質問主意書

第103回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第六号

内閣参質一〇三第六号

  昭和六十年十一月二十九日

内閣総理大臣 中曽根 康弘   


       参議院議長 木村 睦男 殿

参議院議員喜屋武眞榮君提出米軍用地特措法に基づく土地の強制使用二十年延長問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。


   参議院議員喜屋武眞榮君提出米軍用地特措法に基づく土地の強制使用二十年延長問題に関する質問に対する答弁書

一、四から六まで、十及び十一について

(1) 日米安全保障体制は、我が国防衛の基本であるのみならず、極東の平和と安全に寄与してきており、日米両国においてその意義はますます高く評価され、その地位は揺るぎない確固たるものとなつているところである。したがつて、日米両国とも日米安全保障条約を終了させることは全く考えておらず、米軍の駐留は、今後相当長期にわたると考えられ、その活動の基盤である施設及び区域も今後相当長期間使用されると考えられるので、その安定的使用を図る必要がある。また、沖縄県に所在する施設及び区域は、日米間で十分討議・検討の上、返還可能とされたものについては、返還済み又は現在返還のための作業を実施中であり、その他の施設及び区域は、見通し得る将来返還の見込みはないと判断される。一方、沖縄県に所在する施設及び区域内の民公有地のごく一部である〇・四パーセントの土地について、十三年以上にわたる説得にもかかわらず、賃貸借契約の同意が得られず、加えて、嘉手納飛行場の滑走路地区にある前記〇・四パーセントの土地の一部について、いわゆる一坪共有運動が展開され、土地所有者が一挙に約二千名増加し、土地所有者との合意による使用がますます困難となつた。
 以上の事情・経緯を併せ考え、使用期間を二十年として裁決の申請をしたものであり、これはやむを得ない措置であつて、日米安全保障条約と矛盾するとは考えていない。
(2) 前回の裁決の申請においては、沖縄県の区域内において初めて、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法(昭和二十七年法律第百四十号。以下「駐留軍用地特措法」という。)を適用することでもあり、沖縄における公用地等の暫定使用に関する法律(昭和四十六年法律第百三十二号。以下「公用地暫定使用法」という。)による使用の経緯、施設及び区域の整理統合計画等諸般の事情を総合的に検討し、更に契約により使用権を得るための努力を継続するため、当面最長五年の使用期間としたものである。
(3) 本件裁決の申請に係る土地の使用期間を設定するに当たつて、当該土地は、施設及び区域の運用上、賃貸借契約を締結している他の土地と有機的に一体として使用しており必要欠くべからざるものであることを考慮し、貸主保護の観点から規定された民法(明治二十九年法律第八十九号)第六百四条の賃借権の存続期間を参考の一つとしたが、本件が公用使用であることをもつて、民法に規定する期間を参考とすべきではないとの御指摘は当たらない。

二及び三について

 御指摘の答弁は、前述のとおりの日米安全保障条約の地位にかんがみ、同条約が今後相当長期にわたつて存続すると思われることから、施設及び区域の安定的使用が我が国の防衛政策上重要である旨の政府の見解を述べたものであり、御批判は当たらない。
 また、同答弁にいう「相当期間」とは、具体的に特定の期間を意味するものではない。

七及び八について

 昭和三十七年までに本土において駐留軍用地特措法を適用した実績は、別表のとおりである。
 その後、本土において駐留軍用地特措法による手続を執らなかつたのは、施設及び区域内の民公有地について、すべて賃貸借契約の締結又は買入れが可能であつたからである。
 また、御指摘の期間に本土において新たに施設及び区域として提供した民公有地の面積は、約八十四平方キロメートルであり、すべて所有者との合意により使用しているところである。

九について

 沖縄の復帰後十年間公用地暫定使用法により未契約土地を使用したのは、沖縄の復帰に伴つて公用地等のために必要な土地等の所有者等が三万数千名に及び、そのうちには、所在不明者、海外移住者等も含まれており、我が国の施政権の外におかれていた沖縄において、これらすべての所有者等と契約を締結することができなかつたこと及び前大戦による土地の公簿・公図の焼失、戦争と米軍基地建設に伴う土地の形質の変更等により、一筆ごとの土地の位置境界が現地に即して確認できない状況にあつたことから、駐留軍用地特措法による手続を執ることができなかつたためである。もちろん、その間、契約の同意を得るための交渉を重ねてきたことはいうまでもない。
 一方、沖縄県の区域内における位置境界不明地域内の各筆の土地の位置境界の明確化等に関する特別措置法(昭和五十二年法律第四十号)による位置境界明確化作業が進み、その結果として、各筆の土地の位置境界が現地に即して特定できる状態となり、駐留軍用地特措法の適用が可能となつたので、駐留軍用地特措法を適用したものである。

十二について

 駐留軍用地特措法第三条にいう「適正且つ合理的であるとき」とは、日米安全保障条約第六条に規定する目的達成のため駐留する米軍が施設及び区域として土地等を使用することについて、その必要性が客観的に認められるときであり、内閣総理大臣は、防衛施設局長から申請のあつた土地がこの要件に該当すると認め、使用の認定を行つたものである。

十三について

 御指摘の裁決の申請は、憲法に基づき財産を公共のために用いる手続等を定めた駐留軍用地特措法に基づき適法に行つたものであり、撤回する考えはない。

別表 1/4

別表 2/4

別表 3/4

別表 4/4