質問第五号
まぐろの輸入規制等に関する質問主意書
右の質問主意書を国会法第七十四条によつて提出する。
昭和六十年十二月二十六日
藤原 房雄
参議院議長 木村 睦男 殿
まぐろの輸入規制等に関する質問主意書
まぐろ漁業は、我が国中小漁業の中核をなし、国民の嗜好にあつた食料産業としての地位を占めている。しかしながら、近年は、燃油価格の高騰、産地魚価の低迷、二百海里規制の強化、資源の悪化などにより、厳しい経営を余儀なくされている。
こうした中で、業界は、多大の犠牲を払いながら、とも補償による自主減船を数次にわたつて行うなど、経営安定のために、血のにじむような努力を重ねてきたが、昭和六十年に入つてからの需給事情を無視した輸入の増大等により、魚価は暴落し、経営環境は一段と深刻な様相を呈するに至つている。
ちなみに、昭和六十年一月から十月までに輸入されたまぐろ類(かじきとかつおを除く。)は、前年同期に比べ実に四割増に達しようとしており、冷凍まぐろの在庫量を急増させている。そのため、現在、在庫状況は、二万五千トンから三万トンといわれる適正在庫量の二倍を上回る六万トンにも達するところとなつている。
加えて、今後は、円高傾向が輸入圧力に拍車をかけることも懸念される。
こうした異常事態の下で、業界は、在庫減らし等の対策に必死で取り組んでいるが、事態は、すでに業界の自助努力の限界を超えるところとなつており、早急に行政上の対応策を講じる必要があると痛感するものである。
そこで、次の諸点について質問したい。
一 輸入規制について
(一) 我が国のまぐろ業界では、輸入総量の規制ならびに在庫量等を目安とする輸入まぐろの陸揚げについて一時停止等を求めているが、政府は、実効ある輸入規制措置についてどう考えるか。
また、これまで話合いを行つてきた大口の輸出国である韓国や台湾に対して、一層の自粛を促すとともに、最近輸出を急増させている米、豪州、インドネシア、フィリッピン、仏、スペイン等にも、この異常事態の回避策について理解と協力を求めるべきであると考えるがどうか。
(二) 現在、我が国では、資源管理型漁業の推進が大きな課題となつている。しかし、そのためには減船をしなければならない場合も多い。従つて、まぐろに限らず、水産物一般の輸入秩序の確立が今後の水産行政にとつて大きな課題といえる。この点について政府の見解を伺いたい。
二 経営対策について
(一) 現在、業界では、倒産が続出するなど深刻な状況にある。
従つて、既往の制度資金等について償還期限を延長するとともに、緊急融資や融資保証措置の拡充等、その救済について必要な措置を早急に講ずべきではないか。
また、長期的観点からの経営基盤の強化を図る必要があると考えるが、その具体策について伺いたい。
(二) 需要の強いみなみまぐろやくろまぐろは、資源の悪化に伴い、漁獲規制が厳しくなつてきているため、相対的に資源状態のよい赤身まぐろの漁獲に向かわざるをえなくなつている。このため、赤身まぐろの在庫状況が深刻になつているが、栄養面で優れている赤身まぐろの消費促進のため、流通の合理化や利用方法の開発に力を入れていく考えはないか。
(三) 現在、まぐろ業界では、自らの体質強化のため省エネ漁船、自動投揚縄ロボット、超低温冷蔵庫内の省力ロボット化、塩カルブライン凍結法などの技術開発に努力していると聞くが、その促進のために、国も助成を強化すべきではないか。
また、これらの漁船・機器が実用化されても漁業者が購入するには、巨額な資金を必要とする一方、その効果が経営面に出てくるには一定の時間が必要である。従つて、経営環境が厳しさを増している状況のもとで、コスト低減に努力していることにかんがみ、国としても、思い切つて有利な条件の融資措置を講ずべきだと考えるがどうか。
右質問する。
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