質問主意書

第103回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一四号

内閣参質一〇三第一四号

  昭和六十年十二月十三日

内閣総理大臣 中曽根 康弘   


       参議院議長 木村 睦男 殿

参議院議員下田京子君外一名提出奄美群島の振興に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員下田京子君外一名提出奄美群島の振興に関する質問に対する答弁書

一について

(1) 奄美群島の振興開発については、奄美群島振興開発特別措置法(昭和二十九年法律第百八十九号)等に基づき、本土との諸格差を是正することを目標に、国の厳しい財政状況の下で、従来から各種の振興開発事業の実施に努めてきたところであるが、今後とも、奄美群島の地域的特性を生かした自立的発展に留意しつつ、社会基盤、産業基盤の整備及び地場産業の振興等各種施策の推進に努めてまいりたい。
(2) 大島本島南部地域については、新奄美群島振興開発計画において「特に自然的・社会的に厳しい条件下にある大島本島南部地域の振興開発に留意する」こととされており、奄美群島の振興開発事業の推進においても、従来から同地域の振興開発に特に留意してきたところであるが、今後とも、同地域の自立自興を目指して、交通体系等各種基盤の整備、地場産業の振興等同地域の振興開発のための各種施策の推進に努めてまいりたい。

二について

(1)、(2)及び(4) 徳之島周辺水域の汚濁の実態及び原因を明らかにすることが当面の課題であり、その実態調査の実施については、県と十分相談しながら検討してまいりたい。
 なお、浮き魚礁設置については、昭和六十年度から国の補助事業の対象としたところであり、また、並型・大型魚礁設置については、今後とも積極的に推進してまいりたい。
(3) 奄美群島国定公園におけるサンゴの保護対策が適切に行われるよう、同公園の保護・管理を行つている鹿児島県を必要に応じ指導する等の所要の措置について検討してまいりたい。

三について

(1)から(3)まで 徳之島地区国営農地開発事業の実施の際の赤土流出防止対策及び環境への配慮については、関係地方公共団体等と緊密な連絡をとりながら対処してまいりたい。
 また、農地開発事業については、その実施に先立ち、営農計画等を含む農地開発基本計画を樹立することとしており、徳之島地区についても、自然条件、立地条件、営農実態、受益農家等の意向等を十分考慮して、基本計画を樹立したところである。
(4) 六十年産さとうきびの最低生産者価格については、砂糖の価格安定等に関する法律(昭和四十年法律第百九号)により、農業パリティ指数に基づき算出される価格を基準とし、さとうきびの生産費、競合農作物の状況、物価その他の経済事情を参酌し、さとうきびの再生産を確保することを旨として適正に決定したところであり、最低生産者価格については、今後とも、同法の趣旨を踏まえ、適正に決定してまいりたい。
(5) 野菜等の流通・販売対策、機械や施設の整備、後継者育成のための資金対策及び営農指導体制の整備については、従来から野菜等の生産・流通施設の整備、農業後継者育成資金の融資、協同農業普及事業の実施等各種の施策を講じてきており、徳之島においても、これらの施策を実施してきたところである。
 これらの施策については、今後とも、関係者の意向も踏まえつつ、適切に実施してまいりたい。

四について

(1) 工賃については、種々の契約条件(決済条件、受注量、リスク負担、技術水準等)、流通各段階間の取引慣行等が複雑に関連し合つており、また、その水準がどの程度に決められるかは、基本的には当事者間の問題であるため、政府が介入することは適切ではなく、関係者がその総意を結集して一歩一歩着実な解決を図ることが望ましいと考えている。
(2) 現在、政府としては、政府系中小企業金融三機関及び奄美群島振興開発基金による中小企業に対する各種の融資を行つているほか、信用力・担保力の不十分な中小企業に対する金融の円滑化を図る信用補完制度等の各般の金融対策を実施しているところである。
 政府としては、産地においてもこれらの金融対策を積極的に活用することを期待するとともに、今後とも中小企業金融の充実に努めてまいりたい。
(3) 繊維取引の改善の方策については、昭和六十年九月に繊維取引改善委員会(通商産業省生活産業局長の懇談会)から「繊維取引改善の一層の推進について」の報告が出たところであり、この趣旨に沿つて所要の措置を講じてまいりたい。
 具体的には、値引き、返品等の取引慣行問題の解決には「基本的には、当事者間で解決すべきものである」との自主的解決の原則を前提としつつも、大島紬産地業界における関係業界との取引慣行改善のための懇談、協議等の努力に対しては、積極的に指導、支援を行つてまいりたい。
 なお、値引きや返品などの行為について、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)又は下請代金支払遅延等防止法(昭和三十一年法律第百二十号)に違反するものがあれば、政府として適切な措置を講じていく所存である。
(4) 既応貸付金の取扱いについては、個々の事業者と関係金融機関の間の話合いが重要であり、今後とも、個々の事業者と関係金融機関との間で十分話合いが行われることを期待する。
 政府としては、従来から政府系中小企業金融三機関等に対して、個別中小企業者の実情を十分考慮の上、適時適切な対応を行うよう指導してきているところであるが、今後とも中小企業金融の充実の観点から指導を行つてまいりたい。
(5) 政府としては、昭和五十一年度以来毎年度韓国との間で政府間協議を行い、絹織物の内枠として大島紬についての輸入数量につき協議してきたところであり、これまでおおむね問題なく推移してきたものと認識している。
 今後とも必要に応じ、両国間の協議を行つてまいりたい。
(6) 中小企業基本法(昭和三十八年法律第百五十四号)第二十二条は、中小企業が生産する物品とこれと競争関係にある輸入品との関係について施策の指針を示したものであつて、同条それ自体を根拠として輸入制限等を行うことはできない。いずれにせよ、輸入制限等を行うことについては、新ラウンドの推進をはじめ自由貿易体制の維持強化に努力している我が国としては慎重な対処が必要である。

五について

 国内航空運賃の営業割引制度の設定及び変更に当たつては、航空運送事業者の創意工夫を極力尊重することとしており、御質問の割引制度についても、申請があれば、その趣旨に従つてこれを処理する考えである。