は要らない」旨の議案を水産業協同組合法第五十条に基づき出席正組合員の三分の二以上十分の十未満の賛成で決議した場合。
(5) 関係組合員のうち少数(一割未満)の者が「補償は要らない」と意思表示した場合。
(6) 関係組合員のうち大多数(九割以上十割未満)の者が「補償は要らない」と意思表示した場合。
(7) 関係組合員全員が「補償は要らない」と意思表示した場合。

  右質問する。