質問主意書

第104回国会(常会)

質問主意書


質問第一九号

桜島噴火に伴う火山災害対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十一年三月十七日

下田 京子   

       参議院議長 木村 睦男 殿



   桜島噴火に伴う火山災害対策に関する質問主意書

 鹿児島県の桜島火山では、近年、火山灰の降灰等による周辺住民の生活と営業への影響が、一層深刻になつている。
 特に、昨年(昭和六十年一月から十二月まで)は、過去最高の四百七十四回の爆発を繰り返し、降灰量は、桜島の東桜島小学校観測地点で、一平方メートルあたり五万二千三百十三グラム、鹿児島市の気象台観測地点で、一平方メートルあたり一万五千九百八グラム(これまでの最高降灰量は、昭和五十三年の一平方メートルあたり四千五百三十七グラム)、降灰日数は、鹿児島市街地で年間二百十九日をかぞえた。
 国は、これまで桜島及び周辺地域における降灰等による被害について、「活動火山対策特別措置法」等に基づき、諸般の対策を講じてきたところであるが、近年の桜島噴火に伴う「ドカ灰」に対して、住民や自治体から「法」の見直しを含めた被害防止と救済のための特別の対策が、繰り返しもとめられていることは、すでに周知のとおりである。
 以下、桜島噴火による火山災害から住民の生命等の安全及び生活と営業の安定をはかる立場から、具体的に質問する。

一 営農対策について

 国は、活動火山対策特別措置法に基づいて、来年度を最終年に三カ年計画で、総額およそ四十九億円にのぼる第四次防災営農施設整備事業を実施している。しかし、降灰や火山ガス等による農作物等への被害は、昭和五十七年度で五十億七千万円、五十八年度で五十九億二千万円、五十九年度で五十三億円(鹿児島県調べ)と、いぜんとして甚大なものとなつている。

(一) そこで、予算措置の拡充で防災営農対策への助成をつよめるとともに、

(1) 防災営農施設整備事業のうち、鹿児島市、垂水市、桜島町、福山町、輝北町の、いわゆる被害激甚地域に限定している事業(たとえば、降灰地域土壌等矯正事業や、降灰防止降灰除去施設等整備事業のうち、硬質プラスチックハウス、トンネルハウスを導入する野菜降灰防止栽培促進など)を、被災地域全域に適用すべきと考えるがどうか。
(2) 防災営農施設整備事業の採択基準(たとえば、降灰地域土壌等矯正事業の対象面積は五ヘクタール以上)を緩和して、小規模でも対象事業にすべきと考えるがどうか。
(3) 国では、昭和五十九年度から降灰や火山ガス等に強いハウス用のビニールやフレームの開発、研究をすすめているが、ビニールやフレーム等の新たな資材の導入にあたつては、その助成を被害激甚地域に限定することなく、降灰地域全域に助成措置を講ずべきと考えるがどうか。
 また、ビニールハウスのビニール張りかえについても補助の対象とすべきと考えるがどうか。

(二) うんしゆうみかんやびわ等の果樹への被害は、連年の降灰により収穫量が減少している。このため、果樹共済では、鹿児島地区の共済組合(鹿児島市、桜島町、吉田町)で、桜島の爆発回数を基準に「期待収穫量」として修正の上、上積み算出するなど、一部で対策が講じられている。果樹共済では、こうした救済措置が、降灰地域全域で講じられるべきと考えるがどうか。
(三) 防災営農施設整備事業は、火山の爆発によつて生ずる農作物への被害を防除するために、緊要であることから実施されているものである。したがつて、これまでの国の補助率(二分の一)を維持すべきと考えるがどうか。

二 降灰除去について

 鹿児島市の場合、降灰除去用の路面清掃車や散水車の保有台数は、各々三台ずつである。国や県、民間業者の保有台数をあわせても、路面清掃車が二十四台、散水車が二十三台にすぎない。国道、県道及び市道をあわせると総延長千七百キロメートルにものぼる道路を、“降つたらすぐ除去する”には、ほど遠い状況にあるといわざるをえない。
 鹿児島市では、昨年ようやく新たに三台の路面清掃車を購入したり、七万円前後の手押し式降灰除去機を、学校用に五十九台、社会福祉施設用に十五台、歩道など生活道路用に四十台、各々配置したり、さらに町内会、商店街に対して、手押し式降灰除去機の購入に補助するなど、降灰除去体制を整えつつある。しかし、五十三万鹿児島市民をはじめ桜島周辺地域の住民にとつて、昨夏の降灰は「灰が降るのは天災だが、降つたあとは人災」であつた。そこで、国は、降灰除去を強力にすすめるために、

(一) 「河川局所管降灰除去事業に係る補助金交付要綱」の「第三、補助金の額」にある「(5) 降灰除去事業の施行に直接必要な機械器具の借上げ、購入等に必要な経費(購入についてはその取得価額がおおむね十五万円を超えるものにあつては取得価額の二分の一)」のうち、括弧内の記載を削除することによつて、補助基準を見直し、路面清掃車や散水車、手押し式降灰除去機などの増車を緊急にはかるべきと考えるがどうか。
(二) 路面清掃車や散水車など降灰除去用機械の購入については、降灰量が補助基準を超えなければ機械の発注ができないために、降灰発生後、購入までに一か月以上かかつている。これでは、降灰除去用機械を購入しても十分その機能を発揮できないことから、降灰発生期以前に購入できるよう、特別の措置を講ずべきと考えるがどうか。
(三) 「灰のまきあげ」で市民生活に著しい被害をおよぼしている路面電車の軌道の降灰除去を含めた降灰除去専用機種の改良、開発を一層推進し、おそくとも昭和六十一年度中に実用化すべきと考えるがどうか。
(四) 公共下水道、都市排水路の降灰除去については、都市災害復旧事業事務取扱方針の「第五、適用除外」の中で、「下水道及び都市排水施設の埋そくにかかるもので断面積の三割に満たないもの。ただし、三割以上のものにあつては、堆積量の七割までを排除するものとする。」と定めているが、降灰除去にあつては、こうした補助基準を見直すべきと考えるがどうか。

  右質問する。