質問主意書

第104回国会(常会)

質問主意書


質問第八号

沖縄の米軍基地に提供されている土地にかかる小作人の救済に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。

  昭和六十一年一月三十一日

喜屋武 眞榮   


       参議院議長 木村 睦男 殿


   沖縄の米軍基地に提供されている土地にかかる小作人の救済に関する質問主意書

 米軍嘉手納基地内の嘉手納町字久得に所在する旧沖縄製糖株式会社所有(現在、沖縄土地住宅株式会社所有と思われる。)の土地は、明治初期尚王家所有の下に小作人が耕作を始め、明治の末期、尚王家より旧沖縄製糖株式会社に売却されたが、小作人の耕作は引き続き行われていたものである。
 戦後、当該土地は、米軍に強制接収され、現在も引き続き、駐留軍用地として提供されている。このため、小作人は、永年にわたりこの土地を全く耕作することができず、加えて、戦後わが国で行われた農地解放の恩恵に浴することなく、さらに、土地所有者には賃借料が支払われているにもかかわらず、小作人には何らの補償もなされていないなど大きな不利益を蒙つている現実にある。
 このような状況から、地元嘉手納町議会では、小作人の救済を要請する決議が採択され、小作人も那覇防衛施設局に陳情を繰り返すなどしているが、事態は全く進展していない。
 よつて、政府の適正な措置を求めて、以下の質問を行うものであり、政府は、具体的かつ明確に答弁されたい。

一 本土においては、政府が、昭和二十五年七月に閣議決定した「駐留軍ノ用ニ供スル土地等ノ損失補償要綱」により、補償がなされていると思われるが、本要綱により、土地に関し、小作人、耕作権者等、所有権者以外の者に補償を行つた例はあるか。あるとすれば、要綱の適用条文、地主との配分割合等補償の実態を明らかにされたい。
 また、ないとすれば、なぜ本要綱の適用が小作人等にできなかつたか、その理由を明らかにされたい。

二 右要綱は、当然沖縄にも適用されるものと考えるが、どうか。
 適用されるとすれば、これまでの適用の実例を明らかにされたい。
 また、適用できないとすれば、なぜか。

三 伝えられるところによれば、那覇防衛施設局は、小作人、耕作権者等の再三にわたる陳情にもかかわらず、前向きに対処していないとのことであるが、事実か。これまでの話合いの経緯、問題点等を明らかにされたい。

四 政府は、沖縄の米軍基地に提供されている土地にかかる小作権、耕作権等所有権以外の第三者の権利の存否につき、調査を行つたことがあるか。あるとすれば、その結果をも明らかにされたい。
 また、ないとすれば、これだけ問題になつているにもかかわらず、なぜ行わないのか、理由を明らかにされたい。

五 政府は、当該土地に小作権、耕作権等第三者の権利が存することは、認識しているか。
 仮に、当該土地に、小作権、耕作権等は存在しないと認識しているとするならば、その根拠は何か。

六 将来、当該土地が、米軍から返還された場合、農地法適用の前提として、当該土地の農地への復元が問題になると考えられるが、当該土地の提供は国によるものである以上、復元は国の責任において行い、しかる後、農地法の適用をはかるのが筋道だと考えるが、どうか。
 それとも、政府は、当該土地は農地としての性質を消失しており、したがつて、米軍より返還がなされたときにおいて、農地法の適用はなく、農地解放の措置はとらないとするのか、所見を伺いたい。

七 仮に、政府が、当該土地に小作権、耕作権は現在存在せず、したがつて、小作人への賃借料の配分、離作料等の支給は行わず、また、当該土地が米軍より返還された場合に、農地解放の措置がとられないとするとしても、小作人の窮状及び地主とのバランス等から、何らかの補償措置がなされることが、政治の責任であると考えるが、政府にその考えはあるか、見解を伺いたい。

  右質問する。